大河ドラマ『光る君へ』、ドラマ『しあわせな結婚』などさまざまな作品で抜群の存在感を放つ玉置玲央。演出の松居大悟、共演の前田敦子をはじめとする気心知れた座組で間もなく幕を上げる舞台『ポルノ』で、高校時代に衝撃を受けたと語る作品で主演を果たす。

稽古中の玉置に、念願叶い出演となった本作への熱い思いを聞いた。

【写真】お茶目なポーズがかわいすぎ! 玉置玲央インタビュー撮りおろしショット

◆高校時代に観た初演に衝撃 原体験として役者人生の道しるべに

 長塚圭史率いる阿佐ヶ谷スパイダースが2002年に上演した本作は、エンターテインメントでありながら、現実と妄想のあいだを行き来する、不思議であたたかく、少しスリリングな“ハートフルホラー”。初演を東京と福岡というそれぞれの地元で高校時代に観ていたという玉置と松居が令和の時代に新演出版として本作を届ける。前田のほか、鳥越裕貴、藤谷理子、小野寺ずる、岩本晟夢、うぇるとん東と実力派キャストが勢ぞろいし、美しくも醜悪な恋物語が幕を開ける。

――初演を玉置さんも松居さんもご覧になられていて、それぞれ衝撃を受けた作品だと伺いました。

玉置:事務所のメンバーでバーベキューをしていた時に大悟と「『ポルノ』観てたの? 衝撃的な作品だったよね」と話したことを覚えています。この作品には象徴的な演出がひとつあって、「あれすごかったよね!」と盛り上がったんですよね。ネタバレ大丈夫な範囲でお話すると、ビラが大量に上から降ってくるんです。それが終演後も客席にたくさん落ちているのですが、僕、持って帰って大切にとっていて。実は大悟も同じことをしていたと聞いて、この人と『ポルノ』をやる日が来るかもしれないと思いました。

――『ポルノ』という作品は高校時代の玉置少年の目にどう映りましたか?

玉置:高校1年生だったんですけど、もう演劇に携わっていました。その時にお世話になっていた方が、「阿佐ヶ谷スパイダースは面白いから観に行った方がいいよ」と連れて行ってくれたんです。
『ポルノ』というタイトルだったけど、変なもの、危ないものを観に行くという気持ちはなく、大きな規模の大人の演劇を観に行くんだ、楽しみだな、くらいのつもりで観に行きました。

それまで結構王道的な芝居ばかりを観ていたので、「舞台ってこういうことをやっちゃっていいんだ!」「こういう作品もあっていいんだ!」というのを初めて観て。価値観がひっくり返されるというか、新しい価値観をぶち込まれる感じの体験を多感な時期にしちゃったんですよね。今でも原体験として、自分のお芝居や舞台の指標、道しるべになっているような作品です。

――今回大人になった玉置さんが改めて台本を読んで、何か新しい発見はありましたか?

玉置:不謹慎さや卑猥さみたいなものは変わらず台本に描かれていますが、高校生のころは、人の前で言うことがはばかられるような内容をあえて舞台の世界では表現していいんだな、そういう面白さもあるんだなという短絡的な考え方でした。でも今回台本を読んで、実際にセリフとして取り組んでみると、当然そこには意味がある。当時上演していた人たちは20代中盤だったんですけど、16歳の僕とは違う、その時抱えている問題や悩み、苦しさというものが込められている台本であり演劇であったんだなというのが今になってわかったことですね。ただ無軌道に暴れているわけじゃなかったというのはまざまざと感じました。

◆自分にとっての正しさを純粋に追い求める主人公に憧れも

――演じられる国旗耕二は坂の多い町の町会議員に立候補し、なんとか支持率を上げるために予想を超えた恐ろしい行動に出るというキャラクターです。共感するところはありますか?

