映画『ズートピア2』の勢いが止まらない! 昨年12月5日に日本公開され、週末興行収入ランキングで、第1位の座を9週連続で守り続けている本作。洋画アニメーション史上最速のスピードで、国内興行収入100億円を突破し、現在は国内興収140億円、国内動員数1000万人越え(2月1日時点)を記録している。

SNSではすでに10回以上も見たというリピーターも続出するほど大人気な本作は、メロメロになるほど魅力的であることを意味する「メロい」と称されることが多い。今回はそんな「メロい」をテーマに、ジュディ役の上戸彩、ニック役の森川智之、ゲイリー役の下野紘にインタビューを実施。本作で最もメロいセリフと言っても過言ではない「好きだぜ、相棒」の裏話や、『ズートピア2』ファミリーの仲良しエピソードまで余すところなく語ってもらった。 ※『ズートピア2』の内容に触れています。ネタバレにご注意ください。

【写真】『ズートピア2』上戸彩&森川智之&下野紘 “メロい”撮り下ろしフォト一覧(8枚)

■上戸&森川はフラットな役作りを意識

 動物たちが人間のように暮らす楽園ズートピアを舞台に、わたしたちの暮らす社会の“真の姿”を描き出すテーマと奥深いメッセージが高評価を集めた『ズートピア』。続く本作では、ウサギの警察官ジュディが、前作で共に事件を解決し、キツネとして初の警察官となったニックとともに再びバディを組んでから1週間後を舞台に物語が展開される。

 監督のバイロン・ハワードによると、今回のテーマは“パートナーシップ”だという。人間関係ならぬ“動物関係”は継続していくことも難しい。ジュディとニックは時を重ねるにつれて、お互いの思いも寄らない一面や違いを知り、新たな壁にぶつかることになる。

 そんな本作で“メロいポイント”の1つなのが、ジュディがニックの家に押しかけるシーン。電話で新しい事件の手がかりについてニックに話すジュディは、勢い余ってニックの家を訪れる。
ニックの生活が垣間見える部屋の様子にファンは歓喜する場面だが、上戸はフラットな役作りを意識したという。

 「ジュディはニックの家に行けることに多少の喜びを感じていたと思うか」を問うと、「あの時は事件を解決したい猪突猛進なジュディの性格が出ちゃっていて、事件のこと以外は全然考えていませんでした。今言われて、そんな角度もあったのかと思ったくらいです。ニックの部屋を見た瞬間に声色をちょっと変えたくらいでした」と上戸。

 それを聞いた下野は「あのトーンが良かったです!」と絶賛。「ジュディもニックもそうなのですが、聞き取り方によってはライクなのかラブなのか両方にも聞こえる絶妙なトーンが素晴らしいと思います。ある意味、ズルくも感じるのですが」と分析する。

 上戸と森川の芝居の共通点は、“計算しすぎないところ”だ。実は本作の名ゼリフ「好きだぜ、相棒」の収録は、なんと一発でOKが出たのだという。

■最初は違う言葉だった「好きだぜ、相棒」裏話

 「狙って言うと、作り物のようになってしまいそうで、絶対にあざとくなるのは嫌だと思って収録しました。物語の流れがある中でのセリフだったので、あまり気負わず、さらっと音が出たらいいなという気持ちでした」と森川は語る。

 英語版では「Love ya, partner.」だった同セリフ。
上戸いわく、最初は異なる言葉だったそうで、「台本の段階では『親愛なる相棒』だったと記憶しています。わたしは森川さんの後に収録をしたので、収録の時に『好きだぜ、相棒』に変わっていたのが、ステキなサプライズでした」と振り返る。

 「愛してる」ではなく「好き」だからこそ、ニックのズルさが増幅する。「ライク」にも「ラブ」にも聞こえる絶妙な「好き」については、「その後の“間”で、ニュアンスを感じ取ってもらえるとうれしいです」と森川は語る。

 ジュディとニックの関係はもちろんのこと、今回初登場したヘビのゲイリーも『ズートピア』ファンたちの心をわし掴みにする存在だった。ゲイリーは、一族の名誉を挽回するためにズートピアに続く謎を解き明かそうとする愛すべきヘビ。演じる下野は意外にも本作でディズニー・アニメーション初参加を果たした。

