ドラマ『中学聖日記』(TBS系/毎週火曜22時)で、有村架純演じる教師・末永聖と恋に落ちる中学生・黒岩晶を演じている岡田健史。全くの新人で、本ドラマがデビュー作にもかかわらず「二番手」という大抜てきであること、さらに「19歳の新人俳優が中学生を演じる」ということなどから、放送開始前にすでに大きな話題を呼んでいた。
そんな新人ながら、岡田が本作のメインに選ばれた理由をひも解きつつ、彼の“普通じゃない”役者としての魅力に迫る。

【写真】今夜放送6話からは、18歳になった晶(岡田健史)が登場

■岡田と役のキャラクターがリンク

 演じるのが「不思議な魅力を持つ少年」であることに加え、「1年がかりのオーディションで選ばれた」「芸能界に興味がなかった熱血野球少年に目をつけた事務所が5年がかりで口説き落とした逸材」などというエピソードも、ハードルを上げた。となると、高すぎるハードルごしに、「どれほどのものなのか」と意地悪な気持ちで見て、値踏みしたくなる人もいるだろう。

 だが、岡田が演じる黒岩晶は、そんな意地悪な視線もはねのけ、高すぎるハードルも瑞々しい輝きで飛び越えていった。

 「中学生には全く見えない。高校生に設定を変えれば良かったのに」という意見は山ほどあるし、タイトルやテーマから「淫行」として非難する人も多数いる。しかし、そうした人たちの中でどれだけの人が本当にドラマを観ているのかは、はなはだ疑問だ。

 確かに19歳の岡田の「外見」は、立派に大人である。だが、「大人にしか見えない中学生」は現実にもときどきいるし、岡田の真っすぐすぎる純粋さ、危うさを見ていると、「大人にしか見えない」どころか、むしろ周りのクラスメートよりも幼く見えてくるときがある。

 原作の淡々とした不思議な雰囲気を持つ美少年・晶よりも、ずっと生々しく、心がグラグラ揺れ動き、自分でもその感情の正体がわからず、コントロールできずに苦悩しているさまがリアルに伝わってくるのだ。

 例えば、「キレイな顔してるわね」と聖に言われ、イラッとして聖にビンタをし、両手をとらえて迫ろうとする場面。女性に対して、しかも教師に対して手をあげるという行動は、明らかに「普通じゃない」。
このシーンに説得力を持たせたのは、岡田のちょっとたどたどしい初々しさと、すでに「大人」に一歩足を踏み入れていることに無自覚な晶の「幼さ」「無防備さ」が見事にリンクしてくるからだと思う。

 さらに、「先生と結婚したい」「不倫でも(良い)」と、軽々しく口にすることにも、幼さが見える。「こんな中学生、いないだろ」という視聴者のツッコミは至極まっとうだ。なぜなら、晶は「不思議な魅力を持つ少年」であり、「普通の中学生」ではないからだ。

 そして、この浮世離れした「大人でもあり、子どもでもある」アンバランスさこそが晶の不思議な魅力であり、岡田が抜てきされた理由の一つなのではないかと思う。■“天然記念物”のような純粋さ

 以前、他媒体の雑誌のインタビューで岡田に取材をしたとき、驚いたのは、天然記念物のような純粋さだった。インタビュー中に背筋をピンと伸ばし、膝の上で軽く拳を握りしめ、キラキラの瞳で終始真っすぐ前を見て話す役者さんを、初めて見た。まるで卒業アルバムの集合写真のような真っすぐさとまぶしさだった。

 もちろん緊張していることもあるのだろう。しかし、よく通る声で一言一言しっかり考えながら語るさまは、「野球少年」がそのまま大きくなったような硬派な印象だ。

 しかも、高校の野球部の監督の部訓を今も大切にし、「気づき」を得るためにゴミ拾いをしているなどのエピソードも、まったく今どきの若者らしくなく、まったく「普通」じゃない。

 今は「高身長のイケメン俳優」が量産されている時代。
その流行のサイクルは予想以上に早く、次々に登場する新たなイケメンに世間の興味は移りがちだ。だからこそ、その中で生き残っていくのは難しく、非常にシビアな時代ともいえる。でも、岡田の場合、もちろん「超美形」ではあるのだが、いわゆる「ネクストブレイク枠のフレッシュなイケメン俳優」などとは佇まいからして、ちょっと違う。異質な「原石」感がある。

 まだまだセリフにもたどたどしさがあるが、それがちょうど「大人と子どもの境目にあるアンバランスさ」に合致している。また、物語の中で晶が成長していくのとともに、岡田自身の俳優としての成長も見える。これは実はオーディションが主流で「新人の登竜門」として機能していた頃の朝ドラヒロインと同様の効果でもある。

 13日放送分の第6話では18歳となり、中学生ではなくなった晶が登場するが、とびきりの「原石」がさらにどのように磨かれていくのか、注目したい。(文:田幸和歌子
編集部おすすめ