ナチスの医師ヨーゼフ・メンゲレの知られざる日々と心の深淵を描いた映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』より、予告編と場面写真が解禁された。
【動画】ナチ思想を手放すことなく、逃亡し続けた1人の医師『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』予告
アウシュヴィッツ収容所で「トスカ」のアリアを口ずさみながらユダヤ人の生死を選別し、優生学研究の名のもとに双子や被験者への人体実験を行ったナチス医師、ヨーゼフ・メンゲレ。
今回解禁された予告編は、アウグスト・ディール演じるヨーゼフ・メンゲレに投げかけられる言葉から始まる。「ヨーゼフ、逃げる必要はない。務めを果たしただけだ」と。逃亡先のアルゼンチンで、彼の再婚を祝う宴に集うナチ残党たちは、ヒトラーへの忠誠を捧げ、ナチスの復活を信じている。そんな仲間たちと逃亡の日々を送る中、呼び寄せた最愛の一人息子が「真実を聞かせてくれ。アウシュヴィッツで何を?」と問いかけ、彼の罪に迫る。
オーケストラを指揮するかのようにユダヤ人の生死を選別し、非人道的な人体実験を誇らしげな笑みで行っていたメンゲレにとって、アウシュヴィッツでの「人生最高の日々」は色彩豊かに映し出される。一方、現実世界ではナチ戦犯への追及が激しさを増し、彼は精神的に追い詰められていく。そして「君の戦争は終わってない!」という言葉から必死に逃げる老年のメンゲレを待ち受けるものとは…。
クラシカルでノワールなスタイルを貫く本作の映像は、戦時下の自身の行為に一点の疑念もないと主張するメンゲレを象徴するかのように、シャープなメスを思わせる冷酷さを放つ。皮肉にも、彼にとって「人生で最も輝かしい時期」となったアウシュヴィッツの日々は、ホームビデオのような温かみを帯びたカラー映像で描かれ、極端に対照的な逃亡生活と輝かしき記憶を観客に体感させる。
あわせて解禁された場面写真では、罪を認めないまま逃亡者としての悲哀をにじませるメンゲレの姿が切り取られている。アウシュヴィッツ収容所勤務時代から逃亡直後の30代、そして人生の幕を閉じる70代までのメンゲレを演じるのは、ナチスを題材にした作品に欠かせない名優アウグスト・ディールだ。
本役のオファーに対し、ディールは「なぜこの男と彼の思想に、映画という場を与える必要があるのか?」と、これまでにないほど悩んだという。しかし、脚本に描かれた“モンスター”のような人物像の中にも、深く人間的な側面があることに惹かれたと明かしている。
アウシュヴィッツ収容所で筆舌に尽くしがたい数々の残虐行為を重ね、戦後は複数の偽名を使って異国の地を転々としながら逃亡生活を続けたメンゲレを、「犯した罪の罰を受けない絶対的な悪」と断罪するセレブレンニコフ監督。本作は、その視点から人間の魂の暗部を容赦なく暴き出し、混迷を深める現代を映し出す鏡のような映画でもある。
また、原作であるオリヴィエ・ゲーズ/高橋啓訳の小説『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』は、2月19日に東京創元社・創元ライブラリより文庫化予定だ。
映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』は、2026年2月27日より全国公開。
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