ベン・E・キングの歌う主題歌とともに甘酸っぱい過去の記憶が蘇る、不朽の名作『スタンド・バイ・ミー』が、今夜の金曜ロードショーにて本編ノーカット放送される。公開から35年の時を経て、子どもから大人になる前の一瞬をみずみずしく演じた子役たちは、今どうしているのか。

懐かしいキャラクターと共に振り返る。

【写真】『スタンド・バイ・ミー』子役たち、昔と今を写真で見る

 スティーヴン・キングの小説(英題『The Body(死体)』)を原作に、ロブ・ライナー監督が実写映画化した本作。1959年のアメリカの小さな田舎町を舞台に、12歳の少年4人組の2日間に渡る死体探しの冒険の旅が描かれる。今でも主題歌を耳にすると、どこまでも広がる青空の下、少年たちが線路の上を歩く情景が思い浮かぶ人は少なくないだろう。少年らしい短絡さで、死体を発見してヒーローになろうともくろむ彼ら、それぞれが抱える痛々しい心の傷が少しずつ明かされ、中学入学、進路選択を前に自分の人生と向き合う姿に胸が詰まる。

★ウィル・ウィートン(ゴーディ・ラチャンス役)

 主人公ゴーディは、運動は苦手だが文才があり、自作の物語で仲間を楽しませる少年。しかし、父のお気に入りだった優等生の兄が亡くなり、家では影の存在に。演じるのはウィル・ウィートン。本作の翌年から、大ヒットドラマ『新スタートレック』にウェスリー・クラッシャー役で出演。この役は、ゴーディ役とともに彼の代表作となり、『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』では、「スタートレックに出演した元名子役のウィル・ウィートン」役で出演している。またゲームに精通する彼は、演技の傍ら、ボードゲームを紹介する番組や、SFのトピックを伝える情報番組などを製作・出演。作家、ブロガーとしても活躍している。


★リヴァー・フェニックス(クリス・チェンバーズ役)

 ゴーディの親友で頼りになるリーダー、クリスは、劣悪な家庭環境ゆえに受ける差別に心を痛めている。演じるリヴァー・フェニックスは、本作でブレイクした後、ハリソン・フォードの少年時代を演じた『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』やガス・ヴァン・サント監督の『マイ・プライベート・アイダホ』などに出演し、正真正銘の若手スターに。『旅立ちの時』ではアカデミー賞にノミネートされた。しかし、その華々しい活躍もつかの間、1993年、23歳の時にナイトクラブ「ザ・ヴァイパー・ルーム」で薬物を大量摂取し急逝してしまう。それから25年以上経った2020年、死に立ち会った弟のホアキン・フェニックスが、リヴァーのなせなかったアカデミー賞受賞を果たす。受賞スピーチでは、「愛情をもって人を助けに駆けつけろ。そうすれば平和が付いてくる」というリヴァーの言葉が紹介された。彼は、昨年9月に誕生した長男にリヴァーと名付けている。

★コリー・フェルドマン(テディ・ドチャンプ役)

 クリス同様、複雑な家庭事情を抱え、挑発的で自滅的なテディ。演じるコリー・フェルドマンは、この時すでに、『グーニーズ』や『グレムリン』に出演し、子役としてキャリアを築いていた。この後も、『ロストボーイ』や『メイフィールドの怪人たち』などに出演し、人気子役スターの名をほしいままにする。しかし90年代になるとドラッグに溺れ、キャリアも低迷。
以後は紆余曲折を経て、今はリアリティ番組や声優など、コンスタントに仕事を続けており、『グーニーズ2』の企画も持ち上がっている。その一方で、子役仲間で親友だった故コリー・ハイムさんと共に、ティーンの頃に性的虐待を受けたことを告発。2020年にはこのことを題材にしたドキュメンタリー『My Truth(原題)』も製作している。★ジェリー・オコンネル(バーン・テシオ役)

 ぽっちゃりボディでお間抜け、いじられキャラのバーンを演じたのは、ジェリー・オコンネル。本作でスクリーンデビューを飾ったジェリーは、この後SFアドベンチャードラマ『スライダーズ(原題)』に主演するなど、コンスタントに映画やドラマで活躍している。ほんわかした雰囲気はどこへやら、今ではすっかり鍛え上げたイケメンに変身し、トム・クルーズ主演の『ザ・エージェント』やドラマ『ビリオンズ』などに出演。『ディフェンダーズ 闘う弁護士』や『セレブ探偵カーター』など、主演ドラマも多数ある。

★キーファー・サザーランド(エース・メリル役)

 不良グループのリーダー、エース・エメルを演じたのは、キーファー・サザーランド。ブロンドヘアを逆立てて、くわえタバコでバットを振り回す姿は印象的。彼はこの後、1990年公開の『フラットライナーズ』や『ア・フュー・グッドメン』、『三銃士』などに出演。2001年からは、世界中で爆発的な人気を得た『24 ‐TWENTY FOUR‐』でジャック・バウアーを演じ、再ブレイクを果たした。この役で、エミー賞、ゴールデン・グローブ賞、全米映画俳優組合賞などを受賞している。
その後も『サバイバー: 宿命の大統領』の大統領役が大ヒット。新作ドラマで再びスパイにふんすることも決定している。

★ジョン・キューザック(デニー・ラチャンス役)

 ゴーディの亡き兄、父から将来を嘱望されるアメフトのスター選手で、ゴーディの理解者でもあったデニー。演じるのはジョン・キューザック。80年代には、大きなラジカセを掲げるシーンが有名な『セイ・エニシング』や『シュア・シング』など青春映画で名を馳せた。その後も順調に出演を重ね、製作・脚本・主演を務めた『ハイ・フィデリティ』ではゴールデン・グローブ賞男優賞にノミネートされた。そのほか、『コン・エアー』、『マルコヴィッチの穴』、『2012』などに出演。昨年は、主演ドラマ『ユートピア ~悪のウイルス~ 』が配信されている。

 思春期の少年たちのひと夏の出来事をノスタルジックに描き、映画史に燦然(さんぜん)と輝く『スタンド・バイ・ミー』。この世を去ったリヴァー・フェニックスを含め、彼らは間違いなく輝いていた。あれから35年が経ち、演じた役柄それぞれの運命と、彼ら自身がたどったその後のアップダウンある人生を重ねると、映画を観た後にこみあげる思いがさらに強くなる。(文・寺井多恵)

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