“実話の映画化”と聞いて、まず思い浮かぶのが、泣ける感動の実話。だが、映画製作者にとって、犯罪や事件を扱った実話も、じつに魅力的なネタである。
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まずは、人間の死体でランプシェイドやブレスレットを作った1957年の猟奇殺人をモデルにした『悪魔のいけにえ』(のちに『テキサス・チェーンソー』としてリメイクされる)。そのラストから始まる正式な続編『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』が7月13日よりに日本公開される。本シリーズの殺人鬼は人の皮を被ったレザーフェイス。とはいえ、本当の事件の犯人であるエド・ゲインは、ヒッチコック監督の『サイコ』のモデルとなったように、決してレザーフェイスのような巨漢ではない。
続いて、1976年、悪魔祓いをされたドイツ人少女が死亡したことで、裁判に発展した事件がモデルの『エミリー・ローズ』。本作で悪魔に憑かれたと判断された少女役のジェニファー・カーペンターの体を張った怪演が観客のド肝を抜いたように、「怖い実話」は「感動の実話」よりもある意味、俳優としてのチャンスの場かもしれない。現に1989年から1年間で、7人の男性を殺害した元娼婦を『モンスター』で演じたシャーリーズ・セロンは、オスカーで主演女優賞を受賞。1920年代後半に起こった連続少年誘拐殺人事件に巻き込まれた母親を『チェンジリング』で演じたアンジェリーナ・ジョリーもオスカー候補となり、アクション女優のイメージを拭い去ることに成功した。また、1985年にマカオで起こった食堂店主一家バラバラ事件がモデルの『八仙飯店之人肉饅頭』で、猟奇的な殺人鬼役を演じたアンソニー・ウォンも、香港アカデミー賞で主演男優賞を受賞している。
最後に、作家性が色濃い作品といえば、ガス・ヴァン・サント監督の『エレファント』。1999年に起こった「コロンバイン高校銃乱射事件」をテーマにしながら、劇中にベートーヴェンの「ピアノソナタ第14番」「エリーゼのために」を流し、若者が抱える不安や苛立ちを強調したことで、せつない青春映画に仕上げている。
このように一言で「怖い実話の映画化」と言っても、リアルさを強調した作品から俳優の演技が際立つ作品、作家性が色濃い作品など、じつにさまざま。寝苦しい夏に、背筋がゾゾッとするような一作を探してはいかがだろうか?(文:くれい響)
04年、オークションサイトに出品された“呪いのアイテム”がネタの『ポゼッション』(公開中)や、同じ04年に起こったストリップ検査悪戯詐欺を描いた『コンプライアンス-服従の心理-』(6月29日公開)。そして、05年に死刑囚が告発した殺人事件の真相をジャーナリストが暴いた『凶悪』(9月21日公開)など、初夏から秋にかけても、新作が続けて公開される「本当にあった怖い実話」。ここでは古今東西の名作を紹介しながら、その魅力について語りたい。
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まずは、人間の死体でランプシェイドやブレスレットを作った1957年の猟奇殺人をモデルにした『悪魔のいけにえ』(のちに『テキサス・チェーンソー』としてリメイクされる)。そのラストから始まる正式な続編『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』が7月13日よりに日本公開される。本シリーズの殺人鬼は人の皮を被ったレザーフェイス。とはいえ、本当の事件の犯人であるエド・ゲインは、ヒッチコック監督の『サイコ』のモデルとなったように、決してレザーフェイスのような巨漢ではない。
続いて、1976年、悪魔祓いをされたドイツ人少女が死亡したことで、裁判に発展した事件がモデルの『エミリー・ローズ』。本作で悪魔に憑かれたと判断された少女役のジェニファー・カーペンターの体を張った怪演が観客のド肝を抜いたように、「怖い実話」は「感動の実話」よりもある意味、俳優としてのチャンスの場かもしれない。現に1989年から1年間で、7人の男性を殺害した元娼婦を『モンスター』で演じたシャーリーズ・セロンは、オスカーで主演女優賞を受賞。1920年代後半に起こった連続少年誘拐殺人事件に巻き込まれた母親を『チェンジリング』で演じたアンジェリーナ・ジョリーもオスカー候補となり、アクション女優のイメージを拭い去ることに成功した。また、1985年にマカオで起こった食堂店主一家バラバラ事件がモデルの『八仙飯店之人肉饅頭』で、猟奇的な殺人鬼役を演じたアンソニー・ウォンも、香港アカデミー賞で主演男優賞を受賞している。
そして、1986年から5年間、10人の女性が殺害され、韓国史上初の連続殺人「華城連続殺人事件」をモデルにした『殺人の追憶』。1968年から6年間、5人を殺害し、“ゾディアック(星座)”を名乗り、警察やマスコミに向けて声明文を送った犯人をモデルにした『ゾディアック』など、未解決事件を扱うことも、このジャンルの魅力といえるだろう。映像化することで、不気味さが増すだけでなく、製作者による独自の論点も描かれる。現にこの2作を手掛けた監督はポン・ジュノとデヴィッド・フィンチャーであり、どちらも作家性が色濃く出ている作品に仕上がっている。
最後に、作家性が色濃い作品といえば、ガス・ヴァン・サント監督の『エレファント』。1999年に起こった「コロンバイン高校銃乱射事件」をテーマにしながら、劇中にベートーヴェンの「ピアノソナタ第14番」「エリーゼのために」を流し、若者が抱える不安や苛立ちを強調したことで、せつない青春映画に仕上げている。
このように一言で「怖い実話の映画化」と言っても、リアルさを強調した作品から俳優の演技が際立つ作品、作家性が色濃い作品など、じつにさまざま。寝苦しい夏に、背筋がゾゾッとするような一作を探してはいかがだろうか?(文:くれい響)
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