「こいつはくせえッー! ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーッ!!」このセリフをモノにしなければ、と声優・上田燿司は夜も眠れなかったという。人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』が25年の時を経てテレビアニメ化して早二年。
2015年1月からはエジプト編が始まる。新編放送に先駆けアニマックスでは、「2014大晦日 ジョジョの奇妙な冒険 24時間一挙放送」が行われる。この総集編企画の全50話中で際立った存在感を示すキャラクターの一人が、ロバート・E・O・スピードワゴンだ。

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 ロバート・E・O・スピードワゴンは、ロンドンの貧民街でジョナサン・ジョースターに出会い、「心配なんでくっついて来た」とおせっかいを焼く。ジョナサンの死後は、渡米して一人で油田を発見して「スピードワゴン財団」を築くほどの富を得る。そんなスピードワゴンを演じた上田が、収録当時を振り返った。

 2012年、新作アニメとしてTVアニメ化されたジョジョ。「こんな作品に大役で関わることができて光栄です」と上田は当時を思い出す。「大作に関われるチャンスはそう多くありません。不安な反面、ワクワク感もあり、今までやってきたこと全てをぶつけないと達成できない仕事だと思いました。でも全力でぶつかれる場があるのは幸せですよね」。

 演じて印象に残ったのは、やっぱりあのシーン。
「3話冒頭ですね。『こいつはくせえッー!』と叫ぶシーン。スピードワゴンの見せ場ですし、このセリフの出来如何でその後うまくやっていけるかどうかが決まると思いました。3話はそういうプレッシャーが強かったです」。

 アフレコ現場は「ベテランも新人も追い込まれたと思います」と語る。「どんな現場でも必死にやるのは当然ですが、ジョジョ作品では心身ともに難易度の高いハードルを提示され、そのハードルを乗り越えるために皆一つになっていきました。実は、老いも若きもボルテージが高まる現場というのはそうそうないんですよ。たずさわれて『あぁ、幸せな現場にいるな!』と毎回感じました。だから自分のパートで作品を台無しにすることはできませんでした」と緊張の連続だったという。「ジョージ・ジョースターI世役の菅原正志さんなんか『「北斗の拳」の現場を思い出す』とおっしゃっていました。大ベテランの菅原さんが若いとき演じた大作を思い出す現場が、時を経てまた出現する。『そうかぁ!「北斗の拳」に匹敵する現場なのか』と燃えましたね」。
  もしスピードワゴン以外の役を演じられるとしたらと質問すると、すぐ答えが返ってきた。「悪役に魅力を感じるのでカーズやディオを演じてみたいです。普段自分が言えないセリフというのもあり、ちょっと狂気めいたセリフに魅力を感じるんですよ。人間にはそういう闇の部分もあるじゃないですか。けれど悪役の本人は、異常だとか闇だとか思っていない。そいつにとっては当然の倫理観で、『何が悪いんだ!』という感じですよね。そのギャップに魅力を感じます」と悪役への憧れを明かした。

 上田は、まだジョジョに出会っていない人はとにかく一度見てもらいたいという。「拒絶してもハマってもどちらでも良いのですが、この作品に食わず嫌いで触れないのはもったいないと思います。実は自分も最初そうだった部分もあるので、触れてない人はぜひ一度ジョジョの世界を体験してほしいです」。(取材・文:桜井恒二)

 「2014大晦日 ジョジョの奇妙な冒険 24時間一挙放送」は、12月30日24時からアニマックスで放送スタート。TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』エジプト編は、2015年1月9日より24時30分からTOKYO MX1ほかにて放送スタート。
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