W・ブルース・キャメロンの大ベストセラー小説を映画化した『僕のワンダフル・ライフ』で、迷い犬ベイリーの命を救う主人公イーサン(K・J・アパ/青年時代)の日本語吹き替えを担当した声優・梅原裕一郎。「映画の吹き替えは僕の憧れ」と声を弾ませる彼が、本作に込めた万感の思い、そして、声優という仕事の醍醐味について真摯に語った。


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 本作は、映画『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』『ギルバート・グレイプ』のラッセ・ハルストレム監督が犬と人間の尊い絆を描いた感動ドラマ。迷い犬だったゴールデンレトリバーのベイリー(ジョシュ・ギャット/高木渉)は、自分の命を救ってくれたイーサンと固い絆で結ばれるが、年老いて天国へ旅立つ日を迎えることに。だが、大好きなイーサンにもう一度会いたい一心から、ベイリーは何度も別の犬に生まれ変わり、ついに念願の再会を果たす。

 インタビュー前、本作の宣伝アンバサダーを務めるゼウス君(AmazonプライムのCMで人気を博したゴールデンレトリバー)とツーショット撮影に臨んだ梅原は、「子供の頃、友達の家に秋田犬がいて、よく一緒に遊んでいたんですが、今日、ゼウス君の匂いを嗅いだ瞬間、その記憶が蘇りました」と懐かしそうに顔をほころばせる。

 そんな犬好きな一面を垣間みせながら、「僕自身は犬を飼った経験がないのですが、この映画はグッとくるシーンばかりで、予想以上に感情移入できました」と興奮気味に語る梅原。とくに印象的だったのは、家を出ていくイーサンの車を、ベイリーが無邪気に追いかけるシーンだそうで、「何も状況をわかっていないベイリーが“面白い遊びだな”くらいにしか思っていないところが凄く健気で。
通常、セリフのないところは飛ばすこともあるんですが、あのシーンは通しで観て演じたので、“戻れ!”という最後のセリフに気持ちが入った」と述懐する。

 そもそも、映画の吹き替えに憧れてこの世界に入ったという梅原。「小学5年生の時に、『ロード・オブ・ザ・リング』を観たんですが、ヴィゴ・モーテンセン演じるアラゴルンの声を大塚芳忠さんが担当されていて、“素敵な声だなぁ”って思ったのが、声優という職業を意識した最初のきっかけですね」と振り返る。「ただ、変声期を迎えて、もともと高かった声が急に低くなってしまい、自分の声になかなか慣れることができなかった」という梅原は、“声優になりたい”という気持ちは全くなかったという。 そんな梅原を心変わりさせたのが、友達の何気ない言葉。「高校のとき、軽音楽部でヴォーカルをやらせていただく機会があって、それを聴いた周りの友達から“凄くいい声してるね”って言われて。
それまで“好きじゃない”と思い込んでいた声を人から初めて褒められ、“もしかすると、この低い声も個性なのかな?”と思えるようになった。その言葉は、思春期の僕の心に大きく響きましたね」と笑顔を見せる。

 『美男高校地球防衛部LOVE!』『ヤングブラック・ジャック』で注目を集め、現在は多くの人気作に出演する梅原。憧れだった映画の吹き替えについては、「あくまでも正解は俳優さんの演技。アニメやゲームのような強烈な個性ではなく、自然で等身大の声が求められる。そういった制限の中で、どう自分の声で色を付けられるか。
そこが難しさでもあり、醍醐味でもある」と目を輝かせる。

 ベイリーの健気さと、それを受け止めるイーサンの深い愛。“犬と人間が触れ合う尊さ”を、梅原はどんな語り口で表現するのか。今から公開が待ち遠しい。(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『僕のワンダフル・ライフ』は9月29日より全国公開。