水曜深夜3時にラジオをつけると、おじさんの豪快な笑い声が響くようになって、今年4月で早8年。テレビプロデューサー・佐久間宣行は、『オールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送/以下『ANN0』)の最年長パーソナリティとして、そのクリエイティブな日常と、過剰ともいえるエンタメ愛を発信し続ける。

この度『佐久間宣行のANN0』第4弾となる番組本『50歳ラジオパーソナリティ佐久間の深夜3時のエンタメ過剰摂取‐佐久間宣行のオールナイトニッポン0(Zero)2023‐2025‐』が発売。ラジオパーソナリティとしての佐久間の変化、そしてエンタメへの思いをたっぷり聞いた。

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■“深夜3時”に過ごした40代 天国も地獄も味わったコロナ禍

――『ANN0』4冊目の書籍ご出版、おめでとうございます。もうラジオも約8年になります。書籍のまえがきでは「いつ番組が終わってもおかしくない」と考えるようになったと書かれていました。

佐久間:うん、そう思ってます。だって、50になったんですからね。40代はほとんどラジオやっていたんで。もう完全に日常ではあるんですが。

――佐久間さんは、テレビ、YouTubeなどさまざまなお仕事をされていますが、その中で「ラジオ」というメディアの持つ力や、他のメディアとの違いはどう感じていますか?

佐久間:大きく違います。全然違う。やっぱりラジオは独特ですね。
ラジオのように長く1人喋りをするっていう機会ってほぼないんで。もちろん嘘をつけばバレるし、人柄も伝わるし。だから、信頼される時は信頼されるし、裏切られたと感じる時は大きく裏切られたと感じるだろうし。人格が出るメディアだなと思ってます。

――そんなラジオのパーソナリティとして、成長したと思うところは。

佐久間:成長したと思ったのは、2年くらい経ったころ。なんとなく喋ることの中に感情を込められるようになったり、エピソードトークも僕だから喋れる話が出来上がった気がして。自分のことを良い所も悪い所もあんまり隠さないで喋った方がいいなと思うようになってから楽になって、それから本当に自分が変わっていったので、結果喋ることも変わっていった感じですね。

――この8年間を振り返って「やっていて良かった」と思った出来事と、逆に「地獄だった」出来事をそれぞれ教えてください。

佐久間:両方とも、やっぱりコロナ禍だと思います。コロナ禍に人とつながっていくことの素晴らしさみたいなのを改めて感じたのはラジオだったし。うれしさを感じた中で、逆にきつかったのもコロナ禍ですね。


――リモートでの放送もやっていましたね。

佐久間:はい、なんせ家から出ないんで、エピソードがない。喋ることが毎週一緒だから。

――エンタメ業界全体がガラッと変化した時期でしたね。そんな中で、ラジオが一番つながれる感覚が?

佐久間:それはね、すごくありました。ラジオのように生で長時間パーソナリティが喋ってて、そこにリアクションが来る。他のメディアだと、やっぱりコロナで距離が離れたなって感じることが多かったです。

■エンタメ過剰摂取の秘密「新しいものが勝手に入ってくる環境を整える」

――本作のタイトルにもなっている「エンタメ過剰摂取」という部分に関して、エンタメを摂取し続けることはとても心身の体力がいることだと思います。時間の作り方や、心の切り替え方を教えてください。

佐久間:忙しい時は、心が楽しくなるものから見るって決めてます。ハッピーエンドなものとか見るようにしてて。重いものや残虐なものは元気な時しか見れないなと思ってるんで、摂取しやすいものから見るって決めてて。
時間の作り方としては、もう強制的に予定を入れちゃうって感じですね。見たい映画が公開する日が決まったら、この時間にこれを見るって決めちゃって。

――書籍には、『ANN0』でもおなじみの「最近面白かったエンタメ」のリストが掲載されています。年齢を重ねて、摂取するエンタメには変化がありましたか?

