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本作は、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」にて2011年春期に放送されたTVアニメ『あの花』のその後を描いた、劇場アニメ化作品である。“アニメ町おこし”のモデルケースとして語られる事も多く、アニメファンでなくとも、そのタイトルを耳にした事があるだろう。
公開8週目・56日目となる10月25日(金)に興収10億円を突破した『劇場版 あの花』。“深夜枠のテレビアニメ”の劇場版としては2010年公開の『涼宮ハルヒ』シリーズの映画化『涼宮ハルヒの消失』を抜き、最終興収19億を記録した『映画 けいおん!』に次ぐ堂々の第2位という快挙を達成した。
劇場版に限らない話ではあるが『あの花』のもっとも大きな特徴は、作品を支持するファン年齢層の広さ。そして人気の継続性にある。
アニメ映画作品に力を入れる東京の上映館「新宿バルト9」のアシスタント・マネージャーである岡崎氏は、『劇場版 あの花』の来場者層について、こう語ってくれた。
「来場者さんは若年層が中心ですが、それでも10代~30代の広い年齢層の方が『あの花』を楽しまれているようです。学生さんはもちろん、スーツを着た会社員の方など、いわゆるアニメファンでない一般層のお客さんも多く来場されている印象があります。また、男女比は6:4程度で男性が多めですが、昨今のアニメ映画作品としては偏りが少ない数字だと言えるでしょう」。
さらに同氏は、グッズの販売状況などについても「当館における『あの花』グッズは、ほぼ初日で完売してしまいました。しばらくは、追加手配をする度に即完売という状況が続いていたほどの盛況ぶりでした」と話している。 一般層の流入によって、アニメ映画特有の「興行収入に対して、グッズの売上が大きい」という現象が消えるのかと思えば、そんな素振りすら無いようだ。独特な魅力を持つ『あの花』は、本来は“一般層”として作品に興味を持った人間の多くを“アニメファン”に変貌させているのかもしれない。
90年代後半から00年台前半ごろにかけてのアニメシーンは、多くの場で「今のアニメは10年~20年の単位で愛される作品がない」という語られ方をしてきた。実際、その時代に放送されたアニメ作品で、商業が成立する規模で人気を維持している作品はごく少数だ。
一般層を取り込んだ『あの花』は、アニメファンが待望した「10年単位で愛されるアニメ」となるのか。今後の経過に注目したい。(取材・文:蒼之スギウラ)