『アイアンマン』シリーズのジョン・ファヴロー監督がメガホンをとり、ともにグラミー賞受賞のアーティスト、ドナルド・グローヴァーとビヨンセがボイスキャストに名を連ねることでも話題の超実写版『ライオン・キング』の字幕版を、声優、俳優、歌手として活躍中の小野賢章が観賞。『黒子のバスケ』『ジョジョの奇妙な冒険』など人気声優のイメージが強い小野だが、子役出身で劇団四季の『ライオン・キング』ではヤングシンバを演じた経験も! そんな小野ならではの感想を聞いた。


【写真】超実写版『ライオン・キング』場面写真

 「僕、あまのじゃくなんです。『超実写版っていうウリだけど、それってどんなものなの?いろいろ言ってもやっぱりCGっぽいんでしょ?』と、斜に構えながら観始めたんです」と笑う小野だが、「いや、すごかったです、『超実写版』の意味がよくわかりました!」と脱帽する。

 「『サークル・オブ・ライフ』の曲が始まるあのオープニング。知ってる音楽だけど、やっぱり感動するってすごいですよね。気持ちよく映画の世界に入っていけました。そこに、革新的な映像も加わるのだから没入感が凄まじい。まず景色が実景にしか見えない。動物たちも毛並や仕草が本当にリアル。アニメのようなキャラクター感がいい意味でなくなっていて、実際にサバンナで起こっている出来事を体験している気分になりました。動物たちの表情もすごく繊細で、ちゃんと気持ちが伝わってくるんです」

 子ライオンの可愛さにやられたとも。

 「質感とか重量感ともリアルですし、子ライオンはちょっと動きが遅かったりするんです。そしてとにかく、可愛い!! 僕、猫を飼ってるんですけど、『一緒に飼いたい!!』って思うくらい子ライオンたちが可愛かった(笑)。
掲げられたときの足の感じとかね。ひとつひとつ作っているわけでしょう? 観る前もCG?と思ってましたけど、観終わっても信じられません」と興奮が止まらない。

 声優のイメージの強い小野だが、子どもの頃に劇団四季のミュージカルでヤングシンバを演じていた経験を持つ。「やっぱり懐かしい」と感慨深げな様子も。

 「僕がヤングシンバを演じていたのは小学校5年生から中学1年生くらいまでだったので、とにかく楽しかったという記憶です。でもオーディションに受かってからデビューまで、すごく時間がかかったので、そこは苦しかったですね。僕の芸能活動のベースは間違いなく、そのころに出来たと思います」

 そして、楽曲に関して、歌っていた側ならではの感想を語った。

 「フェイク(※歌唱における自己流アレンジ)が入りまくりで驚きました。本当に自由。その自由さが、動物たちの躍動感にも繋がっていて、またいい。僕が舞台で歌っていたときには、台本通りにきっちり歌うというのが鉄則でしたし、フェイクなんて考えたこともなかったですが、これだけ自由にのびのびと上手く歌えたら楽しいだろうなと思いました。挿入曲の『早く王様になりたい』なんて、僕も何回歌ったか分からないくらいで、当時は『自分が最強だ!』と思って歌っていましたが、今回のヤングシンバのボイスキャストの方も、まだ若い子ですよね。
いやー、世界は広い。めちゃくちゃ上手いですし、とにかく自由で、役者としても勉強になる歌い方でした」

 あらためて、『サークル・オブ・ライフ』のメッセージの深さを感じたという。

「象徴的な曲ですし、これぞ『ライオン・キング』だと感じます。親の愛情、家族の繋がり、そして命に対するリスペクト。セリフにも『命の輪』という言葉が出てきますが、僕らの生きている世界は、いろんなことが巡っている。とても響きますね」

 最後に、楽しみにしている観客にメッセージ。

 「映像に関しては観てもらうのが一番です。百聞は一見にしかず。僕の言葉よりも、実際に劇場に来て観るのが一番。歌もアレンジが変わっていたりして、あらためて楽しめます。名作が『超名作』に進化したって感じですね。だけど一番重要なのは、やっぱり根底にある物語かな。
そこは25年経っても変わっていない部分で、変わっていなくてもやっぱり感動できて、大事なことがしっかり伝わってくる。『ライオン・キング』という作品が持っているパワーをあらためて感じました」。

(取材・文:望月ふみ 写真:中村好伸)
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