再生回数が、100万回を突破した超人気アニメーション『京騒戯画(キョウソウギガ)』。本作は、バンプレストと東映アニメーションが初のコラボレーションを果たした新プロジェクトである。
そんな一大プロジェクトとなる本作を手掛けたのは、まだ20代の若き女性監督・松本理恵。

 今回、その松本監督に単独インタビューする機会を得ることでき、本作に込めた思いや細田守監督に憧れて、この業界に入ったという自身のことについて話を聞いた。

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 『京騒戯画』は、人間と寺、そして妖怪の3つの勢力がせめぎあう「鏡都」を舞台に、この街に迷い込んだ主人公コトを中心に繰り広げられるアクションファンタジー。

 本作を一言で表すと「…愛と勇気…なんてね(笑)」とお茶目に語ってくれた松本監督。若干25歳で東映の人気アニメ『映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』の監督に抜擢され、今回の初コラボプロジェクトとなるアニメーションの監督を任された。インタビュー前は、いったいどんな雰囲気を持った女性なのだろうと想像をしてみたが、いざ本人を前にすると、明るい髪色をした小柄な可愛らしい女性であった。

 「とにかく“やれることをやろう!”と思った」と制作を依頼された当時を振り返る。『京騒戯画』は、5分のアニメーションから始まり、次に30分のアニメ―ション、その後トータルで40分ほどの5本の短編、そして今回の連続TVアニメと徐々にスケールアップ。そのため、当初の5分の映像制作時は「武器を持った女の子を主人公にしてほしいとだけ依頼されて、あとは何も決まってなかったんです」とのこと。だが、逆に主人公以外何も決まっていなかったからこそ「プリキュアシリーズで自分がやらなかったことをやろう」と思ったという。

 「それはなにかというと“世界崩壊”とかなんですよね。なので、終末論をやりたいなと思ったんです」。
確かにプリキュアで“世界崩壊”という言葉が出てきたらビックリである。「5分の映像制作の時に、“理想の終末論を絵にしよう”という思いがあったので、それを書くということが(目的の)ひとつでした」。

 「テーマというよりは、本当に絵の方を…イメージ先行と言いますか、“この絵を描きたい! 作りたい!”を大切にしよう」という松本監督の思いが形になった本作。終末論以外にも「自分の中にある知識で、まだ外に出していないものをやりたいなと」。本作の世界観を構築するもののひとつである妖怪や京都にありそうな古い寺院などは、松本監督自身が好きなものであるという。「妖怪以外にも民俗学なども好きなので、自分の中にあったものをもったいぶらずに出そうと思って作っていましたね」。 『京騒戯画』の世界観を語るうえで忘れてはならないのが、その色使いである。全体を通して、ビビットなカラーが彩るビジュアルはかなりのインパクトを残す。「色彩設定の方に、“このキャラクターはこの色合いで”という話をしつつ作りました」と話す。だが、色使いにも松本監督のこだわりが散りばめられているという。「妖怪はビビットな感じにしてほしいとお願いしました。人間は少しぼやけさせて、人間じゃない、妖怪の方をはっきりした色にしてほしいと」。
この色使いが、見る者を『京騒戯画』の独特の世界観へと誘う。「ごちゃまぜな感じが好きなんです。“楽しければいいんじゃない?”みたいなイメージがあって…。きちっとストーリーがある作品だと、そういうてんでばらばらなイメージを全部ぶち込むってなかなかやりずらいですよね。ごちゃまぜのおもちゃ箱のような世界観の作品を作りたかったんです」。

 釘宮理恵鈴村健一石田彰喜多村英梨斎藤千和と、本作はとても豪華な声優陣が顔を揃える。この豪華さは、WEBアニメーションの頃から話題となっていた。「2本目の30分版を作るときに、声をあてるという話になり、どうする? と相談されたので、“ちょっと考えます”…と」。声優陣は、松本監督自らキャスティングしたことを明かした。「選んだときは、豪華だなとか思っていなくて、純粋にこの人の声がいいなと思って選んだんです。なので、どのキャラも凄くはまっているのではないでしょうか。“この時だけだから!”ってことで声優さんを集めてもらったんですけど…」と話す。


 若くして監督に抜擢され、才覚を発揮する松本監督。最後にその松本監督がこの業界を目指したきっかけを聞いた。

 「友人に『デジモン』を薦められて見たのがきっかけ」と語る。「初めは『ポケモン』と似てるやつでしょくらいに思っていたのですが、見たら面白い! すごく驚きましたね。細田(守)さんが監督した『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』だったのですが、“アニメってこんなこともしていいんだ”と思って、ある意味ショックを受けました。」と当時かなりの衝撃だったことを熱く語る。「それまで目指していたものとかもあったのですが、どうしてもアニメをやりたいと思いましたね。」とにっこり。細田監督も若くして、その才能を発揮し、今やアニメ業界をけん引するアニメ監督の1人。松本監督もいずれその枠に仲間入りすることは間違いないだろう。(取材・文:鈴木沙織)

 『京騒戯画』は、TOKYO MXにて毎週水曜日25時30分より放送中、BS朝日にて毎週金曜日 25時30分より放送中。ブルーレイ&DVDは、12月6日より順次リリース。
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