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『行け!稲中卓球部』『ヒミズ』などで知られる古谷実の衝撃コミックを実写映画化した本作は、ありふれた日常に潜む殺人鬼の恐怖を描いたサイコ・サスペンス。ビル清掃会社で働く青年・岡田(濱田岳)と変わり者の先輩・安藤(ムロ)が織り成す普通の日常と、欲望のままに殺人を重ねるサイコキラー(森田)の深層を描く狂気の世界を、『純喫茶磯辺』『麦子さんと』などの俊英・吉田恵輔監督が対比的に描く。
平和と狂乱がシフトチェンジする斬新な構成に度肝を抜かれる本作だが、これについてムロは、「本当は前半の平和な日常で終わればいいんですが、悔しいかな、喜劇の裏には悲劇がある、ということを改めて教えられますね」としみじみ。「小さな恋物語であるはずが、隣に殺人鬼がいた、という悲しい話。でも、他人事じゃなくて、僕らにもいつ悲劇が降り掛かってくるかわからない、それが現実ですからね」と、社会の二面性を憂慮する。
それにしても、森田が演じる殺人鬼の恐ろしさは尋常じゃない。「これはいい意味ですが、“なんてハマリ役なんだろう”って思いましたね。演技とはいえ、彼の狂気に本気で恐怖を感じました。森田くんは、あまりみんなでワイワイやるタイプではなく、自分の世界をしっかり持っている人なので、より説得力が生まれたんじゃないかな」と称賛。
さらに、「芝居で褒められようと思っていない。褒められることを、むしろあきらめている。
しかし、完成作品を観た限りでは、安藤の奇抜な言動、行動、髪型?は、恐怖に溺れそうな観客にパーンと浮き輪を投げてくれる、そんな存在にも思えてくる。「安藤は、犯罪者一歩手前のピュアな男。チェーンソーは買って家に置いてあるんですが、使わない。使わないけど、“切っちゃうかもよ!”と脅かす恐さもある」と、結局得体の知れない存在なのだが、いわゆる「悲劇の裏に潜む喜劇」、その象徴ということか。
今回、シリアスな演技も随所に披露しているムロ。「口では喜劇役者と言っていますが、本当は、笑いが一切ないシリアスだけの自分も観てみたい」と語る。
映画『ヒメアノ~ル』は5月28日より全国公開。