映画『るろうに剣心』シリーズ最終章となる『るろうに剣心 最終章 The Final』と『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が、いよいよ公開となる。シリーズ1作目から主人公の剣心を当たり役として演じ続けてきた佐藤健は、「“剣心後”は、僕の役者人生の新章が始まる」と寂しさをかみ締めつつ、今後への強い覚悟を語る。

約10年にわたる旅の終着点を迎えた今、シリーズ史上最高というアクションシーンの秘密や、剣心との出会い、そして別れについて胸の内を明かした。

【写真】剣心役に感謝と別れ 佐藤健、インタビューフォト

■「これをやらなければ、人生を終えられない」

 和月伸宏の漫画『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』(集英社ジャンプコミックス刊)を大友啓史監督が実写化した本作。激動の幕末で“人斬り抜刀斎”として恐れられながら、新時代において大切な人たちを守るために生きる男、緋村剣心の戦いを描く。

 シリーズ最終章は、剣心の過去に深く関わる最恐の敵、縁(新田真剣佑)との戦いをつづる『The Final』、剣心の“十字傷の謎”と心の原点を明らかにする『The Beginning』の2部作として世に送り出される。佐藤は「最終章のエピソードをやらずに、人生を終えることはあり得ないと思っていた」と並々ならぬ思いを吐露。

 「『The Final』と『The Beginning』は関係し合っているエピソードなので、絶対に両方を描く必要があって。特に『The Beginning』は、僕も原作ファンとしてもっとも好きだった部分でもあり、剣心を演じる上で欠かせないエピソードです」と切り出し、「剣心は、基本的にはのんびりとした雰囲気の人なのに、どこか物悲しさがあって、敵に立ち向かうときには、狂気が顔をのぞかせてしまう危うさもあるキャラクター。“なぜそういう人になったのか?”“十字傷にはどのような意味があるのか?”というすべての謎に対するアンサーとなるエピソードになるので、これをやらなければ剣心を描いたことにならないと思っていました」と本作の重要性を説明する。

■“限界突破”し続けてきたシリーズ 原動力は「プライド。そしてファンの存在」

 最終章の製作が決定し、身震いするような気持ちがしたという佐藤。「相当、気合が入っていました」というのは、念願のエピソードであることに加え、重厚なドラマ性、革新的なアクションもシリーズを追うごとにレベルアップしてきた本シリーズだけに、その撮影が過酷なものとなるのは、目に見えていたからだ。

 大友監督をはじめ、スタッフ、キャストの誰もが常に高みを目指し、いわば“限界突破”し続けてきた。
佐藤はその原動力について、「プライド。そして楽しみに待っていてくださる方々の存在」と告白。「1作目では、これが自分にとっての勝負作になると思っていたし、僕自身この原作が大好きで“理想の剣心像に近づくために頑張ろう”という思いもありました。その後、2、3作目と作っていく中で、スタッフ、キャストのみんなが、このシリーズに対してプライドを持つようになっていったと思います。最終章もやると決めたからには、絶対にいいものを作らなければならない。“この作品で負けるわけにいかない”という気持ちが、それぞれの心にあったと思います」と熱っぽく語る。

 「そしてなにより、“待ってくれている人たちがいる”ということが、大きなモチベーションになります。最終章が完成した喜び、“これで終わるんだ”という寂しさも、ファンの方々と共有できたらうれしい」とファンの思いを胸に、走り続けてきた。■1作目からの驚くべき進化 シリーズ集大成のアクションに「悔いなし!」

 本シリーズの最大の見どころとなるのが、迫力のアクションシーン。佐藤は、剣心が使う“斬れない刀=逆刃刀”を使ったソードアクションとしては「できるすべてのことをやりました。悔いはありません」と自信をのぞかせる。

 さまざまなキャラクターが参戦したお祭り的なアクションもあり、さらに『The Final』のクライマックスにおける剣心と縁の戦いは、彼らの心のぶつかり合いの見えるドラマチックなアクションとして完成した。
佐藤は「縁との一騎打ちとなるアクションは、 『The Final』で一番悩んだシーン」だと明かす。「 『The Final』の最大のテーマは、剣心が縁とどのように向き合うかということ。縁とのアクションにおいて、“どうやって剣心の心を伝えていくのか”ということが、ものすごく大切でした。本番ギリギリまで、縁にどのような言葉をかけるべきなのか悩みましたし、剣心の心のありようについてずっと考えていました」。

 アクションの手数も膨大なものとなるが、「エモーショナルな部分に集中することができたのは、すごくよかった。それはアクション部との信頼関係や、これまでの積み重ねがあったからこそできたこと」と継続の重みを実感。

 思えば1作目でインタビューをした際、佐藤は「アクション部の方々に、手取り足取り教えていただいた」と話していた。それが本作では、「アクション部と話し合いながら、“ぬるいアクションになるくらいだったらカットしたほうがいい”という共通認識で、動きを決めていきました。シリーズを重ねながら、“これはきれいに決まる、これは決まりづらい”といったデータもできたし、今回はこれまでの反省点を生かして、かっこいいところだけ凝縮したアクションになっています。取捨選択がバンバンできた」と驚くべき進化を遂げた。「間違いなく、アクションのクオリティはこれまでで一番のものになったと自信を持って言えます」と語る姿が、なんとも頼もしい。

■剣心と出会えた幸せ 「剣心を胸に刻んで、囚(とら)われながら生きていく」

 1作目が公開されたのは、2012年のこと。
1989年生まれの佐藤は、まだ当時20代に突入したばかりだった。今年32歳となり、世代を代表する俳優となった彼だが「剣心と共に20代を歩んだからこそ、今の僕がある。この役と作品に出会わなかったら、今の僕はいない」とキッパリ。

 「剣心との旅は、僕の役者人生とニアリーイコールなものだと思います。1作目で主演を務めたときに、僕の新しい役者人生が始まったとも言える。剣心を演じてからは、いただける仕事の質も変わってきたし、周りの人たちも“剣心を演じた人”として僕を見るようになり、どこか剣心と比べられながら、歩んできた部分もあると思います」とその道のりを振り返る。

 剣心との出会いについて「ものすごく幸せで、本当に幸運なこと。関わるすべての人が人生をかけて奮闘する作品って、そんなにないと思うんです」と心を込めた彼にとって、剣心との別れも大きな意味を持つものとなる。

 「僕にとって、ものすごく大きな区切り。“剣心後”は、僕の役者人生のまた新しい章が始まる。これからは『るろうに剣心』に恥じないような仕事の仕方をしないといけないし、それを超えていかないといけないと思う。剣心以上に、人生をかけて挑めるものをやっていかないと意味がない。
そう言った意味では、剣心を胸に刻んで、剣心に囚われながら生きていく。それくらい、僕の役者人生にとって、大きな作品であり、役です」とまっすぐなまなざしで覚悟を語る。代表作を生み出した役者にとって、そこから戦いが始まるのは宿命でもある。『るろうに剣心』というすばらしいライバルに励まされ、佐藤健は力強い一歩を踏み出す。(取材・文:成田おり枝)

 映画『るろうに剣心 最終章 The Final』は4月23日より、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は6月4日より全国公開。

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