監禁・皮剥ぎ拷問映画「マーターズ」で一躍注目を浴びたフランス人映画監督のパスカル・ロジェが、約5年ぶりの新作映画「トールマン」を発表。ホラー映画のメッカとして知られるシアターN渋谷のクロージング作品として上映されることも決定した。
「マーターズ」を超える衝撃的な結末とは?ジェシカ・ビール主演「トールマン」予告編解禁
「日本の文化でメジャーなのは、やはり映画。フランスは歴史的にシネフィルが多い国で、日本映画を重要なポジションとして認識している人が多いですね」と教えてくれたパスカル監督自身、フランスで日活100周年を記念した特集上映に足を運ぶほどの邦画好き。海外の映画人が、好きな監督を黒澤明監督や溝口健二監督と挙げるとき、これは邦画をほとんど知らないと思って間違いないが、ロジェ監督は「一番好きなのは小林正樹監督の映画『怪談』。僕は1960、70年代がお気に入りで、日活ロマンポルノも傑作が多い」と筋金入りだ。
「その時代が素晴らしいのは、ビデオもDVDもなくて、映画はスクリーンでしか観ることができなかったこと。作品内容にも今の時代にはない、果敢な挑戦があります」と評する。それに比べて現在の邦画は「悲しいかな、ハリウッドに洗脳されて本来持っていた面白さのかけらもない。日本の街を歩いていても、目につくのはハリウッド映画のポスターばかり。僕としてはヨーロッパ発信、アジア発信の映画を今こそ作らねばと思うのです」と苦言を呈する。ちなみに「トールマン」は、キャストはハリウッド勢だが主要スタッフはヨーロッパ勢で固められている。ロジェ監督はここでもハリウッドに対して反旗を翻している。
映画の“果敢な挑戦”“無邪気さ”“強度”こそ、ロジェ監督の持ち味でもある。とある少女の復讐劇から監禁ホラーに転じ、いつしか宗教ホラーに様変わりという驚愕の展開をみせた前作「マーターズ」もそうだし、今回の「トールマン」も子供の失踪が相次ぐ寂れた町を舞台にした都市伝説的モンスターとヒロインの対峙かと思いきや、そう簡単にはいかない。ロジェ監督の映画は2本の作品を見せられたかのような満腹感を観客に味合わせる。映画が誕生して100年あまり。そんな中で新鮮な映画を生み出すのは至難の技だ。ロジェ監督は「現代の客は目が肥えているし、映画を観るにしても上から目線。映画監督としては本当にやりづらい状況です。
しかも戦っているジャンルはホラー。数あるジャンルの中でもファンの熱狂度はすさまじい。「ホラーファンというのは特殊で、ホラーのセオリーをやらないと納得しない人が多い。でも僕はそのお約束事をしないように心がけているので、作品を発表するたびに賛否両論です」と苦笑する。お約束をしない、という言葉はロジェ監督の映画監督としての立場も表している。一本ヒットを飛ばすと、ファンはもちろんのこと製作者たちから同じような作品を求められ、それに応える続編というお約束事がホラー業界には多々ある。ロジェ監督も「前作のおかげで、僕に初めてファンができました。しかもハードコア系映画を愛するファンです」とその人気を実感。だが「トールマン」では、ハードコア系から遠くかけ離れたサスペンス・ミステリーに挑戦した。
「映画監督として長いキャリアを築くためには、ファンが望まないであろう作品を選択するのも必要。だから今回の映画で『マーターズ』ファンは裏切られたような気になるでしょうね。
ハネケ監督といえば、カンヌ国際映画祭を連続で征した巨匠と知られるが「彼は観客を上から目線で見て、全然知的じゃないくせに頭がいいような顔をする。僕は40代で子供もいる。そんな器の小さいオッサンに教えなんか乞いたくもない」と怒り心頭。ハネケ監督はホラー映画を娯楽とする人種に対するアンチテーゼとして「ファニーゲーム」を撮ったが「あれはホラーファン全員を侮辱している作品。彼はホラー映画を毛嫌いして、ホラー好きを心底軽蔑している。でもホラーこそ、上手く作れば深い作品を生み出すことのできるジャンルです。それをあいつは知りもしないで上からモノを言うだけ。
日本公開を記念して来日したロジェ監督に、新作映画についてはもちろんのこと、お気に入りのジャパニーズカルチャーや人生で一番嫌いな映画について伺った。
「マーターズ」を超える衝撃的な結末とは?ジェシカ・ビール主演「トールマン」予告編解禁
「日本の文化でメジャーなのは、やはり映画。フランスは歴史的にシネフィルが多い国で、日本映画を重要なポジションとして認識している人が多いですね」と教えてくれたパスカル監督自身、フランスで日活100周年を記念した特集上映に足を運ぶほどの邦画好き。海外の映画人が、好きな監督を黒澤明監督や溝口健二監督と挙げるとき、これは邦画をほとんど知らないと思って間違いないが、ロジェ監督は「一番好きなのは小林正樹監督の映画『怪談』。僕は1960、70年代がお気に入りで、日活ロマンポルノも傑作が多い」と筋金入りだ。