玉置:自分にとって正しい状況、正しい姿、こうあってほしいという願望みたいなものを邪な気持ちなしに純粋な気持ちで追い求めている人物だと僕は思っているんです。世間や社会、人の目がどうあっても自分はこうある、こういうことを貫くという姿勢はすごく憧れるし、そうありたいなと思うところはいっぱいありますね。

彼はちょっと間違えちゃったけど、思いの強さや、信じることへの強靭さみたいなものは、自分もかくありたいし、そういうことを追い求めたいという気持ちはあります。
そうした共感するポイントをたぐり寄せて、国旗耕二という役を自分の中に立ち上がらせていきたいと思っています。

設定上やっぱり突拍子もない世界観であり役であるので、今までのキャリアで演じてきた役とも全然違うキャラクター、役作りになるでしょうし、かといって、今までやってきた役や経験をかき集めて今回の役を立ち上げるのかっていったら、意外とそうでもないような気がしています。でも全くもって自分の中の未知の領域かというとそうでもなくて。いろいろ試しながら模索しています。

――前田敦子さんとは何度も共演されていますが、舞台での前田さんにはどんな印象をお持ちですか?

玉置:最初にドラマで共演させていただいて、次に舞台でもご一緒しました。彼女が出ている舞台も観に行ったりしていますが、結構その都度印象が変わるんです。それはドラマと舞台でジャンルが違うからというのもあると思うのですが、その瞬間その瞬間を正直に生きてらっしゃる方なのかなと思って。自分の正義や立ち居振る舞いを貫く今回の登場人物じゃないですけど、己をきちんと貫けてらっしゃる方。その姿はとても頼りになるし、信頼できるし、憧れもあります。前田敦子さんが今回相手役なのはめちゃくちゃ心強いですね。

――前田さん以外にも個性的な皆さんがそろわれる中、座長としてどうカンパニーをまとめていかれますか?

玉置:語弊があるかもしれないですけど、座長、好きなんですよ。得意なんだと思うんです。
全体を俯瞰して見て、今何がどうなっているかとか、もっと言うと、俳優さんっていうよりは人間として今この人はこういう悩みを抱えているな、こういうことが自分の中で滞ってるなというのを知ることが得意というか。そこをちょっとほぐして滞りなくしてあげて、心をちょっと軽くして、作品に寄与させてあげるというのが好きなんです。

あと、自分の所属している劇団の年長側の人間でもあるので、できているかどうかは別として、芝居とか姿勢を背中で見せていくというのも結構好きなんです。

今回に関しては本当に個性豊かなメンバーが集まっちゃっているんで(笑)、もう奔放にやってくれ!俺も奔放にやるから!というつもりで取り組もうかなって思っています。そのほうがみんなの個性ももちろん活きると思うし。それぞれが持てる能力を最大限発揮できる最高の現場になるべく振る舞えたらいいかなと思ってます。

――前田さんが「玉置さんのおかげで稽古場の雰囲気が出来上がっている。“君の友達だよ!”みたいな感じでみんなに寄り添ってくれるので、『トイ・ストーリー』のウッディみたい」とおっしゃっていました。

玉置:(笑)。「演劇界のウッディ」だと自分でもいっぱい言っていこうと思います。

◆同期で同い年――盟友・松居大悟の演出家としての魅力は?

――“演出家・松居大悟”の魅力はどんなところにあると思われますか?

玉置:徹底的に俳優に寄り添ってくれるところは、彼の持ち味というか素敵なところだと思います。大悟は俳優さんの納得のために自分が寄り添う。
先ほどの座長の話じゃないですけど、俳優さんの滞りがなくなれば絶対にいいものになるので、たぶん一番いい形なんですね。

でも同時に彼は欲張りで、自分の欲求も解消したい、自分の滞りも解消したいから、俳優に寄り添って、お互いの意見や考えていることをぶつけ合って生まれたものを一緒に育てていきましょうというタイプの演出家なんです。しかもそれを妥協なく徹底的にやるんですよ。そこが僕は大悟の好きなところだし、信頼できることだし、同期として誇りに思うことであるんですね。今回の『ポルノ』という作品においては演出家と座長という関係性になりますけど、全幅の信頼を寄せてこいつと一緒に作品を作っていけるなと思えるところでもあります。

――そうした印象は出会った頃から変わらずですか?

