竹内結子が、過去に暴行されたトラウマと闘いながら難事件の捜査を進める女性刑事・姫川玲子を演じる人気シリーズ『ストロベリーナイト』。スペシャルドラマ、連ドラに続いて今年1月に公開された映画は、今年上半期の実写邦画の興行収入で第2位にランキングされる大ヒットを記録した。
7月17日にブルーレイ&DVDリリースされた映画版を手掛けた佐藤祐市監督が『ストロベリーナイト』と歩んだ日々を振り返った。

【関連】映画『ストロベリーナイト』完成披露試写会の様子

 2010年11月に2時間ドラマとして放送されたパイロット版を皮切りに、2012年1月クールの連続ドラマ、映画公開に合わせたスペシャルドラマ『アフター・ザ・インビジブルレイン』と深夜枠のミニシリーズ『ストロベリー・ミッドナイト』。どんどん広がる『ストロベリーナイト』ワールドで、連続ドラマ全11話内の4話を除く全作品の演出を手掛けたのが佐藤監督。「『ストロベリーナイト』を喋り尽くした、しゃぶり尽くした人間。そんな感じです」と笑顔で語る。

 映画化が正式決定したのは、高視聴率をキープした連続ドラマの放送中。「まずスペシャルドラマをやって、出来れば連ドラになればいいね、それがうまくいったら映画までいきたいねという話は、最初からキャスト・スタッフ共々話しながら進めていました」。映画の原作は、誉田哲也によるシリーズの中から「インビジブルレイン」が選ばれた。姫川同様に悲しい過去を持つ登場人物たちの苦しみや、警察組織内部のスキャンダル隠蔽、キャリア組とノンキャリア組の葛藤などが複雑に絡み合い、作品にドラマ以上の厚みをもたらしている。

 芸達者な出演者たちが揃った中でも、相変わらず圧倒的な存在感で観客を魅了しているのが竹内結子だ。彼女の女優人生の中でも、間違いなく代表作のひとつになったといえるだろう。「3年近く、結子さんが演じる姫川玲子のことを考えて生きてきました。
それほど姫川を大切にしてきましたが、竹内さんにやっていただいて本当に良かったと思います。姫川の生き様が本当に切なくて、なぜそれまでして事件に立ち向かって走らなければいけないのだろうと思うのですが、そうしないと倒れそうだからきっと姫川は走り続けている。そんな彼女を見ていると、泣けてきましたね。今では、姫川玲子といえば竹内結子さん以外考えられないとおっしゃっていただいていますが、嬉しい半面、この先、姫川役以上の新しい自分を見せていかないといけない竹内さんはすごく大変だなと思います」と、佐藤監督も手放しで絶賛する。 そんな姫川に密かに思いを寄せるのが、常に側にいてさり気なく彼女をガードする部下の菊田和男。西島秀俊は、原作より大幅に膨らませた菊田役を見事に演じきった。「西島さんとは、『ストロベリーナイト』で初めてご一緒しましたが、非常にバランスの良いキャスティングになったと思います。こんな言い方をしたら失礼かもしれませんが、西島さんは可愛らしいというか(笑)、お芝居に対してまっすぐに立ち向かっていく人ですね。西島さんの言葉で、『芝居をやる方法が2通りあったとします。ひとつは間違いがないけれどどこかで見たことがある、もうひとつは新しいけれど間違えるとヤバイことになってしまう。どちらでやるかと聞かれたら、必ず後者を選びます。僕は常にリスクがある方を選ぶ役者ですから(笑)』と、半分本気・半分冗談でおっしゃっていたのがすごく印象的でした」。
こちらも評価が高い。

 この2人の微妙な関係に亀裂を生みかねない存在が、映画で初登場した大沢たかおが演じる若き暴力団幹部・牧田勲だ。姫川同様に強烈なトラウマを抱える牧田は、ヤクザと警察官という関係を超えて姫川の中に入り込んでいく。「大沢さんとも初めてでしたが、仕事への取り組み方がものすごく紳士的で素敵な方でした。現場というのは必ずしも予定通りになるわけではないですが、そういうところもしっかり自分の役に受け入れていくというスタンスでやっていらっしゃる。しっかり話しあい、キャッチボールをしながら進めることができました。連続ドラマから続けてきたチームに、映画から新参者として入ってくるのはやり辛いと思いますが、比較的早い段階で馴染んでくださいました」と、大沢のプロ意識にも改めて脱帽といったところ。

 この素晴らしい3人の役者のケミストリーが、『ストロベリーナイト』シリーズの最後にふさわしい傑作を生み出した大きな理由といえるだろう。

 ファンにとっては、また姫川が活躍する姿もぜひ見てみたいところだが、「正直、今の僕の中では、けっこうやりきった感があります。映画の公開から半年近くたって振り返ってみると、過去に闇を抱えた姫川玲子という女性刑事をかなり描くことが出来たので、この世界を更に掘り下げて新しく撮りたいとは思っていないですね。僕は今までコメディっぽい作品をやってきましたが、『ストロベリーナイト』でちょっと違う毛色のハードなものを撮ることが出来ました。僕自身もすごく楽しめたし、3年近く同じ作品に携わってキャラクターを育てることが出来たのは幸せだったし、それだけ掘り下げられたなとも思うし。
もし続編を撮れと言われたら、ファンの方々の期待が大きいぶん、ものすごいプレッシャーになるだろうし、苦労をすると思います」と、卒業宣言。改めて、人気シリーズを撮り終えた苦労と喜びを噛み締めているようだった。(取材・文・写真:平井景)

 映画『ストロベリーナイト』ブルーレイ&DVDは発売中。
編集部おすすめ