伝説的アニメ『フリクリ』が、完全新作の劇場版『フリクリ オルタナ』『フリクリ プログレ』となって登場。『フリクリ プログレ』に出演する声優福山潤を直撃すると「難解に見えるけれど、描いているのはド直球のドラマ。
シンプルなボーイ・ミーツ・ガールの物語」と魅力を分析する。その言葉通り、思春期のピュアなパワーが溢れ出すような物語となったが、福山自身も“好き”や“楽しい”というまっすぐな想いに導かれ、ここまで歩んできたという。『フリクリ』の世界に飛び込んだ感想や、“生涯青春”ともいうべき、声優道の歩み方について話を聞いた。

【写真】福山潤、『フリクリ プログレ』インタビューフォト

 2000年から2001年にかけてリリースされたOVAシリーズ作品『フリクリ』の続編として、ヘッドフォンの少女ヒドミ(CV:水瀬いのり)と、クラスメイトの熱血少年・井出(CV:福山)を中心としたドラマを描く本作。「難解」とも言われる本シリーズだが、オーディションを経て井出役を得た福山は「シナリオと一緒に、前作から引き継がれている用語や設定が書かれた分厚い資料をいただいて。その資料を読むだけでもかなり時間がかかる」と苦笑い。

 しかし、台本から感じたのは「ヒドミと井出が、どんな関係になっていくか。壮大な出来事に巻き込まれていきますが、核となるのはシンプルな少年少女の出会いの物語。ボーイ・ミーツ・ガールの物語だと思いました」とシンプルなテーマだったという。「映像としては斬新な手法を取りながらも、描いているのはド直球のドラマ。大胆に説明を省いた上で、どれだけ演出でドラマを見せていくか。『フリクリ』が生まれたのは、そういうアイディアが多くあった時代だと思うんです。
僕はその時代の作品を見て、アニメが好きになりました。今回の新作にも、その部分がきちんと落とし込まれていたので、夢中になっていた当時の感覚を思い出しました」と語る。

 ヒドミと井出の関係性についても「井出は常にヒドミを心配し、応援して、守ろうとする。でも実際は、ヒドミに井出が守られていたりもする。そういった関係性が言葉ではなくて、彼らの行動や起きる出来事で観ている側に提示される」と言葉で理解するものではない様子。井出を演じる上では、まっさらな気持ちで飛び込むことを大事にしたそうで「多感な思春期にいる少年。女性に興味があって、ヒドミのことが気になって、好きになっている。井出のエネルギーや、ヒドミへの一途さを表現できればと思っていました」という。 アフレコでは、共演した女性陣の演技に圧倒されるばかりだったという福山。「水瀬さんの演じたヒドミは大変難しい役。でも彼女は、自分の見せなければいけないものをしっかりと理解して、堂々と演じられていて“若いのにすごいな”と思って見ていました。僕が彼女と同い年くらいの頃なんて、そんなことできなかったですよ(苦笑)。
しかもラハル役の林原めぐみさんとガッツリと対峙しなければいけない。僕は出番が終わると、台本を置いて水瀬さんや林原さん、沢城(みゆき)さんのやり取りを“すごいなあ”と思いながら見ていました。アニメ好きとしては、大変シビれるものを見せていただきましたよ!」と刺激的な現場を大いに楽しんだという。

 「こういう形のエンタテインメントがあってもいいということに、恐れずに向かっていく作品」と『フリクリ』の魅力を語るが、福山自身も今年、新事務所「BLACK SHIP株式会社」を立ち上げるなど、新たな道を切り開いている。いつも原動力となるのは「楽しいという気持ち」だそうで、「辛いことやキツイことを避けるための楽しさではなく、大変なことをいかに楽しさに変えていくか。それが大事だと思っています」とニッコリ。「CEO(こう書くと大企業みたいですが超絶小さな弱小企業です 笑)になって責任は増えていくと思いますが、“好き”が高じて始めたことをいまだに楽しんでやれていることに喜びを感じています。もともとは好きだった女の子が声優志望だったから、一緒に養成所に通いたくて始めたことでもあって(笑)。それこそ井出じゃないですけど、思春期のこじらせから、大好きなことに出会えたというのはものすごくうれしいことですね」と充実感いっぱいの笑顔を見せていた。(取材・文・写真:成田おり枝)

 『フリクリ プログレ』は公開中。
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