10月27日に開幕した第38回東京国際映画祭が、11月5日に閉幕を迎え、受賞者が記者会見に臨んだ。セレモニーでは、各部門における審査委員からの受賞作品の発表・授与も行われた。



【写真】最優秀女優賞は『恒星の向こう側』福地桃子と河瀬直美が受賞!

 東京グランプリ/東京都知事賞には、アンマリ―・ジャシル監督の『パレスチナ36』が選出され、カルロ・シャトリアン審査委員長よりトロフィーを授与された。

 また、『春の木』が最優秀監督賞(チャン・リュル監督)と最優秀男優賞(ワン・チュアンジュン)の2冠を達成。

 日本映画からは『恒星の向こう側』より主演の福地桃子と河瀬直美が最優秀女優賞を受賞。最優秀監督賞は2作品同時受賞となり、『裏か表か?』のアレッシオ・リゴ・デ・リーギ監督、マッテオ・ゾッピス監督と『春の木』のチャン・リュル監督が選出され、そのほか審査員特別賞は『私たちは森の果実』が、最優秀芸術貢献賞は『マザー』が、そして観客賞は『金髪』がそれぞれ受賞した。

 小池百合子東京都知事より麒麟像の授与を行い、最後に安藤チェアマンによる閉会宣言により第38回東京国際映画祭は閉幕した。

 なお、第38回東京国際映画祭の動員(10日間)は、上映動員数6万9162人を記録している(上映作品本数184本 速報値・5日は見込み動員数)。

 第38回東京国際映画祭 各賞受賞作品・受賞者、クロージングセレモニー・記者会見でのゲストコメントは以下の通り。

<第38回東京国際映画祭 各賞受賞作品・受賞者>

■コンペティション部門

東京グランプリ/東京都知事賞
『パレスチナ36』(パレスチナ/イギリス/フランス/デンマーク)

審査員特別賞
『私たちは森の果実』(カンボジア/フランス)

最優秀監督賞
チャン・リュル監督(『春の木』、中国)
アレッシオ・リオ・デ・リーギ、マッテオ・ゾッピス(『裏か表か?』、イタリア/アメリカ)

最優秀女優賞
福地桃子、河瀬直美(『恒星の向こう側』、日本)

最優秀男優賞
ワン・チュアンジュン(『春の木』、中国)

最優秀芸術貢献賞
『マザー』(ベルギー/北マケドニア)

観客賞
『金髪』(日本)

アジア学生映画コンファレンス 作品賞
『フローティング』(韓国)

審査委員特別賞
『永遠とその1日』(台湾)、『エンジン再始動』(韓国)

アジアの未来 作品賞
『光輪』(韓国)

東京国際映画祭 エシカル・フィルム賞
『カザ・ブランカ』(ブラジル)

黒澤明賞
李相日、クロエ・ジャオ

特別功労賞
山田洋次、吉永小百合

<クロージングセレモニー・記者会見でのゲストコメント>

■アジア学生映画コンファレンス

・岡本多緒 講評

とても完成度の高い作品が多く、楽しませていただきました。審査員全員が一致し、心から納得できる審査になりました。受賞に至らなかった方たちも、今後も独創性のある作品を生み出してほしいです。

・審査委員特別賞『永遠とその1日』 チュン・リーシュエン監督

映画の中の出来事ですが、このような出来事がこの世から一日でも早く無くなるよう、祈っています。

・審査委員特別賞『エンジン再始動』 チョン・へイン監督

あまりにも驚いてどう感想を言っていいか分かりません。
この映画を一緒に創ってくれたチームのみんなに感謝を伝えたいですし、何よりも韓国映画アカデミーの院長、先生方にも感謝を伝えたいです。

・作品賞『フローティング』 イ・ジユン監督

この映画は、個人的な場所から出発し、アメリカンドリームへの問いかけや悩みを映画の中で表現しました。苦労してくれた撮影監督やプロデューサーなどチームの皆に感謝を伝えたいです。また韓国芸術アカデミー第41期の同期にありがとうと言いたいです。この賞にはこれからも諦めずに映画を作ろうという意味が込められていると思います。これからも一生懸命映画を撮っていきます。

■アジアの未来

・作品賞受賞 『光輪』  ノ・ヨンワン監督

このような賞をいただけるとは思ってもみなかったです。こんな大きな賞をいただいた今日は、本作のプロデューサーであり私の妻の誕生日なんです。この喜びを分かち合いたいです。

■コンペティション

・観客賞受賞 『金髪』 坂下雄一郎監督

広く観客のみなさんから認められたのは嬉しいです。今後も映画作りに励んでまたこの映画祭に戻ってこれる様に努力します。

・最優秀芸術貢献賞授賞 ヴィヴィアン・チュウ 講評

歴史上の人物を意外な形で描き、観客を常に惹きつける俳優の印象的な演技によって際立つ本作は、緻密な編集と型にはまらない音楽の使用によってさらに引き立てられています。


・最優秀芸術貢献賞受賞 『マザー』 テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督

私は50歳になりましたが、18歳の少年のような大胆さをようやく得ることができました。この映画が女性たちに力を与えることを願っています。

・最優秀男優賞授賞 グイ・ルンメイ 講評

演じる空間が限られている中、繊細で説得力のある演技を見せてくれました。

・最優秀男優賞受賞 『春の木』 ワン・チュアンジュン

このような賞をいただくとは夢にも思ってませんでした。中国映画が今年120周年を迎える年に受賞できたとこで、歴史の一部になれた。私の母校の映画学校も80周年なので、素晴らしいギフトになりました。

