ドラマ『女王の教室』、映画『Little DJ 小さな恋の物語』『ヘブンズ・ドア』など、数多くの作品で印象を残してきた女優・福田麻由子。その女優人生は、2000年にドラマデビューし、今年で20年目を迎えるが、音楽青春映画『ラ』では、執着にも映る愛を主人公に向けるゆかりを演じ、大人の女性として新たな顔を見せている。
【写真】子役から大人の女性へ「福田麻由子」インタビューカット
バンドのボーカル・慎平(桜田通)だけを見てきたゆかり。バンド解散後も思いは変わらなかったが、ある出来事をきっかけに、ふたりの関係に、そして彼女自身に、変化が生じていく。
「ゆかりは私とは全く価値観の異なる役でした。でも、お話をいただけてうれしかった。これまでやらせていただいた多くが、芯が強くて自分をちゃんと持っている役でした。それらとは違う、他人に依存してしまうような役をやりたいとずっと思っていました。だからとてもうれしかった。ただ、実際に演じてみて、ゆかりには弱さもあるけれど、私にはない強さもあると感じました」と振り返る福田。
ゆかりを演じていた間は、自分自身を役に捧げた。
「昔、役と自分を切り離せなくなってしんどい思いをしたことがあったんです。そのこともあって、役と自分をどこかで冷静に切り離したほうがいいと思ってきたところがありました。
全霊でゆかりを演じた福田だが、今に至るまでの10代後半には、子役出身ゆえともいえる“もがき”を経験していた。
「周りの目も、私自身も、変化に戸惑っていました。周囲も私に子役としてのイメージを持っているし、私自身も大人の役者として現場にいることに追いついていない部分があった」。そうした不安定さが、焦りやプレッシャーへとつながっていった。 「子どもの頃から、一生この仕事を続けたいと思ってきました。その気持ちがブレたことはないし、ひとつひとつのお芝居を本気でやってきました。だけど、仕事なんだから、ただ役になるだけじゃダメなんじゃないかと考えるようになっていた…。どういう風に見えるのか、お客さんを楽しませるにはどうしたらいいのか。もちろんそうした意識も大切だけれど、そこに縛られてしまった。ちゃんとやらなきゃとがんじがらめになって、芝居自体ができなくなってしまったんです」。
しかし福田は立ち止まらずに、行動を起こした。
「人間として自分が変わらなければ、本物の役者になれないと感じました。それで、二十歳くらいのときに1年ほどワークショップに通い、そうしたこととはまた別に、アルバイトもしました。冷凍の荷物の仕分けとか、教科書の分別とか、1日中ポスターを丸めるとか。役者を続けたいからこそ、芝居以外のことにも触れようと」。
自分自身を模索するなか、立った舞台が転機へとつながっていった。
「『まゆをひそめて、僕を笑って』という、加藤拓也さん作・演出の恋愛劇でした。そこで自分をさらけ出すことができた。観てくれた方々にも、それまでの福田麻由子ではなく、恋愛をしているひとりの女性ジュリアとして観てもらえた感覚があったんです。その辺から、徐々に子役から、ひとりの役者へと自分自身の意識も変わっていったのだと思います」。
そうして『ラ』で、「すべてを捧げた」ゆかりと出会う。
「どっぷり浸かってみて、でも私、大丈夫だと思えた。
吹っ切れたように柔らかな笑みを浮かべる福田。その女優人生は、これまでの20年を経て、これからの20年、そしてさらに先へと、続いていく。(取材・文・写真:望月ふみ)
映画『ラ』は全国公開中。
演じることの原点に戻れたという福田が、芝居ができなくなっていた10代後半のもがきを告白した。
【写真】子役から大人の女性へ「福田麻由子」インタビューカット
バンドのボーカル・慎平(桜田通)だけを見てきたゆかり。バンド解散後も思いは変わらなかったが、ある出来事をきっかけに、ふたりの関係に、そして彼女自身に、変化が生じていく。
「ゆかりは私とは全く価値観の異なる役でした。でも、お話をいただけてうれしかった。これまでやらせていただいた多くが、芯が強くて自分をちゃんと持っている役でした。それらとは違う、他人に依存してしまうような役をやりたいとずっと思っていました。だからとてもうれしかった。ただ、実際に演じてみて、ゆかりには弱さもあるけれど、私にはない強さもあると感じました」と振り返る福田。
ゆかりを演じていた間は、自分自身を役に捧げた。
「昔、役と自分を切り離せなくなってしんどい思いをしたことがあったんです。そのこともあって、役と自分をどこかで冷静に切り離したほうがいいと思ってきたところがありました。
でも、これから役者としてどうやっていくべきかと考えたとき、そんなことを言ってないで全部染まってみようと思ったんです。私のすべてをゆかりに捧げようと」。
全霊でゆかりを演じた福田だが、今に至るまでの10代後半には、子役出身ゆえともいえる“もがき”を経験していた。
「周りの目も、私自身も、変化に戸惑っていました。周囲も私に子役としてのイメージを持っているし、私自身も大人の役者として現場にいることに追いついていない部分があった」。そうした不安定さが、焦りやプレッシャーへとつながっていった。 「子どもの頃から、一生この仕事を続けたいと思ってきました。その気持ちがブレたことはないし、ひとつひとつのお芝居を本気でやってきました。だけど、仕事なんだから、ただ役になるだけじゃダメなんじゃないかと考えるようになっていた…。どういう風に見えるのか、お客さんを楽しませるにはどうしたらいいのか。もちろんそうした意識も大切だけれど、そこに縛られてしまった。ちゃんとやらなきゃとがんじがらめになって、芝居自体ができなくなってしまったんです」。
しかし福田は立ち止まらずに、行動を起こした。
「人間として自分が変わらなければ、本物の役者になれないと感じました。それで、二十歳くらいのときに1年ほどワークショップに通い、そうしたこととはまた別に、アルバイトもしました。冷凍の荷物の仕分けとか、教科書の分別とか、1日中ポスターを丸めるとか。役者を続けたいからこそ、芝居以外のことにも触れようと」。
自分自身を模索するなか、立った舞台が転機へとつながっていった。
「『まゆをひそめて、僕を笑って』という、加藤拓也さん作・演出の恋愛劇でした。そこで自分をさらけ出すことができた。観てくれた方々にも、それまでの福田麻由子ではなく、恋愛をしているひとりの女性ジュリアとして観てもらえた感覚があったんです。その辺から、徐々に子役から、ひとりの役者へと自分自身の意識も変わっていったのだと思います」。
そうして『ラ』で、「すべてを捧げた」ゆかりと出会う。
「どっぷり浸かってみて、でも私、大丈夫だと思えた。
私は本当にお芝居が好き。そこはずっと変わっていません。変に自分を客観的に見始めて、芝居自体ができなくなってしまった時期もありましたが、とにかく自分の好きなように、余計なことは考えずにやってみようとやったら、そのほうが自分にも周りにも還元できるものが多かった。頑張りたいという気持ちだけで空回りしていたのが、どこに力を入れたらいいのか、見えてきた感じがあります」。
吹っ切れたように柔らかな笑みを浮かべる福田。その女優人生は、これまでの20年を経て、これからの20年、そしてさらに先へと、続いていく。(取材・文・写真:望月ふみ)
映画『ラ』は全国公開中。
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