夢へ向かう“情熱”と家族との“絆”がたっぷりと詰まったディズニーピクサーの最新作『リメンバー・ミー』。3月16日(金)からの公開に先駆けいち早く本作を鑑賞したシンガー・ソングライターのchayは、「主人公のミゲルと自分が驚くほど重なって。
号泣してしまいました」と瞳をうるませる。映画の感想を語ってもらうと、音楽にかける一途な想い。そして、家族との思い出があふれ出した。

【写真】chayインタビュー写真&『リメンバー・ミー』場面写真

 ミュージシャンを夢見る、ギターの天才少年・ミゲルが、カラフルな“死者の国”を舞台に大冒険を繰り広げる姿を描く本作。chayは「映画を観るまでは、ハッピーで楽しい要素が満載の単純なストーリーだと思っていたんです。でも、観ていくうちに、ものすごく大事なメッセージがこめられた映画だとわかって、涙があふれてきました。音楽を通して家族の絆を描いていて、共感できることばかりで本当に感動しました」と心を震わせる。

 ミゲルは心の底から「ミュージシャンになりたい」という夢を持っている少年。しかし彼の家には厳しい家族の掟があり、音楽を禁じられて育ったのだ。chayは「私も小さな頃から歌うことが大好きで、ずっと歌手に憧れていました。父が観ていたMTVのシンディ・ローパーを目にしたときに衝撃を受けたんです。“私もこんなふうになりたい!”と思って、デタラメな英語で歌っていました」と幼少期から歌手への夢を抱いたが、「私も両親から、歌手になることをずっと反対されていたんです」とミゲルと同じ境遇にあったそう。


 不安定な世界だけに、両親の心配も大きかったそうで、「大学に入ると同時に、路上ライブをしたり、音楽塾に通ったりと音楽活動を始めたのですが、すべて両親には内緒でした」。しかし、「学校から家に帰ると、毎日6、7時間はギターの練習をする生活を5年くらい続けて。最初は指も痛いし、辛いけれど、押さえられなかったコードが弾けるようになったりと上達していくのがすごく楽しくて!内緒でやっているつもりでしたが、両親は私のそんな姿を見てくれていて、そんなに好きなんだったら“やってみたらいいんじゃない”と思ってくれたみたいです。次第に理解してくれるようになりました」と彼女の“本気”が伝わり、両親も夢を応援してくれるようになったという。

 路上ライブを始めた当初は、立ち止まってくれる人は0人という日も珍しくなかったそうだが、そんな彼女を励ましてくれたのが「祖父と祖母」だったそう。劇中、ミゲルは迷い込んだ“死者の国”で先祖たちに再会するが、chayは「映画を観て、亡くなった祖父にすごく会いたくなりました」と思わず涙をこぼす。「祖父と祖母は路上ライブもいつも見に来てくれて、私のデビューもすごく楽しみにしてくれていました。残念ながら、祖父に私のデビューした姿を見せることはできなかったのですが、祖父が入院したときに、“病室で歌わせてください”と看護師さんにお願いして、歌わせてもらったことがあるんです。祖父はそのときはもうかなり元気がなかったんですが、一生懸命に拍手をしてくれました」。 本作の“死者の国”には、あるルールが存在する。<死者の国>の住人は、生きている国で忘れられると<死者の国>からも消えてしまうのだ。chayは「私がテレビに出ているのを見ると、祖母も両親も“おじいちゃまが生きていたら、本当に喜んでいただろうね”といつも言っています。
祖父の写真を飾って“今日はこれに出たよ”と報告もしますし、今だにどんなに小さなライブでも祖母は足を運んでくれて、祖父の写真を持って来てくれるんです」と今でも祖父の存在をしっかりと心に留めている。「私はものすごいおじいちゃんっ子で、“おじいちゃまみたいな人と結婚したい”ってずっと言っていたんです。優しくて、素敵な祖父でした」。

 ミゲルが夢に向かう情熱。そして家族に傾ける愛情。そのすべてが「私の想いとぴったりと重なりました」というchay。「私は今年デビュー5周年を迎えますが、続けていくうちにだんだん“慣れ”が出てきてしまいます。デビューしてしばらくは全く結果が出ず、ただただがむしゃらでした。“歌を聴いてほしい”との一心でステージに立つミゲルを見て、その頃の自分を思い出しました」と語り、続けて「今ではすっかり一番のファンになってくれている両親をはじめ、家族に改めて感謝しなければいけないなと映画を観終った後に家族の顔を思い浮かべていました。私にとって、本当に大切なことを思い出させてくれた映画です」と目に涙をためながらも熱を込めて語る。

 最後に「老若男女誰もが重なる部分があると思います。大人にこそ観て欲しい映画です」と話し、インタビューを締めくくった。
(取材・文:成田おり枝/写真:坂本碧)

 映画『リメンバー・ミー』は3月16日(金)より全国公開。
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