・最優秀女優賞授賞 齊藤工 講評

今年のコンペティション部門には力強く物語を牽引するヒロインたちが数多く登場しました。その中で、丁寧に静かに存在することに徹したお二人の姿はひときわ印象的で際立っていました。

・最優秀女優賞受賞 『恒星の向こう側』 福地桃子

歴史ある賞をいただけて光栄です。身の引き締まる思いです。主人公を演じるにあたって、人物を見つめて追いかけて溶け合っていくような作業は決して一人では乗り越えられる時間ではありませんでした。この経験を胸にこれからも1つ1つの作品に向き合っていきたいです。


・最優秀女優賞受賞 『恒星の向こう側』 河瀬直美

監督として、映画祭に参加したことはあっても俳優として参加できたのは中川監督のおかげです。チームの皆がいたからこそ、自分自身のすべてを出し切れました。福地さんには冷たい態度をとるなど、徹底した役作りをしていましたが、最後に彼女の温かさを背負えた瞬間涙が出ました。

・最優秀監督賞授賞 ヴィヴィアン・チュウ 講評

新しく国の歴史を塗り替えた、二つの異なる映画に心を動かされました。

・最優秀監督賞受賞『裏か表か?』 アレッシオ・リゴ・デ・リーギ監督、マッテオ・ゾッピス監督 動画コメント

東京国際映画祭そして審査員の皆さん、この賞をありがとうございます。東京で素晴らしい時を過ごしました。映画を見てもらったこと、観客からの反応など、映画祭が私たちを招き入れてくれたこと、そしてこの素晴らしい賞をありがとうございます。

・最優秀監督賞受賞 『春の木』 チャン・リュル監督

私の作品を評価してくださりありがとうございます。またこの場を借りて俳優の皆さん、チームの皆さんに感謝を伝えたいです。個人的に、監督賞はチーム全体に与えられる賞だと思います。

・審査員特別賞授賞 マチュー・ラクロー 講評

伝統を失うこと、人々への表現の機会を与えることで映画はレジリエントの味方だということを教えてくれました。

・審査員特別賞受賞 『私たちは森の果実』 リティ・パン監督

たくさんの方にお礼を申し上げたいと思います。
とりわけプロデゥーサーのカトリーヌ・デュサールに感謝を申し上げたいと思います。4年にも及んだ撮影期間、長旅でございましたが、サポートしてくれました。

・東京グランプリ/東京都知事賞授賞 カルロ・シャトリアン審査委員長 講評

この作品の感情面で心を動かされ、土地の美しさに魅了されました。

・東京グランプリ/東京都知事賞受賞 『パレスチナ36』 アンマリ―・ジャシル監督 動画コメント

わたしたちの映画をこの賞に選んでくださり、本当に光栄です。チームにとっても私自身にとっても、この作品の制作に懸命に力を尽くしてきたすべての人たちにとって、大きな意味を持つものです。ありがとうございます。

・東京グランプリ/東京都知事賞受賞 『パレスチナ36』 ワーディ・エイラブーニ

この素晴らしい賞を受賞できてとても光栄です。またこの作品に関わることができてとてもうれしいです。

・小池百合子東京都知事

世界中の才能が東京に集って、映画という芸術を通じて新たな物語が紡がれていくことを大変嬉しく思っております。映画は言葉、文化の壁を超えることができます。心を繋ぐ力を持っている大変パワフルなアートでございます。今年からアジア学生映画コンファレンスが新設されたということで、アジア各国の学生さんたちの挑戦がこのコンファレンスを通じて大きく広がることを心から期待を申し上げます。
東京から発信される映画の魅力が人々に届くことを、そして東京国際映画祭が創造性と多様性に満ちた文化の祭典として今後もますます発展していくことを期待しております。

・カルロ・シャトリアン審査委員長 総評

生きている映画を映画祭で観ることで、映画というものの幅が、いかに広いものであるかということと向き合いました。画一化している世の中において、多様性を大切にしました。この仕事は難しかったですが、多様性を尊重しました。様々な経歴、好みは異なりますが、すべての決定は合意の結果です。すべて満場一致で賞を贈呈しました。

■クロージング作品『ハムネット』

・クロエ・ジャオ監督

最初の4つの長編はなるべく遠くへ、広く世界のあらゆる水平線を追いかけてきました。『ハムネット』はより内なる風景に目を向けました。自分の中に深く入り込むことをこの映画では目指しました。この映画を観て、ストーリーテリングを通じて、人間であるための矛盾を描いた。観客が感じたいことをそのまま感じて欲しいです。

・安藤裕康チェアマン

世界中が分断と対立に悩まされているのが現況でございます。
それでも国際映画祭というのは、国境を越え、考え方の違いを超えてお互いが向き合って対話を行い、そして共通の理解を深めあっていく場と思っております。おかげさまで今年も東京国際映画祭に2500人を超える外国からのゲストにお越しいただき、200本近い映画を上映し、多くのイベントを開催して、実りのある交流ができたと思います。その交流の中から新しい相互理解が生まれることを、そして友情が育つことを願っております。

また日本で初めて上映されました『MISHIMA』が15分でチケットが完売になりました。お客様からぜひもう一度上映してほしいと事務局に要望が殺到しました。そこで特別追加上映ということで、11月8日、9日と二日間で1回ずつ上映をさせていただくことになりました。詳細は東京国際映画祭の公式サイトで発表いたしますので、ご覧になっていただきたいと思います。陰で支えてくれたすべてのスタッフに感謝を申し上げます。

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