テレビアニメから、映画、海外ドラマの吹き替えなど幅広いジャンルで活躍する声優・平川大輔。美し声色で数多くの魅力的なキャラクターを演じてきた平川だが、中でも韓流スター、チャン・グンソクの吹き替えは、多くのファンを魅了してきた。
最新作ドラマ『キレイな男』でも、その存在感は健在!通算5度目となる「グンソク=平川」に本作の見どころや、声優という仕事について聞いた。

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 アフレコ中、モニターに映し出されたグンソクの呼吸の位置を入念に確認する平川の姿があった。一つ一つ丁寧に、そして惚れ惚れするような美しい声と演技力。作品に真摯に向き合う姿勢……誠実な人柄が伝わってくるような一コマだ。「吹き替えのお仕事の場合、生きている人間が写し出されているので、当然呼吸をしているんですよね。その呼吸を、絵の中や音からしっかり拾って、必要のあるもの、ないものを取捨選択しながら、自分とシンクロさせていくことが大事なんです。とても難しくて、まだ完全にやり切れたことはないんですけれどね」。

 一方、アニメーションのキャラクターは呼吸をしていない。「ダッシュした時などは、肩を揺らしたりという演出がついていたりもしますが、日常会話などで、キャラクターが普通に喋っている時の呼吸は特に指示があるわけではないので、僕らがキャラクターについて考え、その部分を作ってあげる必要があるんです。その意味では、実写の吹き替えは一から作る作業で、アニメはゼロから作るという感じですね」。

 息遣いや呼吸をシンクロさせながら、対象物に命を吹き込むプロの技。グンソクの吹き替え5作目となる本作でも、平川はキャラクターへの研究を怠らない。
「毎回演じている役柄が違うので、いただいた台本やVTRを見ながら、グンソクさんがどんな形で役柄にアプローチしているのかを考えます。『キレイな男』も、これまでの彼の役柄に多い、上から目線で強気なタイプという意味では共通かもしれませんが、この作品の(グンソク演じる)トッコ・マテという役は、女性によって成長させられるという側面があるので、経験が蓄積していくにつれ変化していく姿を意識して演じたつもりです」。 自身を「悩みやすいタイプです」と分析した平川。担当する役柄やキャラクターについては突き詰めていく癖があるらしく「夜中に自宅で、殺人犯や暴力を振るう役の練習をしていたら、数日後に警察が来たこともあったんです」と仰天エピソードを明かす。しかし、そんな研究熱心な姿勢が製作者の信頼を得るのだろう。グンソクと同様、ハリウッド俳優、オーランド・ブルームの吹き替えも、ほぼ平川が担当している。「違う作品で同じ役者の吹き替えを続けてやらせていただくのは、とても光栄なことですし、今後も続けてやらせていただけたら、それは大変ありがたいことだと思っています。でも、担当させていただく俳優さんが年を重ねていった時、僕自身もその年齢にあった演技が出来るように、レベルアップしていかないとダメですけれどね」。

 これまで幅広いジャンルの“声の仕事”に従事してきた平川にとって、印象に残っているキャラクターや、ターニングポイントになった作品は何なのだろうか。「アニメで言えば『岩窟王』(04)は印象に残っています。フランツ・デピネーという役をやらせていただいたのですが、初めてメインキャラクターの一人に抜擢していただいた作品。

 周りの方々に助けていただいて、何とかやり遂げた思い出がありますね。
あとはオーランド・ブルームさんの吹き替えを初めてやらせていただいた『ロード・オブ・ザ・リング』も忘れられないです」。

 「自分を役に寄せていくアプローチ方法を心がけています」という平川。「吹き替えは、一度完成された作品なので、本家の監督さんや役者さんが、何を考えてお芝居をしているのかを汲み取りつつも『平川を呼んで良かった』と思ってもらえるように演じたい。『キレイな男』も、本国の皆さんのお芝居の良さを少しでも日本語でお伝えできれば」と強い眼差しで語ってくれた。(取材・文・写真:才谷りょう)

 韓国ドラマ『キレイな男』DVDは10月2日よりTSUTAYA先行レンタル開始、10月17日より発売。
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