第2次世界大戦から逃げ延びたナチスドイツが月の裏側に第4帝国を築き上げ、地球襲撃を虎視眈々と狙っていた……。そんなセンス・オブ・ワンダーな世界観を見事映像化したSF映画「アイアン・スカイ」について「上等な映画では決してないが、『スター・ウォーズ』以降の大作主義を総反省させる、何度観ても面白い映画」と猛プッシュするのが「機動戦士ガンダム」などで知られる富野由悠季監督だ。


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「画面やセリフにもナチスや人種問題が出てきて、こんな映画が本当に公開されてしまうのだろうかと恐れた」と初見を振り返る富野監督。面白い映画か否かは開始3分で決まるそうだが、そんな困惑もあったために心を掴まれたのは15分ほど経ってから。しかしそれ以降は、あっという間に引き込まれてしまったという。「映画ならではの虚構性を含め、映画のもつ娯楽というものを思い出させてくれた。気持ちのいい尺だし、宇宙SF映画としての見世物感溢れる気構えが褒められる」と評価しながら「あの『スター・ウォーズ』以降、SF映画は徹底的にリアルであるべきという風潮が蔓延しました。日本の映像製作者の問題は、そういったハリウッド大作のコピーしかやってこなかったところにある」と自省を込めて、喝を入れる。

 アニメーション監督として知られる富野監督が、ここまで実写映画に対して熱く語るとは驚きだった。「なんとなく撮っているようなカットはないし、シーンの繋ぎ方もまさに映画的。『アイアン・スカイ』は、このテの映画を作るためのコツが沢山入っている」と熱弁する背景には、現在の日本映画界に蔓延するテレビ的映画ではない、生粋の映画に対する愛情があるからだろう。実は富野監督には、温めていた実写映画企画があったのだ。「お声が掛かればやりますけど、掛からなければやりません」と明言を避ける富野監督だが「実写であれば、時代劇を撮ってみたいね」と構想を明かす。

「チョンマゲにするなら、役者には頭を剃ってもらいたいね。
それが嫌
というなら、ケンカもの。僕は映画のための画を撮るのであって、役者のための画は撮りません」とヴィジョンが明確なぶん、富野監督の時代劇実写映画というものを一度でいいから観てみたい。アニメも実写も含め、今後の活動について期待を込めて聞くと「まだ元気なので注文があればやりますよ。僕みたいなフリーランスの人間は、死んだときがリタイアのときだと思っていますからね」と生涯現役宣言してくれた。

 映画「アイアン・スカイ」は9月28日より全国公開
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