【写真】広瀬すず、大人メイクでしっとり…21歳の美しさを見せる撮り下ろしフォト(12枚)
■「いつか出られたらと思っていた」憧れの岩井ワールドに参加
『Love Letter』(1995)や『スワロウテイル』(1996)などで熱い支持を集める岩井監督だが、広瀬も「岩井監督の映画が大好きなんです。完全、ドストライク」と大ファンだったそう。「もっとお芝居をやりたいと思ったり、明日もがんばろうと思わせてくれたりする作品が多くて。繊細な美しさ、儚(はかな)さの中に力強さもあって、ズキュンとくる。唯一無二の世界観」と熱弁。岩井監督が初めて自身の出身地である宮城を舞台にした『ラストレター』に出演が決まり、「いつか出られたらと思っていましたが、まさか本当に叶うなんて」と喜びをあふれさせる。
『ラストレター』は、手紙の行き違いをきっかけに始まった2つの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の成長と再生を描く人間ドラマ。広瀬は、神木隆之介演じる鏡史郎が恋する女子高生の未咲と、未咲の面影を残す娘・鮎美の二役にトライした。
初恋をめぐるドラマの鍵となるのが、未咲による卒業式の答辞だ。未咲が体育館で答辞を読み上げるシーンは心を揺さぶる場面となっているが、「とても感情的になってしまって、最初は泣きすぎてしまったんです。監督から“自然に、普通に読んだ方がいい”と言われて、そちらが使われています」という。広瀬のどこか憂いを帯びたような“声”がノスタルジーを引き寄せるようで、その声も、観客を岩井ワールドへと誘う大きな役割を担っている。
■初舞台で声の表現に開眼 “声フェチ”野田秀樹も絶賛
『なつぞら』で共演した草刈正雄が『土曜スタジオパーク』に出演した際、広瀬に対し「声がセクシー」と絶賛するなど、彼女の声のファンを公言する人も多い。しかし、当の本人は「自分の声って、もともとはあまり好きじゃなかったんです」と告白する。「高すぎるなと感じて、ちょっとでも喉がつぶれてハスキーにならないかなと、毎日のように一人でカラオケに行って、4、5時間歌っていたことがあります(笑)。
昨年、演劇界を代表する鬼才・野田秀樹のもとで挑戦した初舞台『Q:A Night At The Kabuki』では、声の表現の面白さを一層、感じたという。「声で表現に変化をつけていたら、どんどん楽しくなってしまって。野田さんにも“ここの声はこうした方がいい”など、声についてたくさん指導していただきました。声の表現についてインプットできたので、映像のお仕事でもアウトプットしてみたい。早くいろいろやってみたいです! それこそ岩井監督のように淡い世界観を持つ作品では、繊細な声の表現もとても大事になると思います」と前のめりで打ち明けるが、野田からも「声がいい」とお褒めの言葉があったのだとか。
「野田さんは、ご自身でも“声フェチ部長”と言っていて(笑)。野田さんの舞台には、松たか子さんや宮沢りえさん、深津絵里さんなど、声がステキな女優さんが出られていて、周りからも“野田さんの舞台は、声がいい役者さんが多い”と聞きます。そんな野田さんにお声がけいただいて、本当にうれしかったです」。■オファーの絶えない今、作品選びの鍵は「嫉妬するかしないか」
「舞台の全65回公演もまったくつらくなかった。すごく楽しかった」と大きな笑顔を見せる。
シリアスからコミカルな役柄まで幅広い演技を披露し、確実に実力派女優として成長を遂げている広瀬。チャレンジし続ける原動力は、「嫉妬心」。たくさんのオファーが舞い込む中でも、「もし自分ではなくて、他の人がやったとしたら、嫉妬しちゃうと思うような役」に強烈に惹(ひ)かれてしまうという。「すごく大変そうな役でも、それは気になりません。周囲にそう言われたら、むしろやりたくなってしまうかも(笑)。これまでも、思い出すだけでもうれしくなるような作品に出させていただいたので、そう思えるような作品にもっともっと出会いたいなと思っています」。力強く限界を突破していく広瀬すずが、これからどのようなステージに進んでいくのか。大いに楽しみになった。(取材・文:成田おり枝 写真:松林満美)
映画『ラストレター』は全国公開中。