映画やドラマに引っ張りだこで、2022年放送のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも出演が決まるなど、若手の中でもひときわ強い存在感を放っている18歳の女優・南沙良。吉田修一のサスペンス小説を映画化した『太陽は動かない』では、心に傷を負った少女をみずみずしく演じている。
【写真】南沙良18歳 ツインテールのかわいすぎる姿も
■「運動は苦手ですが(笑) いつかアクションもやってみたい」
藤原竜也と竹内涼真が初共演を果たし、命懸けの任務に挑むエージェント役でバディとなる『太陽は動かない』。南は、藤原演じる鷹野の高校時代を描くパートに登場し、鷹野と特別な絆を育んでいく少女・詩織にふんしている。撮影が始まる前には、原作小説の『太陽は動かない』とその前日譚をつづる『森は知っている』を読み、「詩織と鷹野が出会う島の描写も美しくて、撮影が始まるのがすごく楽しみになりました」と胸を高鳴らせて飛び込んだという。
南は、役柄について「詩織は心に痛みを抱えていますが、とても芯の強い女の子」と分析する。「どう演じたらいいんだろうと悩みながら現場に入りましたが、羽住(英一郎)監督から“そのままでいいよ”と言っていただいて、その言葉を励みに演じました。私自身は内気で殻に閉じこもりがちな性格なので、詩織の凛(りん)とした強さに憧れる部分もあって。とても楽しく演じさせていただきました」としみじみ。
三重県鳥羽市の答志島での撮影も充実したものだったそう。「バイクの二人乗りをするシーンもあるのですが、それは初めての体験でした。景色もきれいで、ワクワクしました」と声を弾ませ、「完成作を観たら、スケールの大きな世界が描かれていて驚きました。
『幼な子われらに生まれ』(2017)で女優デビューを果たした南。演技初経験ながら、思春期の戸惑いや、いら立ちを見事に体現し、2018年の『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』では、吃音症に悩むヒロインを熱演。同作で第43回報知映画賞新人賞や第61回ブルーリボン賞新人賞を受賞するなど、“演技派”としてめきめきと頭角をあらわしている。
放送中のドラマ『六畳間のピアノマン』(NHK総合/毎週土曜21時、全4回)では、地下アイドルの女子高生・美咲を演じており、「美咲は自分のやりたいことと、自分のできることなど、ギャップに悩んでいる女の子。“自分の本当にしたいことって、なんだろう?”と考えるきっかけをくれるような役柄でした」と話すが、南自身は幼少期に抱いた「女優になりたい」という思いを強く持ち続けて、歩んできたという。
「幼稚園生くらいの頃には、すでに“女優さんになりたい”と周りに言っていたみたいで。“違う人になりたい”という憧れが強くて、女優さんはその願いをかなえられるお仕事なのかなと思いました」と述懐。その夢を実現させた今、作品を重ねるごとにあらゆる発見をしていると話す。
「『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』に出演して、実際に吃音を持っている方にお話を聞く機会もありました。
コンプレックスに感じているのは、どんな点だろうか? すると南は「人前で話すのが苦手で」と告白。「お芝居だと大丈夫なんですが、自分の考えを人前で発表する機会があると、言葉に詰まってしまったり、下を向いて言えなくなってしまったり、なかなか自分を出せないことが多くて。以前はそういう自分が嫌で仕方なかったんですが、今ではそれも“自分の一部なんだ”と思えるようになりました」と前を向く。
これまで、どこか陰のある役どころを見事に演じてきた。自身の性格については、「静かなほうだとは思います。よく周りの方から“暗そう”と言われるんですが、そんなことはないんですよ!」と楽しそうににっこり。
そんな彼女にとって、テンションが上がるのは「好きなアニメや推しを見たとき」なのだとか。キャラクターラッププロジェクト“ヒプノシスマイク”をアニメ化し、イケメンキャラによるラップバトルが人気の「『ヒプノシスマイク ‐Division Rap Battle‐』Rhyme Anima」がお気に入りだといい、「『ヒプノシスマイク』がすごく好きで、ライブにも行きました。そういうときは、“うわー!”と盛り上がります。
「『うつ病九段』(NHK BSプレミアム)というドラマに出演させていただいた時に、クランクアップの際、内田有紀さんから“沙良ちゃんは、そのままで大丈夫だよ”と言っていただいたことが、すごく励みになっていて。自分らしさも大切に、いろいろな引き出しを増やしていけたらうれしいです」と未来に思いを馳せていた。(取材・文:成田おり枝 写真:松林満美)
映画『太陽は動かない』は3月5日より全国公開。ドラマ『六畳間のピアノマン』はNHK総合にて2月27日21時放送(27日は最終回)。