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高校時代には強化選手に選ばれるなど、優秀な空手少年であった三富の人生を変える出会いがあったのは小学6年から中学1年にかけての頃。「プロレスリング・ノア」の深夜中継で三沢光晴(享年46歳)VS 小橋建太戦を見て、「この人たちは超人だ」と衝撃を受けたという。中高一貫の進学校へ通っていた三富だが、中学でも高校でも“将来の夢”には迷うことなく「プロレスラー」と記入。夢の実現へひた走ってきた。
慶應大学在学中は「潮吹豪」のリングネームで“ミスター学生プロレス”と称されるほど活躍。「その時から結構あざとかったんです」と笑い「やっぱりいい大学へ行ってプロレスやってたら注目されそうじゃないですか。だから早稲田か慶應に行こうっていうのはありました。なのでプロレスありきです」というからその当時から目標達成力、そしてセルフプロデュースに長けていたようだ。
就活は「ほとんどしなかった」と話すも、博報堂の内定が決まった際は「悩みましたけど“博報堂にいた”っていうキャリアがあった方が絶対面白くなるなと思って、そっちを優先しました」と入社を決意。ここでもセルフプロデュース的頭が働いたというか、やはりプロレスラーとしての自分が前提にある。だが三富が思う以上に、自身のプロレスを思う気持ちは大きかった。
「会社にいた時は朝5時半に起きて、24時間やってるジムでトレーニングをしてから出社したりしてました。いつも仕事が終わるのは0時頃、遅い時は2時に終わって1時間ぐらいしか寝てないのに、5時半に起きることもありました」。 仕事は過酷でも、プロレスへ向かう気持ちが三富の救いになっていた。「プロレスをしてない時の自分は本当に廃人でしかなかったというか。空っぽです。もう息ができない、心の息ができなかったというのがありました。プロレスより全然痛かったです」と振り返る。「プロレスのリングは博報堂ほどお金は稼げないかもしれないし、偏見もあるかもしれないけど、自分にとっては天国なんです」というから真に迫ってくる。
そんな三富にとってプロレスの魅力は「やっぱり試合もそうだし、キャリアの積み方もそうだし、人生の全てが詰まっていると思ってます。特に小橋さんの試合は僕にとってすごく大きい。小橋さんはどんなにやられても立ち上がって、最後は自分の必殺技で勝つ。何ものにも負けない、僕の人生を肯定してくれているような試合だったんです」という。
「信じた道を信じ続ければ、裏切らないんだなと思います。周囲の反対もあったけれど、やっぱり好きなことをやり続けて今はよかったと思っているし、好きなことを仕事にできて幸せだと思います」
社会の尺度と違ってもいい。本当に心が望むものに情熱を傾けることで見えてくる道がある。そんなメッセージを三富はリングで闘い、発信し続けている。(取材・文・写真:しべ超二)