佐久間:僕が30を超えたぐらいの時に、結構新しいクリエイターに出会って。ハイバイの岩井(秀人)さんとか、ヨーロッパ企画の上田(誠)さんとか、ナカゴーの鎌田(順也)さんとか、そういう人たちのことは今も追っかけているんですよ。でもこの2、3年、ダウ90000の蓮見(翔)くんもそうだし、劇団普通とか、東京ニコニコちゃんとか、最近知った新しいクリエイターを追っかける楽しみみたいなのも増えてきましたね。同世代のクリエイターから、さらに下のクリエイターを応援するというか、ファンになったことが、一番変わったことかな。

――意識して新しいものを取り入れるようにしているのでしょうか、流れに身を任せた結果新しいものが入ってくるのでしょうか?

佐久間:両方です。新しいものが入ってくるような環境を整えないと、入ってこないんですよ。だから、そういう意味で言うとちゃんと準備してるのかもしれないけど、別に探してるわけじゃなくて、新しいものが勝手に入ってくるような環境にしてるっていう感じですね。

――ご自身の『ANN0』も、リスナーにとってはそういう環境の一つになっています。

佐久間:リスナーに対しては、いろんなもののきっかけになりたいって気持ちですかね。
新しいものを得るきっかけになりたいのもあるし、いくつになっても楽しそうにやってるおじさんの姿を見せたい。僕自身がそうなんで、それがうまく伝わるといいなとは思ってます。

■ブレイクメーカー・佐久間Pの嗅覚 キーワードは“原酒”と“割り方”

――先日の『ANN0』では、理想の上司についてもお話されていました。上司や先輩としては、仕事をするうえで心がけていることはありますか?

佐久間:一時期はあんまり若手に干渉しない方がいいんじゃないかなと思ってたんです。僕は僕でやれることをやって、若手は若手でやるべきだと思っていて、それは大きくは変わってないですけど、特に出演者に関しては、僕にしか引き出せない魅力があるんだったら、若手と関わろうかなっていう気持ちはちょっとあります。

――若手の方とは少し距離を取りながら?

佐久間:でも僕ずっとそうなんですよね、ほとんどの人に対して。芸人さんもみんな言ってるんじゃないですか? 冷たいって。メシにも行かないし、収録終わったらすぐ帰るし。僕は基本的には業界の人と特別に仲は良くなくて、30~40代ぐらいまで大学の友人中心で、会社でも友達のように付き合う人はいないっていうタイプだったんですけど、最近ですかね、少しずつ解禁して。もうおじさんだからいいかって。それまでは、プライベートは完全に分けていたんです。

――では、好きなクリエイターの方を追うというのも、仕事でつながってというよりは純粋にファンとして?

佐久間:そうです。
基本的に試写会や招待にも行かないし。だって、関係者として行ったら面白くなくても感想言わなきゃいけないじゃない。だから、基本は極力自腹で行く。

――ファンになる対象の方と、一緒に仕事をしたいと思う方は別のベクトルですか?

佐久間:そうですね。別にファンじゃなくても、僕と組んだ方がプラスになる人と仕事をしたいと思います。

――佐久間さんの番組やコンテンツでは、若い才能を紹介することが多いですが、「この人は伸びるな」とビビっと来るポイントがあれば教えてください。

佐久間:その人にしかない匂いや武器がある人。今すぐにみんなに伝わらなくても、“癖”みたいなものがちゃんとある人は、その“原酒”をおいしいお酒にする方法を知っているクリエイターと出会うとブレイクする気がします。頭のいい人は自分で自分の“売れる割り方”、サワーとかカクテルみたいな、自分のスピリッツのおいしい割り方を考えつくんですけど、大抵の人は自分ではできない。中途半端に自分で自分を薄めちゃうよりは、ちゃんとおいしくしてくれる人に出会うまでは、濃いままいた方がいい。

――“濃さ”で言うと、今注目している出役の方はいらっしゃいますか?

佐久間:誰だろうな……ダイアンのユースケくんとか。もう売れてはいるけど、津田くんのブレイクに比べるとまだまだ面白くなりそう。


――では最後に、佐久間さんにとってラジオを続ける意義を伺えますか。

佐久間:もう本当に、楽しいからですね。楽しさと辛さで、辛さが上回ったらやめ時なんだなと思います。

(取材・文 小島萌寧)

 書籍『50歳ラジオパーソナリティ佐久間の深夜3時のエンタメ過剰摂取‐佐久間宣行のオールナイトニッポン0(Zero)2023‐2025‐』は扶桑社より発売中。

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