大人気シリーズ『幼獣マメシバ』で、口だけ達者な中年ニート・芝二郎を演じている佐藤二朗。9月20日より公開される『幼獣マメシバ 望郷篇』は劇場版4作目となるが、1作目から6年経った今も、「犬には全く興味なし」とさらりかわす。
ところが、少し成長したマメシバ・一郎をさりげなく抱き上げるその表情は、誰が見たってデレデレ顔。そんなことも含めながら、佐藤の根っこの部分を探るべく、様々な質問を浴びせてみた。

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 40歳、不惑の年を迎えた自称・旅人の芝二郎(佐藤)は、相棒の一郎と共にケータイ圏外の孤島に旅立ち、行方不明になった幼なじみのべーちゃん(高橋洋)と一郎の弟・三郎を探すため悪戦苦闘を繰り広げる。シリーズ最新作『幼獣マメシバ 望郷篇』は、面倒なことを避けてきた芝二郎が一歩踏み出し、自ら渦中に飛び込んでいく心のアドベンチャーともいえる作品だ。

 そもそもこのシリーズは、脚本家の永森裕二から、「佐藤さんがやらなければ成立しない」と口説かれて始まった企画。「僕と永森さん、そして監督の亀井(亨)さんの共通認識は、動物がしゃべったりしない、人の気持ちがわかるような仕草はしない、犬が亡くなって観客の涙を誘うこともしない。犬はただそこにいるだけ。それが一番人間と動物のリアルな距離感だから、ということを一貫してやってきた」と振り返る。

 とはいえ、タイトルに「マメシバ」と入っている以上、キュン死しそうな可愛いショットや佐藤との微笑ましい絡みもふんだんに盛り込まれている。一郎とは、「撮影の合間も戯れたことはない」と、相変わらずの佐藤だが、思い通りにいかない動物相手の撮影は、大変だったのではないだろうか。

 「動物は不特定要素の塊なので、役者の芝居を当然崩してくる。1作目は少しイライラもしたが、今では逆にこれを楽しむことが動物映画の醍醐味だと思えてきた」と、余裕の様子。
その一例が、寝そべっている佐藤の股間に一郎がうずくまるシーン。「現場では、『神が降りたぞー!』って言っていたが、結局、後にも先にもそれだけだった」と苦笑い。 ところで、佐藤が演じる芝二郎というキャラ、こちらも相当気になるが、この話題に触れると、佐藤は急に真顔になり、熱弁を振るい始める。「これは、僕が俳優として一番大切にしていることなんですが、こんな人いる“かも” 、見たことないけどいる“かも”と、観る人に思ってもらえる役作りを常に心掛けている」と力説。「こんな奴いないよ! と思われたら観客はマッハの速度で引いちゃいますからね。芝二郎はそのギリギリのライン」と打ち明けた。

 本作で4作目となる『幼獣マメシバ』シリーズは佐藤にとっても初主演作ということで、並々ならぬ思いがある。「僕はこれまで『小規模な作品ですが、よかったら…』なんて、謙虚に紹介してきたが、今回は、照れずに素直な気持ちで言いたい!」と襟を正す。「この映画は、確かにゆるい部分もあるけれど、人が一歩前に進むための壮絶な闘いの物語でもある。だから、観ないと損! この映画を観ないで人生を終えるのは悲劇!」と猛アピールで締めくくった。

 追記:取材が終わり、すっかり顔つきが精悍になった一郎を抱き上げ、撮影にのぞむ佐藤。その目尻の下がった表情はどこからどう見ても、犬好きのおじさんにしか見えないのだが…ま、そこは触れないことにしておこう。
(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『幼獣マメシバ 望郷篇』は9月20日全国公開。
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