中国発のアニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』の第2弾となる『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』の日本語字幕版および日本語吹替版として、11月7日に同時公開される。とある妖精会館への襲撃事件をきっかけに、師匠・ムゲンと引き離されたシャオヘイが、姉弟子のルーイエと共に真実を求めて新たな冒険へ――。
【写真】悠木碧のクールな撮りおろし&映画『羅小黒戦記2』場面カットが満載!(23枚)
■悠木碧はムゲン推し! “信念のあるツンデレ”のルーイエも「タイプでした(笑)」
――中国本土だけでなく、日本でも吹替版が大ヒットした前作。そんな作品の続編に出演が決まったときの率直な思いを聞かせてください。
悠木:前作が公開されたとき、「海外のアニメーションって、ここまで進化しているんだ!」と驚きました。日本でもSNSを中心に大きな話題になっていましたし、私も実際に見て、映像づくりの一つひとつから制作スタッフの“愛”を強く感じました。本当にアニメが好きで、そのうえで技術を突き詰めていることが伝わってくる映像で、とても印象に残っています。
そんな作品の続編が公開されること自体がうれしいですし、そこに自分が関われるなんて、本当に光栄です。せっかくお声がけいただいたからには、全力で作品の魅力をさらに広げられるよう、力を尽くしたいと思いました。
――声優さんの間でも、前作は話題になっていたんですね。
悠木:皆さん、私と同じように「海外のアニメーションもここまで進化したのか」と驚かれていました。
私も少しだけ絵を描くのでわかるのですが、ここまで緻密な映像づくりは、絶対に“愛”がないとできないんですよね。その“愛”が画面の隅々から伝わってきて、本当に感動しました。
物語も、人間と妖精の絆を描いた心温まるストーリーで、とても楽しく拝見しました。何より、シャオヘイが本当にかわいい! でも、実は私はムゲン推しなんです(笑)。
――演じるルーイエの印象も聞かせてください。
悠木:クールでかっこよくて、つれない態度がなんだか野良猫みたいなんです(笑)。でも、その中にはきっととても柔らかい部分も隠れているんだろうな、というのが第一印象でした。ただ、その優しさのような部分は簡単には見せてくれなくて……いわば“信念のあるツンデレ”。私自身、すぐにデレるツンデレはあまり好きではないので(笑)、ルーイエはとても好きなタイプでした。
見た目もとてもスタイリッシュで、女性でありながらマニッシュで中性的な雰囲気を持っていて。性別を超えた魅力を持つキャラクターだと思います。
――ルーイエはシャオヘイにとって姉弟子にあたる存在。今回は共に行動することになりますが、ルーイエはシャオヘイをどのように見ていると思いますか?
悠木:基本的には放任主義というか、勝手に着いてくるのを「まぁいいか」と見守っている感じですね(笑)。でも、弟子としての関係は決して上下ではなく対等なんです。自分の責任は自分でとる、だからこそ他人の責任も簡単には負わない。それがルーイエというキャラクターなんだと思います。
そのうえで、共に時間を過ごすことでお互いを理解し合い、少しずつ本当のバディになっていく。突き放しているように見えても、それは“信頼が積み重なっているからこそ”なんです。そういう距離感が、2人の関係性の魅力だと思います。
――今作におけるシャオヘイとムゲンの印象も伺えますか?
悠木:シャオヘイは前作と同じくとってもかわいいんですが、今回は彼を主軸にした物語ということもあり、その成長が周囲にも影響を与えていくんですよね。特にルーイエは、シャオヘイの頑張りを間近で見て、影響を受けていきます。彼らは妖精なので長い時を生きていますが、それでもなお未来に向かって自分の道を切り開こうとしている。
ムゲンはもう、強くなりすぎて(笑)。今回は「かっこいい」よりも「面白い」という印象のほうが強かったです。私はもともと穏やかなお兄さんタイプのキャラクターが好きなので、ムゲンはまさにドンピシャなんですが、今作では強さの極みに到達してしまっている。その余裕がめちゃくちゃかっこいい反面、強すぎて逆に面白く見えてくるんですよね(笑)。でも、それは周囲がそう感じているだけで、ムゲン本人は何も変わっていない。むしろ、観客への“見せ方”が変化したんだと思います。
――ルーイエは、2人のことをどう見ていると思いますか?
