2004年、映画『誰も知らない』で鮮烈なスクリーンデビューを飾った柳楽優弥。作品はカンヌ国際映画祭に出品され、当時14歳、史上最年少で最優秀男優賞を受賞した。
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「デートレイプ」=知人や友人、または恋人関係にある間柄の男女間で、相手の合意を得ず、強引に性交をすること。「この作品に出演するまでデートレイプという言葉自体は知りませんでしたが、意味を知って、実際にはありえることなのかなって……」と最初にこのワードを聞いた時の印象を語った柳楽。本作では、吉倉あおい演じるはつ実と隆太郎は、互いに好意を持ちながらも、ある出来事がきっかけで、加害者と被害者という立場に変化していってしまう。「10代独特の脆さというか、感情なのかもしれません。大人の行為だったら単に『絶対許せない』になると思うんですけどね」。
隆太郎が犯した行為は、決して許されることではない。しかし勧善懲悪では推し量れない感情が本作には存在する。その部分こそが物語のテーマでもあるため、隆太郎に対する柳楽の思いも揺れ動く。
本作の撮影は2012年の夏に行なわれた。ちょうど蜷川幸雄演出の舞台『海辺のカフカ』が終わったばかりの時だと言う。「僕にとって初めての舞台だったので、エネルギーが体内に充満しているようなテンションのまま映画の現場に入ったんです。だから最初は、目の前に何千人もいるぐらいのトーンでセリフをしゃべるので、金井(純一)監督は大変だったと思います。そんな僕にも監督はとても優しく、きちんと話をしてくれるので、信頼して演じました」。その後、9月に公開された映画『許されざる者』の撮影がクランクインし、柳楽は、渡辺謙、柄本明、佐藤浩市といった日本を代表する名優たちと共演する。「あの現場は半端じゃなかったです。謙さんや柄本さんの雰囲気やオーラはすごく、怖いぐらいでした。また、この作品も舞台のテンションを引きずっていた部分があって、李相日監督からは『舞台と映画の芝居の違いが分からないのか!』ってよく怒られました(笑)。
アイヌ出身の無骨な五郎を演じた映画『許されざる者』。その役作りのために体重を増やしていた時、本作の撮影がクランクインしたという。
映画『ゆるせない、逢いたい』は11月16日より全国公開
あれから9年-。今年は『爆心、長崎の空』『許されざる者』そして本作『ゆるせない、逢いたい』と趣の違う出演映画が立て続けに公開。ファンにとっては作品ごとに違う顔を見せる俳優・柳楽優弥を思う存分堪能できる「至福の秋」を迎えた。「デートレイプ」という衝撃的なテーマを内在した本作で、加害者となる青年・隆太郎を演じた柳楽が、撮影エピソードや今後の目標などを語った。
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「デートレイプ」=知人や友人、または恋人関係にある間柄の男女間で、相手の合意を得ず、強引に性交をすること。「この作品に出演するまでデートレイプという言葉自体は知りませんでしたが、意味を知って、実際にはありえることなのかなって……」と最初にこのワードを聞いた時の印象を語った柳楽。本作では、吉倉あおい演じるはつ実と隆太郎は、互いに好意を持ちながらも、ある出来事がきっかけで、加害者と被害者という立場に変化していってしまう。「10代独特の脆さというか、感情なのかもしれません。大人の行為だったら単に『絶対許せない』になると思うんですけどね」。
隆太郎が犯した行為は、決して許されることではない。しかし勧善懲悪では推し量れない感情が本作には存在する。その部分こそが物語のテーマでもあるため、隆太郎に対する柳楽の思いも揺れ動く。
「僕自身はこの作品で隆太郎という役柄を演じているので、彼の味方でなくてはいけないと思うんです。理解したい、許したいという気持にもなります」。劇中には被害者の父親は他界しているため登場しないが「もし物語に父親が登場していたら、また違う趣の作品になっていたかもしれません」と付け加えた。
本作の撮影は2012年の夏に行なわれた。ちょうど蜷川幸雄演出の舞台『海辺のカフカ』が終わったばかりの時だと言う。「僕にとって初めての舞台だったので、エネルギーが体内に充満しているようなテンションのまま映画の現場に入ったんです。だから最初は、目の前に何千人もいるぐらいのトーンでセリフをしゃべるので、金井(純一)監督は大変だったと思います。そんな僕にも監督はとても優しく、きちんと話をしてくれるので、信頼して演じました」。その後、9月に公開された映画『許されざる者』の撮影がクランクインし、柳楽は、渡辺謙、柄本明、佐藤浩市といった日本を代表する名優たちと共演する。「あの現場は半端じゃなかったです。謙さんや柄本さんの雰囲気やオーラはすごく、怖いぐらいでした。また、この作品も舞台のテンションを引きずっていた部分があって、李相日監督からは『舞台と映画の芝居の違いが分からないのか!』ってよく怒られました(笑)。
でもそんなことも全部自分の財産になっています」。 多くの作品によって得られた経験を存分に発揮する場は開かれている。「舞台もそうですが、最近は今まで経験したことないような役柄にめぐり合えている気がします。特に『許されざる者』のようにオーディションで役を得られるのは、映画に真っ直ぐ向かっていけるようで嬉しい」。そして「機会があれば銀幕で侍を演じてみたい。時代劇の所作とか、きちんと極めた上で芝居を出来るような俳優になりたいです」と飽くなき探究心を見せた柳楽。本作は10月に韓国の釜山国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本公開後には、香港アジア映画祭、台湾での公開、そしてモロッコのマラケシュ国際映画祭への出品も決まっているという。「マラケシュの映画祭は、マーティン・スコセッシ監督が審査委員長みたいです。僕も行かせてもらえるみたいなので、とても楽しみ」と柳楽は目を輝かせると「色々な方と出会ういい機会。チャンスを見逃す馬鹿にはなりたくないです」と強い視線で語ってくれた。
アイヌ出身の無骨な五郎を演じた映画『許されざる者』。その役作りのために体重を増やしていた時、本作の撮影がクランクインしたという。
「10代の内面的に脆く繊細な役なのに、かなり体格が大きくて……。すごくその部分が引っかかっていたんです。100パーセント理想通りにいかなくて、これでいいのかなって思いが強かった。でもそれは自分の責任。本来なら『ゆるせない、逢いたい』の撮影が終わってから、『許されざる者』のために、死に物狂いで体重を上げればいいんです」。何度も「自分の責任なんです」と繰り返していた柳楽だったが、一方で「そんな状況の中、どれだけ隆太郎らしさが出せるかがひとつのテーマでした」と語った。俳優・柳楽優弥の魅力がこの言葉に表れているような気がした。(取材・文・写真:才谷りょう)
映画『ゆるせない、逢いたい』は11月16日より全国公開
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