ヴィッキー・クリープスが主演を務め、寛一郎、尾野真千子らが共演する河瀬直美監督最新作『たしかにあった幻』の完成披露上映会が、1月22日に行われ、尾野、北村一輝、永瀬正敏、河瀬監督が登壇した。

【動画】揺れる心が交差する『たしかにあった幻』予告編

 本作は“愛のかたち”と“命のつながり”をモチーフに、日本の失踪者と心臓移植の現実を重ねて描く、時を超えて運命が交差する珠玉の人間ドラマ。



 主人公コリーを演じたのは、『ファントム・スレッド』(2017)、『蜘蛛の巣を払う女』(2018)などで知られるルクセンブルク出身のヴィッキー・クリープス。コリーが屋久島で運命的に出会う謎めいた青年・迅には寛一郎。さらに、尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏ら、実力派キャストが顔をそろえた。

 昨年のロカルノ国際映画祭でのワールドプレミアを経て、本日が日本で初めてのお披露目。河瀬監督は「このような舞台挨拶ができるというのは、皆さんに映画をお披露目できる唯一無二の日です。河瀬組をいつも支えてくれる皆さんと一緒に舞台に立つことが出来て感無量です」と笑顔を見せた。ロカルノ国際映画祭での反響については「割れんばかりの拍手と『河瀬、帰って来た!』という愛を感じてグッときました。ロカルノ国際映画祭でお披露目出来て良かった」としみじみ思い出していた。

 息子を亡くし、夫の亮二(北村)と共に病院にお弁当を届けているめぐみを演じた尾野にとって、俳優デビュー作『萌の朱雀』そして『殯の森』以来、久々の河瀬監督作品。河瀬監督から「これまで何度かオファーを出しているけれど、大女優になっているからスケジュールが合わないの」とツッコまれて笑う尾野だったが、「河瀬監督から『主演以外やるの?』と言われたので『やるし!』みたいな!(笑)やると決まったら皆さんご存じの通り、恐怖の河瀬組の日々が始まります。それを知っているだけに何を勉強すればいいのか、どんな思いでいればいいのか、考えたけれど何もまとまらず。普通の役作りは通用しないので、身一つでいくしかないと。
それが正解だと思って挑みました」と覚悟をのぞかせた。河瀬監督は尾野のシーンに触れて「100点超え。河瀬組の一番強いところが出ました」と太鼓判で、尾野は「あざす!」と喜びを噛みしめていた。

 めぐみと一緒にお弁当屋をする亮二役の北村は、長編映画としては初めての河瀬組参加。河瀬組の徹底的なリアリズム演出について「本物を撮ろうとすると当然きつくなる。それはもちろん理解して参加しました」と覚悟を語り、撮影前にお弁当屋に見学に行き、役のモデルとなった人物と対面したという。そんな経験を通して「上っ面で演じても通じないと思った。この映画の現場に入ってお芝居を見せるというよりも、この映画で描かれているような現実がある事を伝える人間として現場に入れば良いと思った。ただの人間として入って、感じるままに現場にいました」と回想した。

 心臓移植のドナーとなる少年の父親・雅也役の永瀬は、近年の河瀬作品の多くに出演。今回も「河瀬組だ!という日々」を感じたそうで「監督は物語の前後もお撮りになるので、映画に出てこない所からも詰ませてもらえる。改めて身が引き締まりました」と感激。
俳優陣は初号試写を鑑賞したそうだが、河瀬監督いわく、初号、映画祭、日本公開という編集の異なった3バージョンが存在しているそうで、永瀬は驚きながら「日本公開版では出演していなかったりして…」と発して笑いを取っていた。

 また、“人生において大切にしているもの”“心にずっと残っているもの”を『たしかにあった●●』として発表。北村は「たしかにあった津原さんの言葉」といい「仕事がない時に僕がお世話になった人。3、4年前に亡くなってしまいましたが、仕事のない時にいつも励ましてくれてゴハンにも連れて行ってくれた。何度もくじけそうになった時に『志は大きく持て! 小さくまとまるな』などと色々な言葉をかけてくれた。その人がいなければ今の自分はない。津原さんの言葉は今も胸に刻んでいます」と追悼した。

 尾野は「台本」といい「撮影が終わった台本は、日々スケや総スケも含めて全部取ってある。昔はスケジュールに一言コメントがあったりして、それが手書きのものだったり。それを全部取ってあるので押し入れパンパン! 今後どうしていこうか悩んでいる」と深い愛着がある様子。

 「想い」という永瀬は、心臓の病で実弟を失くしている事を明かしながら「先に逝った人たちの事を忘れちゃうのかなと思いきや、全然忘れられない。その時の想いなどは永遠に消えない。
いなくなった気もしなくて、亡くなってしまって終わりなのかなと思っていたけれど、全然終わらない。想いがあったらずっとなんだと思う」と述べた。

 一方、河瀬監督は「フランスロケ」といい「つまり日本公開バージョンはフランスロケが…という事です!」と何かをほのめかして、永瀬や尾野を「マジで!?」と驚かせていた。

 最後に河瀬監督は「映画というものが無くなっていく時代に入ってくるかもしれませんが、2026年はもっと泥臭く、諦めない想いを持って突き進んでいく時代でもあるのかもしれません。本当に会いたい人に会いたいから会いに行くとか、夢を捨てたくないから諦めないとか、そのような気持ちでいっぱいになるような。そんな想いを主人公コリーの最後の瞬間に託しました。どうぞ最後まで楽しんでご覧ください」と呼び掛けて、舞台あいさつはあたたかいムードで終了した。

 映画『たしかにあった幻』は、2月6日より全国公開。

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