現在、公開中の映画『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』でメガホンを取った鬼才ティム・バートン監督を単独インタビュー。 映画同様、自身も“奇妙な変わり者”というレッテルを貼られた孤独な少年時代を振り返りながら、本作に込めた思いを語った。


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 本作は、ランサム・リグズの大ベストセラー小説『ハヤブサが守る家』をバートン監督が実写映画化したダークファンタジー。永遠に年を取らない子供たちが暮らす秘密の屋敷を訪れた孤独な少年ジェイク(エイサ・バターフィールド)が、ミステリアスな女主人ミス・ペレグリン(エヴァ・グリーン)と心を通わせ、やがて驚くべき宿命を受け入れながら成長していく姿を映し出す。

 原作にシンパシーを強く感じたというバートン監督は、「まるで自分の物語のようだった」と述懐する。少年時代、“奇妙な変わり者”というレッテルを貼られたバートン監督は、「周囲に違和感を覚えたり、環境が合わなかったり、シャイで誰とも話ができなかったり…十代の頃、私もそういう経験をたくさん味わってきた」と告白。「だから、主人公ジェイクのぎこちなさは、自分を見ているようだった」と目を細める。

 さらに、ジェイクだけでなく、本作に登場する全ての“奇妙”な子供たちに、「思考や性格など、何らかのカタチで私の一部を投影した」と語るバートン監督。ミステリアスなダークファンタジーでありながら、作品全体から温かい愛情が溢れ出しているのはそのせいだろうか。「ありのままの自分を肯定し、まっすぐに生きること。それがどんなに奇妙でも、どんなに変わっていても、それでいいんだ、大丈夫!っていうことを伝えたかったんだ」。バートン監督が本作に込めた熱いメッセージは、社会からちょっぴり浮いてしまった人たちへのエールでもあるのだ。 振り返れば、変わり者と呼ばれながら、孤独な少年時代を過ごしたバートン監督。そんな彼を支えてくれたのが、ほかでもない映画だった。
「当時、バーバンク(米カリフォルニア州/バートン監督の故郷)のコーネルシアターという劇場によく通ってましたね。50セントで『ゴジラ』シリーズ3本立てが観られたんですよ!本多(猪四郎)監督作品をはじめ、日本のSF映画やモンスター映画が大好きで、1日中『ゴジラ』を観て過ごした日もありました」と懐かしそうに思いを巡らす。

 「確かに、映画は私の避難場所ではありましたが、その反面、自分の心理や想像力を探求する場所でもあった。映画を通じて私の心は解放されたのだと思います。あの頃の経験は、映画監督となった私のインスピレーションの源にもなっている」としみじみ。映画に救われたバートン監督は、その時に養ったイマジネーションをパワーに替え、逆に世界中の映画ファンを熱狂させるクリエーターになったのだ。「とてもラッキーでしたね。今、自分が映画を作ることができる環境にいること自体が驚きです」。

 今後『ダンボ』の実写版も控え、ますますエネルギッシュに映画の世界を走り続けるバートン監督。「今まで一緒にやってきたスタッフや俳優たちからたくさんのエネルギーをもらいました。だから、1つの方向に決めるのではなく、これまで培ったいろんなことを混ぜ合わせながら進んでいきたい。映画館に入り浸っていた、あの頃の気持ちも忘れずに、これからも作品と真摯に向き合っていきたいですね」。
比類なきバートン・ワールドの新たな展開に期待したい。(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』は全国公開中。
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