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アフレコ中、モニターに映し出されたグンソクの呼吸の位置を入念に確認する平川の姿があった。一つ一つ丁寧に、そして惚れ惚れするような美しい声と演技力。作品に真摯に向き合う姿勢……誠実な人柄が伝わってくるような一コマだ。「吹き替えのお仕事の場合、生きている人間が写し出されているので、当然呼吸をしているんですよね。その呼吸を、絵の中や音からしっかり拾って、必要のあるもの、ないものを取捨選択しながら、自分とシンクロさせていくことが大事なんです。とても難しくて、まだ完全にやり切れたことはないんですけれどね」。
一方、アニメーションのキャラクターは呼吸をしていない。「ダッシュした時などは、肩を揺らしたりという演出がついていたりもしますが、日常会話などで、キャラクターが普通に喋っている時の呼吸は特に指示があるわけではないので、僕らがキャラクターについて考え、その部分を作ってあげる必要があるんです。その意味では、実写の吹き替えは一から作る作業で、アニメはゼロから作るという感じですね」。
息遣いや呼吸をシンクロさせながら、対象物に命を吹き込むプロの技。グンソクの吹き替え5作目となる本作でも、平川はキャラクターへの研究を怠らない。
これまで幅広いジャンルの“声の仕事”に従事してきた平川にとって、印象に残っているキャラクターや、ターニングポイントになった作品は何なのだろうか。「アニメで言えば『岩窟王』(04)は印象に残っています。フランツ・デピネーという役をやらせていただいたのですが、初めてメインキャラクターの一人に抜擢していただいた作品。
周りの方々に助けていただいて、何とかやり遂げた思い出がありますね。
「自分を役に寄せていくアプローチ方法を心がけています」という平川。「吹き替えは、一度完成された作品なので、本家の監督さんや役者さんが、何を考えてお芝居をしているのかを汲み取りつつも『平川を呼んで良かった』と思ってもらえるように演じたい。『キレイな男』も、本国の皆さんのお芝居の良さを少しでも日本語でお伝えできれば」と強い眼差しで語ってくれた。(取材・文・写真:才谷りょう)
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