一番悪い奴は誰だ?“騙し”と“裏切り”の巨大抗争「アウトレイジ ビヨンド」予告編解禁!
ヤクザ映画が最も盛り上がったのは、遡ること50年前。
なぜ今ヤクザ映画なのか?その問いに北野監督は「ヤクザ映画は、日本において唯一男が死ぬか生きるかという問題を、ある程度描ける唯一のジャンル。外国だと第二次世界大戦やベトナム戦争として映画の素材になるようなものが沢山あるけれど、日本だと日露戦争くらいで、それを今映画にしても新しくはない」と答える。その一方で、映画「日本侠客伝」「仁義なき戦い」といったような、1960、70年代のプログラム・ピクチャー群とは一線を画する、新時代のヤクザ映画を目指した。「義理も人情もなければ兄弟愛もないし、男にすがって泣くような女もいない。映画のジャンルとしてはヤクザモノだけれど、過去のヤクザ映画に遡ることはしていないし、現代的に進化するべきだと思って撮ったのが『アウトレイジ』と『アウトレイジ ビヨンド』なんだ」。
その新しさは、ヤクザを演じる俳優陣にも大きな変化を与えている。劇中では怒号と銃声が鳴り響くのだが、三浦は「過去のヤクザ映画とは違って、登場人物が何も背負っていない。それぞれに女房、子供がいるのかどうかわからないし、背景が何もない。
前作で死んだとされた大友(北野)が実は生きていた。そして彼は、裏切り裏切られの関東VS関西の巨大な抗争とヤクザ壊滅を目論む警察組織の三つ巴に巻き込まれていく。そんな物語をつむぐ「アウトレイジ ビヨンド」は、前作に比べて笑いの要素もみられる。意図的に入れたものもあるが、ほとんどの場合が偶然の産物だった。「お笑いとは悪魔的で、一生懸命やっていても悪魔のように笑いが忍び込んでくるときがある。葬式なんか笑ってはいけないところで誰かがミスをして笑えてしまうようにね。映画でも、緊迫した場面のふとした瞬間に笑いが生まれることがある」。それを嫌う監督もいるが、北野監督は笑いをあえて活かすことで、キャラクターの性格や生き方、場面設定などに反映させた。現実世界にもあるような、噛み合わなさから生まれる笑いは、映画という虚構にリアリティを与えている。海外の上映でも観客が爆笑に包まれるシーンもあったそうだ。
前作同様、本作も「観客に向けたエンターテインメント作品」と北野監督は言い切る。それは一見、本来持っている作家性を封印したという意味にも取れるのだが「イタリアのシェフがカツ丼を作るようなもので、どちらにしても美味い。たまにはフレンチもやってみたいし、流し素麺を作りたいとも思う」と、題材において合った演出法を当てはめるのは当然のことという。だが北野監督の場合は、その両方がプロ級で極上の美味。そんなプロの現場に、2度目であっても三浦は戦々恐々だった。「監督が何を望んでいるかを言わないので、俳優陣にはそれを探っていく緊張感がある。達成感よりも、不安で終る」と寡黙な料理長に苦笑。しかし、その探った結果が正解だったのは言うまでもない。
そして気になるのが、「アウトレイジ」シリーズ完結後の北野監督の今後である。
映画「アウトレイジ ビヨンド」は10月6日公開