悠木:それを語る直接的な描写はないのですが、私が感じた印象としては、シャオヘイとルーイエを弟子に取る過程からもわかるように、ムゲンって“別に背負わなくてもいい責任”を、あえて自分で抱えてしまう人なんですよね。ルーイエはそんな彼を見て、「この人、まためんどくさいことに首を突っ込んでるな」と思っているはず(笑)。そういうところは好きじゃないけれど、同時に学ぶ部分も多いからこそ、余計に腹が立つんです。
それを“優しさ”だと認めてしまったら、彼のことを認めたことになってしまう。だからこそ、その考え方を否定することで自分を守っていた。
でも今回は、シャオヘイの成長を受け入れられるようになったことで、ムゲンの考え方も受け止められるようになる。おそらく、シャオヘイを通して、自分と師匠との関係を初めて俯瞰して見られるようになったのだと思います。
■シャオヘイと向き合った“引き算の芝居”
――そんなルーイエを実際に演じてみて、いかがでしたか?
悠木:とにかく、あの愛くるしいシャオヘイを“かわいいと思わずに演じる”のが一番大変でした(笑)。原音でルーイエを演じられた方のお芝居が本当に素晴らしくて、すごく引き算の効いた演技をされていたんです。勝手なイメージで、海外の声優さんは感情を大きく乗せて表現されることが多いのかなと思っていたのですが、今作のルーイエはむしろ“引き算の美学”で成立していて。その絶妙な塩梅にとても感銘を受け、参考にさせていただきました。
一方で、シャオヘイのリアクションがとても豊かなので、黙っているルーイエがより強く見えるというバランスも自然と生まれていたと思います。私自身も引き算の芝居を意識して、「ここだ!」という瞬間だけかっこよく出すようにしていました。とはいえ、音響監督からは「かっこよくしすぎないで」とも言われていて(笑)。最終的には、彼女の中にある柔らかさを見せるために、「かっこよくしすぎずに、2ミリだけ少女を残してください」という、とても繊細なオーダーをいただきました。
――その絶妙なバランスを表現するのは、かなり難しかったのではないでしょうか。
悠木:難しくもあり、すごく面白かったです。私の感覚では、足し算の芝居よりも引き算の芝居のほうがずっと難しいんですよね。余白の中に感情を残すというか。これまで悩みながら積み重ねてきた表現の経験が、今作でようやく活かせた気がします。
――出来上がった映像をご覧になって、いかがでしたか?
悠木:モブキャラクターも含め、ほとんどのキャラクターに細かい設定があるそうで、背景や世界観まで徹底的に作り込まれていることに驚きました。まるで一つひとつの存在が呼吸しているようで、映像の立体感が本当にすごいんです。前作から感じていたことではありますが、今作では登場キャラクターがさらに増えた分、作品の厚みがぐっと増した印象でした。
アクションシーンも圧巻で、特にルーイエはムゲンと同じく“金属”を使って戦うので、動きがとてもアクロバティックなんですよ。彼女以外にも個性的で魅力的なキャラクターが多く、どの戦闘シーンも見応え抜群。今作の大きな見どころの一つだと思います。
――特に妖精たちは曲者揃いですよね。
悠木:印象に残っているのは、戦闘シーンで登場した甲と乙ですね。あの場面でルーイエが手段を選ばず戦っていたのは、彼らと組んでいたからこそだと思うんです。決して手を緩めないルーイエと、どこか甘さが出てしまう甲と乙。その対比がとても面白くて、印象に残りました。
――映像美や魅力的なキャラクターたちの背後には、「自然破壊」や「他者との共存」といったテーマも流れています。悠木さんは本作を見て、どんなことを感じましたか?
悠木:もともとは人間と妖精の戦いとして始まる物語なんですが、進むにつれて対立関係も変化していきます。結局のところ、異なる種族だから争っているわけではないんですよね。誰もがそれぞれに個性や考えを持っていて、相手の話を聞かずに意見をぶつけ合えば、同じ種族であっても衝突が起きてしまう。その過程で、どれだけの痛みや犠牲が生まれてしまうのか……。そこを丁寧に描いている作品だと感じました。
人間と妖精という構図は、実はどんな社会や文化、コミュニティにも当てはまるものだと思います。ルーイエはシャオヘイの考えを「甘い」と言いますが、本当にそうなのか? 相手の話をきちんと聞かなければ、本質は見えてこないんじゃないか。本作は、そんな問いを見る人に投げかけている気がします。
――シャオヘイとルーイエにとってムゲンが師匠であるように、悠木さんにとっての師匠となる存在はいますか?
悠木:たくさんいます。いろんな現場を経験させていただいたからこそ、本当に多くの方から学ばせてもらいました。声優を志すきっかけをくださった沢城みゆきさんは、今でも変わらず大好きで、お芝居にもずっと憧れています。生き方や考え方という面でいえば、母が師匠かもしれません。
そして、ルーイエのような役は自分の引き出しにはない芝居が求められたので、これまでの現場で受け取ってきたものを参考にさせてもらいました。現場を重ねるたびに、新しい“師匠”が増えていく。そんな感覚がありますね。
(取材・文:米田果織 写真:吉野庫之介)
映画『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』は、11月7日より全国公開。
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