11月15日、とある前人未踏の記録が樹立され、ギネスブックの認定を受けた。四足歩行による100メートル走、17秒47。
その男・いとうけんいちは人類の歴史を逆行するようにこの競技を発案および挑戦し、海外メディアからも熱い視線を注がれている。なぜ四足歩行なのか? そして今後の展望は? さらに意外な超大物との遭遇までを、“四足最速の人類”いとうさんに聞いてみた。

日本人が四足歩行100メートルで世界最速記録!ギネスに認定

――まず四足歩行を始めたそもそものきっかけから教えてください。
いとう:お猿さんが大好きでよく動物園へ行くんですけど、そこでパタスモンキーというお猿さんに出会って、パタスモンキーはお猿さんの中でも時速55キロまで出る、最速の四足歩行なんです。そのお猿さんを見て「ちょっと走ってみよう」と思って、実際にやってみたのがきっかけです。9年前になります。

――さぞ周囲から奇異な目で見られたのでは……。
いとう:前は外でも四足歩行で歩いていたんですけど、よく通報されるので(苦笑)、最近はやめて外では二足歩行で歩いています。僕は小さい頃からナインティナインの岡村さんがすごく好きで、岡村さんの影響で13歳からブレイクダンスをやっていたんです。ブレイクダンスって地面に手を着く動きが多いので、それで四足歩行を始めた時も違和感がありませんでした。

――いとうさんの四足走行はやはり何かの動物がモチーフになっているんですか?
いとう:四足歩行で走る動物は全体的に研究して、一番速いのはチーターなんですけど、でもチーターが速いからチーターを真似て走れば速く走れる訳ではなくて、いろんな四足歩行の動物を研究して、人類型の四足歩行を作って練習をしています。

――人間には人間にあった四足歩行の形があると。

いとう:骨格もチーターまでいくとだいぶ離れちゃうんです。後ろ足の地面の着き方も違いがあって、爪先立ちで走る馬なんかに比べると、人間とお猿さんはベタ足で着いたり、足の着き方、骨格にも共通するものがありました。なので人類に適した四足歩行を研究する上で、お猿さんは大きかったです。――現在の記録は17秒47ですが、これはどのくらいまで伸ばせそうですか?
いとう:人間は四足から二足に進化したって言われてますけど、それは前足を使ったりする進化で、速さを求めての進化ではないので、やっぱりトルクなりピッチなり完全に四足の方が優れてますし、速さを追求するには四足だと思うんです。でも四足歩行の歴史って僕の9年しかないので、もっと競技や研究が進めば、ウサイン・ボルトの記録(9秒58)も全然破れると思います。ただ、僕の世代ではそういう可能性を見せられるタイムが出せればいいかなと思っています。

――今後の展望について教えてください。
いとう:後々は四足歩行教室みたいのを開いたりしたいです。2013年でちょうど10周年を迎えるので、やってる人を集めて競技会みたいな感じにしようかなとも思っています。四足歩行の可能性を今後もどんどん探っていきたいですし、マラソンだったり長さの追求もしていきたいです。

――なんでも「スパイダーマン」や「アベンジャーズ」の原作者であるスタン・リーさんも、いとうさんに注目されているそうですね。
いとう:アメリカで僕の記録を扱ってもらった時にたまたまスタン・リーさんがその番組を見てくれていて、スタン・リーさんはこれまでいろんな超人を描いてきて、リアルな超人もお好きらしいんです。
それでご自身がやってる番組に呼んでもらって、いろいろリサーチしてもらったりしました。

――では、もしかしたら「スパイダーマン」の新作に出演なんて可能性も?
いとう:ぜひ出たいんですけど、さすがにそこまではやってくれませんでした(笑)。

――さらなるご活躍でそちらの可能性も期待しています(笑)。では最後に、これから四足歩行をやってみようという方にぜひアドバイスをお願いします。
いとう:人間は前足に比べて後ろ足の方が3倍から7倍力が強いんです。なので、前足で体全体を引っ張るイメージで走ると速く走れます。あと四足歩行はすごいエクササイズ効果があって、チンパンジーを使った二足歩行と四足歩行を比べた実験では、四足で走った方が四倍体力を使っていたんです。ということは、家の中で少しぐるぐる回るだけでも結構なエクササイズになると思うのでオススメです。僕もそんなに筋トレとかをしてる訳ではないですが、四足歩行だけで健康な体を保てています。(取材・文・写真:しべ超二)
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