「その時代が素晴らしいのは、ビデオもDVDもなくて、映画はスクリーンでしか観ることができなかったこと。作品内容にも今の時代にはない、果敢な挑戦があります」と評する。それに比べて現在の邦画は「悲しいかな、ハリウッドに洗脳されて本来持っていた面白さのかけらもない。日本の街を歩いていても、目につくのはハリウッド映画のポスターばかり。僕としてはヨーロッパ発信、アジア発信の映画を今こそ作らねばと思うのです」と苦言を呈する。ちなみに「トールマン」は、キャストはハリウッド勢だが主要スタッフはヨーロッパ勢で固められている。ロジェ監督はここでもハリウッドに対して反旗を翻している。
現在の日本人監督で好きなのは、北野武。だが「好きと言っても映画『ソナチネ』『HANA-BI』のような初期作品。日本で大ヒットした『アウトレイジ』は好きではありません。初期の作品にあった北野監督の映画に対する無邪気さがなくなって、考えすぎて作っている気がしますね。そのせいで映画としての強度はなくなりました」と愛するがゆえに、容赦ない。
映画の“果敢な挑戦”“無邪気さ”“強度”こそ、ロジェ監督の持ち味でもある。とある少女の復讐劇から監禁ホラーに転じ、いつしか宗教ホラーに様変わりという驚愕の展開をみせた前作「マーターズ」もそうだし、今回の「トールマン」も子供の失踪が相次ぐ寂れた町を舞台にした都市伝説的モンスターとヒロインの対峙かと思いきや、そう簡単にはいかない。ロジェ監督の映画は2本の作品を見せられたかのような満腹感を観客に味合わせる。映画が誕生して100年あまり。そんな中で新鮮な映画を生み出すのは至難の技だ。ロジェ監督は「現代の客は目が肥えているし、映画を観るにしても上から目線。映画監督としては本当にやりづらい状況です。
映画を作ることは観客との戦争だと思っているので、僕はそんな彼らの予想を遥かに上回る展開を作ることに心を砕き、観客を無邪気な状態に戻すことを心がけています」と明かす。
しかも戦っているジャンルはホラー。数あるジャンルの中でもファンの熱狂度はすさまじい。「ホラーファンというのは特殊で、ホラーのセオリーをやらないと納得しない人が多い。でも僕はそのお約束事をしないように心がけているので、作品を発表するたびに賛否両論です」と苦笑する。お約束をしない、という言葉はロジェ監督の映画監督としての立場も表している。一本ヒットを飛ばすと、ファンはもちろんのこと製作者たちから同じような作品を求められ、それに応える続編というお約束事がホラー業界には多々ある。ロジェ監督も「前作のおかげで、僕に初めてファンができました。しかもハードコア系映画を愛するファンです」とその人気を実感。だが「トールマン」では、ハードコア系から遠くかけ離れたサスペンス・ミステリーに挑戦した。
「映画監督として長いキャリアを築くためには、ファンが望まないであろう作品を選択するのも必要。だから今回の映画で『マーターズ』ファンは裏切られたような気になるでしょうね。
前作の作風から離れたのには、僕の本質を理解してくれる本当のファンと一過性のファンとを振り分ける意図がありました。それに、いつか映画監督としての自分の仕事を振り返ったときに、『マーターズ2』『マーターズ3』などの似た作品ばかりでは僕自身納得しないと思うんです」とお約束破りの理由を説明する。映画監督として確固たる信念を持つ、ロジェ監督。自身が影響を受けたホラー映画については、さまざまな場所で映画「サスペリア2」「エクソシスト」「レイザーバック」と語っている。それでは一番嫌いな作品は?と聞くと、考える間もなく「ミヒャエル・ハネケ監督の映画『ファニーゲーム』です」と即答する。
ハネケ監督といえば、カンヌ国際映画祭を連続で征した巨匠と知られるが「彼は観客を上から目線で見て、全然知的じゃないくせに頭がいいような顔をする。僕は40代で子供もいる。そんな器の小さいオッサンに教えなんか乞いたくもない」と怒り心頭。ハネケ監督はホラー映画を娯楽とする人種に対するアンチテーゼとして「ファニーゲーム」を撮ったが「あれはホラーファン全員を侮辱している作品。彼はホラー映画を毛嫌いして、ホラー好きを心底軽蔑している。でもホラーこそ、上手く作れば深い作品を生み出すことのできるジャンルです。それをあいつは知りもしないで上からモノを言うだけ。
心底嫌なヤツだと思いますね」と徹底的に批判する。あやふやにせず、敵は敵と言い切るロジェ監督のそんな姿勢から、彼の作品がなぜ面白いのか理解できた。映画「トールマン」は11月3日よりシアターN渋谷ほかにて公開。
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