今年で結成20周年を迎える人気バンドSUPER BEAVERのボーカル・渋谷龍太が、『ミッドナイトスワン』の内田英治監督による最新作『ナイトフラワー』で俳優デビューを果たした。冷酷さとカリスマ性を兼ね備えた裏社会の帝王・サトウ役として鮮烈な存在感を放ち、表現者としてのすごみをたっぷりと感じさせてくれる。
【動画】裏社会の帝王“サトウ”の怖さはどこへ? 渋谷龍太の温かな雰囲気が伝わるインタビュー映像
■俳優業のオファーに戸惑い――「俺?」
本作は、内田監督が北川景子を主演に迎えて贈るヒューマンサスペンス。生活に困窮し、子どものためにドラッグの売人になることを決意する母親・夏希(北川)と、社会の抑圧に抗いながら夢を追いかける女性格闘家・多摩恵(森田望智)が出会い、この世界を生き抜くために支え合いながら運命を共にしていく姿を描く。
本作で俳優デビューを成し遂げた渋谷だが、これまでにも俳優のオファーを受けたことがあったという。内田監督からのオファーで一歩を踏み出したのはどのような理由だったのだろうか。
「自分はバンドマンですし、これまでは自分がお芝居をするということについて整理がつかない部分があって、踏み込めずにいた業界でした」と明かした渋谷は、「バンドをやって21年目に入り、いろいろなものを見たり、経験させていただく中で、他の表現にチャレンジしたとしたらきっと面白いことになるだろうなと。そういったマインドになれたタイミングで、内田監督とお食事をさせていただく機会がありました」と告白。
「食事の際は出演の話などはなかったのですが、後日連絡をいただいて、作品の内容もお伺いして、『これはやってみたい』とようやく踏ん切りをつけることができました」と縁とタイミングが合致したことに喜びをにじませる。
オファーを受けた瞬間は、「俺…?」と戸惑ったという。とはいえ俳優業に飛び込むからには、とことん真摯に向き合うのが渋谷流だ。
「俳優の友達や知り合いから、『絶対に芝居をやった方がいいよ』、『向いているよ』、『きっと音楽のためになるよ』と言われることもありましたが、音楽のために俳優業をやったとしたら、お芝居をちゃんとやっている人にとても失礼な話。
「台本にない部分まで、いただいたサトウという役を勝手にプロファイリングして臨みました。この人にはこういう幼少期があって、こうやって育ってきたという想像をめぐらせて衣装合わせに行き、『素人なりにサトウについて考えてきたんですが、方向性としてはどうでしょうか』と監督に伺って。内田監督からは、『それで間違いないよ』という言葉をいただけました」と役作りの道のりを振り返る。
■北川景子らとの共演に感無量
彼が演じたサトウは、夜の街を牛耳る男。子どもを育てるためのお金が必要で、ドラッグの売人になることを決意した夏希は、彼と対面して危険な世界へと足を踏み入れていく。夏希の母としての想いを耳にしたサトウが、顔つきを変える場面も印象的だ。
渋谷は、プロファイリングしたサトウについて「おそらく母親に対してコンプレックスや執着があって、会話の中で“母親”というワードが入ってきた瞬間、無意識のうちに自分の中のトリガーが発動してしまう人。そして“喜怒哀楽”の、“怒”以外の感情が欠落してしまっている人」と分析した。
思考を巡らせて撮影の準備をする中では、今までにない緊張感も湧き上がってきたという。「僕は基本的に、音楽の現場でも絶対に緊張してしまうんです。ただ音楽の場合は、経験則から『こういうステージだろう、こういう運びになるだろう』と予想をつけることはできる。
親交のある俳優、小栗旬からは「芝居に緊張感は持ち込まない方がいいよ」というアドバイスもあったそうだが、「やったことのない人間にそれは無理ですよね。その時も『そんなの無理だよ!』と話していて。でも現場にいつも立っている方の生の言葉をもらった上で挑むことができたことは、本当によかったなと思っていて、ありがたかったです」と感謝を込める。