 今回ゲイリーを演じるにあたり下野が大切にしたのは「素直さ」。「ニックとジュディにも通ずるものがあると思うのですが、いろいろ画策するとそれが透けて見えてしまいそうだったので、今回はゲイリーの純粋さを素直に感じたまま出せばいいと思って演じました。動きが多いキャラクターだったので、もっと力感があった方がいいかとも考えたのですが、ゲイリー自身強いキャラクターではないので、あのトーンになりました」と下野は語る。

 そんなゲイリーの優しさを象徴していたのが、「ハグしてもいい?」と同意を得てからハグをするところ。上戸も「勢いや自分の思いだけでなく、相手を思いやるワンテンポを置けるキャラクターってなかなかいないと思います」とお気に入りの様子で、「ゲイリーは、いろんな気遣いができるんですよね」と下野も共感する。


 劇中、心優しきゲイリーのミッションの相棒的存在となるのは、新キャラクターのオオヤマネコのパウバート。町を牛耳るリンクスリー家の御曹司だが出来損ないで、ゲイリーとパウバートは“のけ者”という点で共通する部分がある。

 演じたのは、下野と同じくディズニー作品初参加の山田涼介。下野も森川も山田の芝居には驚いたそうで、「パウバートの優しさが詰め込まれていましたし、ディズニー作品初参加とは思えないくらいうまかったです」と言う下野に、「すごいよね。振り幅が素晴らしかった」と森川も賛同する。

 山田のみならず、江口のりこや高嶋政宏(※「高」は「はしご高」が正式表記)、梅沢富美男、熊元プロレス(紅しょうが)、ジャンボたかお(レインボー)、柄本明、こっちのけんと、堂本光一など、日本版声優には驚きのメンバーがそろっており、全員はまり役と言えるほど光る芝居を見せている。

 ディズニー作品初参加や声優初挑戦の人も複数いる『ズートピア2』だが、なぜこんなにもクオリティーが高いのか。声優生活40年を迎えた森川に「いい声優とは」を聞いてみると、「見ている人が我々の存在を忘れて、その作品に集中できるというのが、声優としては1番うれしいことなんです。キャラクターそのものを楽しんでいただけるように芝居する。常にそうありたいと思っています」と語る。エンドクレジットやパンフレットを見て、初めて気付くキャストも多かったことを考えると、改めて見事なキャスティングだったと感じさせられる。

 そんな『ズートピア2』ファミリーは、驚くほど仲が良い。
公開前日に開催された前夜祭イベントの舞台あいさつでは、10人という大所帯だったのにもかかわらず、誰一人仲間はずれにならず、映画さながらのわちゃわちゃ感が感じられる雰囲気だった。前作から9年が経ち、かつ本作で初登場のキャストがいるのが信じられないくらいだ。

 「この温かい雰囲気を生み出しているのは?」と聞いてみたところ、「そりゃあ、もう!」と森川と下野が同時に上戸の方を向いた。

■『ズートピア2』ファミリーなぜ仲が良い!?

 「そんなことないですよ~!」と照れながら謙遜する上戸は、「皆さん、会った瞬間から、こんな雰囲気だったんです。本当に裏表がなく話しやすい方たちで、舞台裏の雰囲気そのままにステージに出ている感じでした。舞台あいさつでは、誰かが話している時に、必ず誰かがサポートに回っていて、みんなマイクを口から離さないんですよね。わたしもすごく楽しかったです」と全員を称える。

 それでも本作から参加した下野は「でも、やっぱり上戸さんと森川さんお二人の力だと思います」と断言。「ゲイリー役として、いろんなイベントでご一緒させていただきましたが、お二人が話しかけたりして、他の方たちの気持ちをほぐしてくださったんですよ」と明かす。

 上戸と下野が初めて対面した際の距離の詰め方もユニークだったようで、上戸は「テレビ番組のコメント撮りの際に、事前に楽屋でごあいさつさせていただいたのですが、少ししか言葉を交わせず、いきなり本番だったんです。『ゲイリーのうろこは体に何個ついているか?』というクイズを出すという内容だったのですが、下野さんの服をうろこに見立てて、数えるふりをしたら、下野さんが『ゲイリーちゃうわ!』ってツッコんでくださって(笑)」と下野のノリの良さを確信した瞬間があったという。