玉置:僕はそうは思っていないんですけど、「ゴジゲン」という彼のやっている団体と僕が所属している「柿喰う客」という団体のウマは合わない、作風も全然違うし、“陽キャ”と“陰キャ”みたいな感じだと大悟がよく言うんです。だから最初大悟は苦手意識があったって言ってましたね。ガツガツ来る、オラついた怖い人みたいな印象だったみたいで。僕は同期だし、同い年なんで信用してるというか、一緒に仲良くやりたいのになぁなんて思っていました。

そこからだんだん一緒に作品を作るにあたって彼の変遷も見てきたし、自分の成長とかいろんな道を歩いてきた姿を見せてきたから、どんどん信頼関係が太くなっていきました。いろんな信頼の形をお互い作れるようになったというのもあって今に至るんですけど、こんな関係になるとは思っていなかったです。

――今回、お二人の思い入れの強い作品でどんな化学反応が起きるか楽しみです。


玉置:ふたりの思い出をたどる創作みたいになっちゃうとそれは良くないので、そこだけは気を付けようとお互いに言っています。

◆令和にそぐわない内容を上演する意味を考え続けたい

――20年を超えるキャリアの中で玉置さんにとって転機を挙げるとするとどの出会いになりますか?

玉置:やはり大杉漣さんが最後に主演された『教誨師』という映画は間違いなくターニングポイントでした。漣さんとの出会いもですし、取り組んだ役もそうですし。おかげさまで役が評価されて賞もいただけて、そこからいろんなことが少しずつ楽になって、こだわりとかも捨てられるようになった気もします。

――昨年40代を迎えられましたが、40代の“玉置玲央”はどんな姿を見せていきたいと考えられていますか?

玉置:自分で意図して狙ってできるものかどうかわからないですし、しかも極めて個人的なことになっちゃうんですけど、どんどん楽になっていければいいなって。芝居することも、生きていくことも、人と関わっていくことも。

20代の前半なんか特に、なんとか人に気に入られなきゃ、次の仕事に繋げなきゃ、自分を取り巻く人たちも幸せにしなきゃとばかり考えていました。もちろんそう考えることは大事だし、今も考えるべきだとは思うんですけど、でも、大切なのは自分自身、満足させるべきはまずは自分自身だっていう考えが、年齢やキャリアを重ねていく中で芽生えてきたので、そこをちょっと信じて、それに寄り添って生きていってみてもいいかなと思っていて。なので、何をするにしても自由に。凝り固まった考えや、こうしなきゃ、ああしなきゃ、ここに応えなきゃみたいなものを手放して、40代、50代、60代は歩いていきたいですね。

――最後に本作を楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。

玉置:はっきり言いますが、内容としては、令和の時代にそぐわない、価値観とかがコンプラに引っかかってしまいそうな内容なんです。
じゃあ、なんでやるのよというのをずっと考えていて。それは僕と大悟にとって思い出深い作品だからというのもあるけれど、大悟が普遍的なテーマだと言っていましたが、やっぱり考え続けなきゃいけないことが描かれているんです。

稽古場でもみんなで話したんですけど、この『ポルノ』というタイトルはいろいろな意味で取れると思うんです。僕はやっぱり何か見てはいけないものを覗き見てるとか、見てしまっているっていう感覚を総じて「ポルノ」という言葉に捉えられるんじゃないかと思っていて。登場人物の本来の姿、裏の姿って言っていいのかわからないですけど、そうした部分をお客様に垣間見せるという意味で『ポルノ』というタイトルを受け取ってくれればいいなと思っています。

登場人物にはそれぞれの正義と正しさと愛情がその歪んだ表現や世界の中にある。それを俳優としてきちんと突き詰めて劇世界を立ち上げることができれば、この時代においては不謹慎かもしれないことが、きちんと意味を持って観てくださるお客様にも伝わるんじゃないかと思っていますし、そう信じています。

(取材・文:近藤ユウヒ 写真:高野広美)

 舞台『ポルノ』は、東京・本多劇場にて4月2日~12日、福岡・西鉄ホールにて4月15日・16日、大阪・サンケイホールブリーゼにて4月25日・26日上演。

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