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劇画作家として20年前に書き下ろした短編漫画「無口なあなた」を原作に、等身大の美女フィギュアを偶然手に入れたオタク青年(柄本佑)の、現実とも妄想ともわからぬ世界を舞台に、愛と死を描いた異色のエロチックファンタジーだ。
「フィギュアを演じられる人って限定されると思うので、戸惑いもありつつ嬉しかったですね。しかも自分の名前を役名に使っていただいて」と起用に笑顔を覗かせる佐々木。元々は舞台女優だっただけに、映画出演は念願の夢だった。しかし演じるのは魂の宿らぬ物体。どう表現すればいいのか? 悩んだ佐々木が向かったのは、オタクのメッカ・秋葉原。「フィギュアという文字が書いてあるお店をまわって、そこに飾られているフィギュアを見ながら役作りをしていきました」と本物から雰囲気を掴んでいった。心がけたのは「関節が緩やかではないところ」で「真っ直ぐのときは不自然にピキッとして、人間にはない変な動きができてしまうという部分を意識しました」とこだわりを語る。歩くシーンの撮影では『ロボットに見える』『人間っぽい』と石井監督からNGが出たが、佐々木はすぐにフィギュアらしいウォーキングを披露し、石井監督を唸らせた。 劇中の佐々木は、フィギュアを演じているというよりも、フィギュアに同化していると表した方が正しい。
フィギュアに成り切る難題をクリアした一方で、オール・ヘア・ヌードという壁もあった。だが佐々木は「元々必然性さえあれば脱ぐことに抵抗はなくて、映画で脱げるならば是非という気持ちでした。撮影は去年の8月の暑い時期に行なわれたので、むしろ私だけが涼しい格好で、申し訳ないと思ったくらいです」と至ってクール。ただ主演の柄本から局部をまじまじと検分される場面は「恥ずかしい思いと、そこまで客観的に見られているという事実がおかしかった。新たな心境に達しましたね」と頬を赤らめる。ぼかし処理は施されているが、カメラは執拗に佐々木の局部を映し出す。
石井監督が求める究極の女性像を、持ち前の明るさとタフさでスクリーンに咲かせた佐々木。その存在は石井監督の奔放なイマジネーションを刺激したに違いない。彼女の存在なくして、本作の高い完成度はありえなかっただろう。母親でミュージシャンの佐々木裕子に本作出演を「勝負をかけなければいけない」と伝えたほどの意気込みだったと振り返る佐々木は「一生忘れることができないであろう『フィギュアなあなた』を自分の中の原点として、これからも脱ぐことを拒まず、女優業を続けていきたい」と力強く飛躍を誓った。
映画『フィギュアなあなた』は6月15日より全国公開
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