【写真】細田佳央太&関水渚、フレッシュな2人
細田と関水が演じるのは、特別な取り柄もなく見た目も目立たないが、周囲のすべての人を分け隔てなく愛することのできる“人が大好きな”町田くんと、“人が大嫌い”な猪原さん。2人の出会いは“初めての感情”を生み、やがて周囲を巻き込みながら奇跡を起こす。
共に演技経験がほとんどない2人は、1ヵ月以上を、石井監督との演技レッスンに費やしてからクランクインを迎えたが、撮影前も撮影中も、石井監督は「ずっと厳しかった。何度もダメ出しされた」と声をそろえる。
「もちろん愛のある厳しさですけど、僕がすごく印象に残っているのは、関水さんと一緒のお芝居もあった最後のオーディションのときのことです。その場で町田くんに決まったのですが、監督から『手を抜くなよ』と真顔で言われて。その瞬間に僕の中でスイッチが入りました」と細田。
関水は、もともと石井監督と原作コミック、両方のファンだったこともあり、回数を重ねた本作オーディションの初回で、石井監督を前に自己紹介を始めたと同時に、感極まって泣き出してしまったのだとか。「引くくらいの大泣きでした」と苦笑いの関水が、特に印象に残っているのは撮影初日。
「カメラがたくさんあって、人が大勢見ている中で初めて演技をするということで、めちゃくちゃ緊張してしまって、小さくなっていたんです。見かねた監督に、『堂々としていないと負けちゃうよ』と言われて。
撮影中も緊張は続いたが、先輩たちが優しく接してくれたと感謝する。
細田は「岩田さんや太賀さんは、いっぱいいっぱいになっている僕に、『学校はどうなの?』と話しかけてくださったりして、緊張していた糸をほぐしてくださいました」と振り返る。また、芝居を通じての刺激も。「池松さんと2人でのシーンがあったんです。そのときに『お芝居って楽しい!』と思えました」。
関水も「皆さん、気さくに話しかけてくれました」と感謝するが、中でも、もともとアイドルが好きだという関水にとって前田との共演は特別だった。「アイドル時代の活躍もそうですし、映画にも好きな作品に出ていらして、憧れでした。ずっと楽しくお話してくださって、前田さんとお芝居させていただいたときが、一番心が楽になりました」と振り返り、さらにはこんなエピソードを教えてくれた。
「『すごく日焼けしやすいんです』というお話をしたら、『じゃあ、日焼け止めを持ってきてあげる』と言って、翌日に、前田さんが自分のために買ったものを私にくださったんです! 本当に優しくて。前田さんと高畑さんと3人でのシーンもあったのですが、おふたりが仲間に入れてお話してくださって、本当にうれしかったです」。
映画デビュー作で監督にも共演者にも、作品にも恵まれた2人。
これまでに多少の演技経験はあった細田は、今回、「お芝居の自由さを知った」といい、演技レッスンすら受けたことのなかった関水は「たくさん怒られましたし、大変でしたが、本当に楽しかった。『町田くんの世界』をやれたことでちょっと強くなれたかなと思います」と笑顔に。大きく羽ばたいていくに違いない2人のこれからが楽しみだ。(取材・文・写真:望月ふみ)
映画『町田くんの世界』は全国公開中。