 さらに上戸と森川が生み出した温かい空気感は、ほかのキャストにも連鎖していく。
早い段階から本作のプロモーションに参加していた下野は、江口と山田と初めての3人での収録で、「ここは先にイベントに出てきた俺がいかなきゃ!」と使命感を感じ、距離を縮めるための突破口を開いていったそう。

 すると前夜祭イベントのレッドカーペット前の待機時には、江口の方から下野に「わたしたち同い年で誕生日も1週間違いらしいですよ」とコミュニケーションを取ってくれたと言い、森川も「江口さんから!」と驚いた様子。上戸が初対面の下野に感じたのと同様に、「『この人はイケる!』と思いました」と下野はうれしそうに振り返る。

 イベントや収録を重ねるにつれ、絆も増していった『ズートピア2』ファミリー。前夜祭イベントでは森川と上戸の「ニックとジュディ」「ジュディとニック」の掛け合いが生披露されたり、「お気に入りの新キャラ」を問われた森川が登壇者が担当した新キャラすべての良いところを紹介したり、回答に困った山田に下野が助け舟を出したり、とハイライトが満載だった。

 作品のみならず、キャスト陣の掛け合いも“メロいポイント”として挙げられる本作。森川は『ズートピア2』ファミリーの仲の良さについて「『ズートピア2』がそうさせるんだと思います。ここまで打ち解けられたのは、作品の力が大きいかもしれません」と分析。『ズートピア2』が持つポジティブなエネルギーが与える影響は計り知れない。

 そんな『ズートピア2』で“お気に入りのメロいシーン”を三人に選んでもらった。全員選びきれないようで、絞り出すようにセレクトしてくれたが、上戸は「好きだぜ、相棒」のシーンを選出。「台本に違うセリフが書いてあって、収録の際に初めて知ったという驚きも込みで印象的でした」と話す。


 それから下野が選んだのは、ジュディとニックがスノーモービルに乗るシーン。いつもジュディが運転しているが、ここではニックがハンドルを握り、ジュディがニックの運転の下手さを指摘する。「ニックが『わりぃかよ!』ってさらっと返すんだよね」と森川。下野は「前作のラストでニックがジュディの運転が下手だとイジっていましたが、それを踏まえて、どっちも運転下手くそなんだな~っていう確認ができるシーンというか。ジュディは荒いしニックは制御できていないし、でもそんな二人が愛おしくて。言い合いじゃなくて『お前もかよ~』という感じで笑い合うシーンが本当に良かったです」と熱弁する。

 そして森川が選んだのは、クライマックスでジュディとニックがお互いの本音をぶつけ合うシーン。「気持ちの整理ができていないまま口が動き続けて、同時にしゃべるくらいの勢いでしたよね」と言う上戸に、「実は僕の中で1番時間がかかったシーンだったんです」と明かす森川は「そんな背景もありつつ、劇場のスクリーンで見た時に、『うわ…このシーンって本当に大切なんだ』と改めて実感しました」とかみ締める。

 ちなみに下野によると、その直前で描かれた「君たちの友達を探してくるよ」とゲイリーが気を使って退場する際のセリフは、さまざまなパターンを試したのだという。「最初はコミカルな芝居も録ってみたのですが、最終的には『二人の邪魔をしてはいけない』というシンプルなトーンになりました」とゲイリーのナイスアシストの裏話を明かした。

 「『ズートピア2』の話だといくらでもできちゃう」と時間いっぱいにエピソードを詰め込んでくれた上戸、森川、下野。そんな三人が今夢中なのが『ズートピア2』グッズ。イベントでは下野がゲイリーのマフラーに興味津々だったが、上戸いわくグッズが全然手に入らないそうで、「この三人が集まるといつもグッズの話になるんです」と森川は笑う。すると、下野から「好きだぜ、相棒」の声を吹き込んだにんじんペンを販売すると売れるのではないかという提案が。

 森川は大笑いした後、「確かに。でもそれはプレミアムだからね。もうちょっと時間が必要かもしれないね」とズルい回答。加えて森川が「興行収入100億円達成記念とかね」と言い、「それいいですね!!」と上戸も賛同。「急に商売人になった(笑)」と下野がツッコみ、一同大笑い。絆と作品愛の強い三人が描く夢のにんじんペン。いつか実現する日が来ることを切に願う。(取材・文:阿部桜子 写真:上野留加)

 映画『ズートピア2』は現在公開中。

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