次のアニメ化を待つタイトルとして、ヒット漫画としては異色の経歴(?)を持つWEB漫画『ワンパンマン』を取り上げよう。
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『ワンパンマン』は、作者のONE氏が個人サイトで公開していた漫画から口コミで人気が広がり、現在は集英社のWEBコミックサイト「となりのヤングジャンプ」にて連載が行われている、ちょっと珍しい作品だ。
本作には、ONE氏が個人サイトで連載を続けている“原作版”と、「となりのヤングジャンプ」に連載中の“リファイン版”(この名称は区分けのために筆者が勝手に付けた物なのであしからず)が存在し、後者は作画担当として『アイシールド21』等でお馴染みの村田雄介氏を起用している。
まずは、簡単に作品の概要を紹介しよう。『ワンパンマン』は、趣味でヒーロー活動をしている主人公「サイタマ」の活躍を描く、ヒーロー漫画だ。しかし、そのストーリーは、普通に想像できるヒーローものとはかなり異なっている。
いわゆる“ヒーローもの”では、主人公たちがストーリーの中で様々な苦労を乗り越え、最後に強大なボスを粉砕する、という流れが描かれる事が多い。しかし本作では、だいたい1~2話に1人(1組織)のペースで敵が登場しては粉砕されていく。サイタマがあまりに強すぎるため、どんな敵もワンパンチで粉砕消滅してしまうのだ。
地球の抗体プログラムやら、宇宙を股にかける海賊やら、トンでもない肩書を持った連中が次々と襲来しては、超サイヤ人もビックリのワンパンチで粉砕! そして当のサイタマは、「またワンパンで終ってしまった……」と釈然としない顔でボロアパートにトボトボと帰宅……。実にシュールな流れだが、基本的にそんな具合でお話が進むことになる。
サイタマは常に最強であり、第92話までが更新されている原作版においても、その基本的な構造は変わっていない。「じゃあ何を楽しむのか」というと、それは「悪役」と「サイタマ以外のヒーロー」が作り上げるストーリーだ。 悪役もヒーローも、何らかの意思や目的を持って作中に登場する。強力な敵にも、あまり強くないヒーローにも、その内に様々なドラマを秘めているのだ。精神的にも肉体的にも最強のサイタマがすべてを吹き飛ばして解決! という結末にこそ変化は無いが、そこに至るまでのストーリーこそが本作の大要なのである。ちょっとひねくれた楽しみ方かもしれないが、それも含めて『ワンパンマン』の面白さなのだ。
作品そのものの良さに加え、ストーリーの区切り(悪役がワンパンされるまで)が分かりやすく、原作最新話では長編ストーリーも展開されているなど、アニメ化への適性も十二分と言える。村田雄介氏によるリファイン版の超絶アクションシーンがアニメで再現されたとあれば、その見栄えは素晴らしいものとなるハズ。なってほしい。
原作版は現在でも全話がサイト上で公開されており、リファイン版は最新話と導入部分のみを無料で読むことができる。1話毎の区切りも短く、サクッと読めるのも良い所だ。興味がある人は、とりあえず空いた時間にでも無料分を読んでみると良いだろう。