愛と音楽あふれるカラフルな“死者の国”での冒険をつづるディズニーピクサー最新作『リメンバー・ミー』。先日、各賞が発表された第90回アカデミー賞では、長編アニメーション賞と主題歌賞の2部門を受賞という快挙を達成した。
そんな本作を一足早く鑑賞した、パワフルな歌声で人気のシンガーソングライター・阿部真央は「最初から最後まで泣きっぱなし。家族の顔を思い浮かべながら観ていました」と感動しきり。映画を観終わったばかりのホヤホヤの感想を聞いた。

【写真】阿部真央インタビュー写真&『リメンバー・ミー』場面写真

 ミュージシャンを夢見る少年・ミゲルが、陽気でカラフルな<死者の国>に迷い込み、<死者の国>で出会った孤独なガイコツ・へクターと冒険を繰り広げる本作。阿部は「私も音楽をやっているので、ミゲルが音楽に憧れる気持ちもわかります。また2年前に母親になったこともあって、彼と自分の息子とを重ねてウルウルしてしまうときもあって。ミュージシャンとしても母としても、あらゆる面でグッときた」と大感激。

 作中でミゲルは、家族の厳しい掟によって音楽を禁止されている。しかし夢は諦められず、伝説のミュージシャン・デラクルスに憧れて、彼の音楽を隠れて聴いていた。阿部は「ものすごく健気ですよね。一途に何かを想う気持ちって、なんてステキなんだろうと思いました。私が大好きなのが、ミゲルが家族に隠れてギターを弾くシーン。
音楽が好きでたまらないといった、すごくいい顔をしているんです。ギターを弾いて音楽に入り込んだら、こうなっちゃうよね!と思えるとてもリアルな表情でした」と熱を込め、「その気持ち、わかるなあと思いました」とミゲルの音楽への情熱に共感を寄せる。

 阿部自身は、祖父の言葉がきっかけで自然と音楽の道へと進んだそう。「祖父が歌が大好きで、私に教え込んでくれたんです。親戚の前で歌ったら、みんなが“うまい”と言ってくれて、“私うまいのかな?”とうれしくなって。褒められたことがきっかけで、歌手になりたいなと思いました。単純なんですよね」と笑い、「祖父に教えられて歌ったのは、演歌なんです。それから成長するごとにいろいろな音楽が好きになり、高校生でギターを始めて。ミゲルのように“私には音楽しかない”と思うようになりました」と明かす。

 圧倒的な歌唱力と表現力で人気の阿部だが、彼女を突き動かしているのは「誰かを感動させたい!」という気持ちだという。「デビューして上京したばかりの頃は、周りから“こういう曲を書いたら?”と言われることも多くて、それがストレスになってしまったときもあって。すべて幼さゆえなんですが、“もうやめてしまいたい”と投げやりになってしまったこともあります。
でも一方では、私に音楽をやめられるわけがないこともわかっていました」と告白。

 壁を打ち破れたのは、「どうやって進んでいったらいいかを相談できる人が、いつもそばにいてくれて。スタッフさんに恵まれているんです」と周囲のおかげだと感謝しつつ、「あとはやっぱり、歌を聴いてくれる人の存在です」とニッコリ。「私はひょんなことから大会で賞をいただいてデビューをしたんですが、ステージに立って“自分の歌が誰かの心を動かしている”と感じられたときに、ものすごくそれが自信になったんです。作中でもミゲルがステージに立つシーンがありますよね。ミゲルが観客の心をグッとつかんで、それによって彼も歌うことがどんどん楽しくなっていることが手に取るようにわかって、ものすごく感動しました。“このシーン、ずっと続け!”と思っていました」。 作中には、歌によって家族が時を超えてつながるシーンもあるが「音楽で人とつながれるなんて、至高の瞬間!」と音楽の力を感じて、思わず瞳を潤ませる。「最近は私の息子も、私の歌を歌ったり、踊ったりするときがあってすごくうれしいんです。音楽って、その曲を聴いていた小さい頃を思い出したり、その時代に戻れたりもできますよね。改めて音楽を人に届けられる立場にいることをうれしく思って、ありがたい仕事に就いているんだなと実感しました」。

 インタビューの最後に阿部は、「ミゲルたちの家族を見て、家族ってやっぱり大事だなと思いました。
そばにいてくれるだけで力になる。私はこの映画を母に勧めたいと思ったんです。美味しいものを食べたり、いいものを見たりすると、やっぱり家族と共有したくなりますよね。母に“すごくいい映画観たよ!”と早く言いたいです!」と声を弾ませていた。(取材・文:成田おり枝/写真:坂本碧)

 映画『リメンバー・ミー』は3月16日(金)から全国公開。
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