撮影前日は特にドキドキしていたものの、いざ始まった撮影では、監督をはじめとするスタッフやキャスト陣のおかげで、「緊張がなくなった」と話す。
「当日は『うわ、本物の撮影現場だ』と思っているうちに、『渋谷くん、ここに座ってみる?』、『セリフを言ってみて』、『一度、カメラを回してみようか』、『じゃあ、次はこっちの角度から撮ってみよう』と監督の導く流れに乗っていて、『あれ、これ本番が始まっているのかな?』と気づく感じで。身構えることなく、本番を迎えることができました」。
「また、監督やキャストの皆さんが撮影の合間にすごく話しかけてくれて。いろいろと気を遣ってくださったり、フォローしてくださったおかげで、緊張が解けました。ものすごく恵まれていると思います」と感無量の面持ち。
撮影現場で北川や森田、そして森田演じる多摩恵に想いを寄せる海役の佐久間大介ら共演者の演技を目の当たりにすることで、大きく背中を押されたとも。
「自分で役について考えて演じたという以上に、皆さんが自分の中にある何かを引き出してくれたという感じがしています」と化学反応を肌で実感した様子だ。
■歌舞伎町生まれ&歌舞伎町育ちが役立ったかも
インタビュー中も身を乗り出して熱心に言葉を紡ぐなど、渋谷からは、人に寄り添うような温かな雰囲気がにじみ出ている。しかしスクリーンに登場するサトウは、周囲を震え上がらせるような恐ろしいオーラを放っており、その鮮やかな変身ぶりは必見だ。
どうやってそのオーラを身につけたのか聞いてみると、「分からないです! 思うままにやるしかないので、手探りの状態でした」と破顔しつつ、「僕は新宿の歌舞伎町生まれ、歌舞伎町育ちなんですが、『こんな怖い人がいたな、こういう感じの人がいたな』と思い浮かべてみたりして。歌舞伎町で育ってきたことが今回、初めて役に立ったかもしれません」と茶目っ気たっぷりに微笑む。
強烈な役どころを演じきり、俳優デビューを果たした渋谷。本作で全うした経験について、「僕は生まれてこの方、音楽で自分を表現するということしかやってこなかった。自分の体を通して、聴いてくださる方に言葉や音楽を届けてきた人間が、自分ではないものになって、何かを届ける。それは本当に自分にとって新しく、大きな経験です」としみじみ。
今は「いろいろなことにチャレンジしていきたい」という心境に至っているという。「以前は『俺、バンドマンだし』と音楽以外に何かをやるということに抵抗感がありましたが、今はそういった抵抗感はほとんどありません。自分に何かできることがあって、それをやることによって小さくてもいいので自分の中で変革を起こしていけるのであれば、いろいろなことにチャレンジしていきたい気持ちがあります」。
「その道を極めようとしている人たちに触れると、刺激になったり、自分の中で大きく変わるものもあるなと。それぞれのフィールドで真剣に話をすることもとても大事なことだなと実感しています。今の年齢でチャレンジすることってそうそう多くはないですが、チャレンジする姿勢は常に持っておきたい。今回、改めてそう感じることができました」と充実感を握りしめる。
本作で物語を動かしていくのは、「子どもたちに未来を見せてあげたい」という夏希の母としての想いだ。母から子への愛に心を揺さぶられる映画となっているが、渋谷も「両親からたくさんのものをもらってきた」と晴れやかな笑顔を見せる。
「生きていくうえでのスタンスなど、その大半は両親からもらっているものだと思います。半分は母ちゃんで、半分は父ちゃん。トータルで自分みたいな。
渋谷が「カッコイイ」と思うのは“優しい人”。「僕が知っているカッコいい人間は、両親をはじめ地元の友達など押し並べて優しいですね。優しさからくる思いやり。そういったものをたくさん受けて来たので、僕もそういう人になりたいと今でも思っています」。
(取材・文:成田おり枝 写真:上野留加)
映画『ナイトフラワー』は、11月28日より全国公開。
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