『ブラック・ウィドウ』でスカーレット・ヨハンソン演じる主人公の“妹”エレーナを演じたフローレンス・ピュー。衝撃のフェスティバルスリラー『ミッドサマー』やオスカー候補入りした『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』、そして満を持して公開されたマーベル映画『ブラック・ウィドウ』と話題作に続々出演し、近年目を見張る活躍を見せている。

確かな演技力と力強いまなざし、そして類いまれなる存在感で熱い視線がそそがれている彼女に注目したい。

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●初めての演技の記憶は6歳

 フローレンスは、英オックスフォード出身の25歳。父はレストランチェーンを経営する実業家で、母はダンサー&ダンス教師。4人きょうだいで、姉のアラベラ・ギビンズは舞台女優、兄は人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』でトリスタン・マーテルを演じたトビー・セバスチャン。7歳年下の妹のラファエラ・ピューも子役としてデビューしている。

 小さな頃から人前で演技をするのが大好きで、6歳の時に学校の芝居でよぼよぼ歩き、アクセントの異なるヨークシャー訛りを堂々披露したのが、舞台に上がった初めての記憶だそう。ガーディアン紙のインタビューで、「この時初めて、舞台に立つことのパワーを知ったわ。『みんなが私を待っている。みんなが私の言うことに耳を傾け、私がみんなを完全にコントロールしている』と思ったのを覚えている。それは今でも同じ感覚よ。人が私の言葉に集中し、私が人の感情を操っているのを感じる」と話している。

●高校在学中に映画デビュー ダイエットを迫られる経験も

 その才能は早くも高校在学中に開花し、メイジー・ウィリアムズ共演の『フォーリング 少女たちのめざめ』(2014)で映画デビューを果たした。
続く『レディ・マクベス』(2016)では映画初主演を務め、19世紀イギリスを舞台に、嫁ぎ先で虐げられ、冷酷な復讐(ふくしゅう)を果たす若妻を演じ、英国インディペンデント映画賞で主演女優賞、イブニング・スタンダード英国映画賞ではブレイク・スルー・オブ・ザ・イヤー賞を受賞している。

 この少し前、彼女はオーディションのために初めて渡米し、そこで、ダイエットを迫られる経験をした。このドラマは実現しなかったが、彼女は教訓を得たそうだ。「ハリウッドでは、もし自分が何者かを大声で叫べば、気に入ってもらえる。でも、自分が誰か分らない状態で行くと、彼らの好きなようにされてしまう」「だから、自分が何者であるかを知るまで、(ハリウッドには)戻らないと決めた」。フローレンスの持ち味は、「決して屈しない」と言わんばかりの力強い視線と他を圧倒する存在感に加え、健康的なスタイルもその一つだろう。彼女は、『レディ・マクベス』で、細すぎない普通のボディサイズであること(ヌードを披露した)が評価されたのを機に、これこそ自分の強味だと意識したという。この経験ゆえか、彼女の演技には一貫して不屈の精神が見てとれる。

 その後、パク・チャヌク監督がテレビドラマを初めて手掛けた『リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ 』(2018)で、スパイに転身する女優の卵を演じ一躍スターに。同年公開されたNetflix映画『アウトロー・キング ~スコットランドの英雄~』(2018)では、スコットランド独立を率いたロバート1世の妻という、ともすればただの彩りになってしまう役柄を、強い意志と知性をもって演じ、ロバートの対等な同志に昇華させた。

 そして翌年は、言わずと知れた衝撃作『ミッドサマー』(2019)に主演、『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』(2019)では、シアーシャ・ローナンやエマ・ワトソン、名優メリル・ストリープと共演し、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされるまでになった。●恋人は21歳年上/ヘイターに断固抗議

 フローレンスのインスタグラムをのぞいてみると、オスカーノミネートを知った時の様子がシェアされている。
ベッドで裸で寝ていた彼女がスマートフォンで連絡を受け、大喜びでガッツポーズをしている。

 このプライベート感あふれる写真を撮影したと噂されるのが、交際中のザック・ブラフだ。彼はドラマ『scrubs ~恋のお騒がせ病棟』(2001~2004)で知られる俳優で、監督としても活躍中。現在25歳のフローレンスと、46歳のザック、歳の差はなんと21歳だ。

 ザックが監督し、フローレンスが主演した短編映画『In The Time It Takes to Get There(原題)』(2019)をきっかけに交際がスタートしたとされ、長く噂されていたものの、関係をオープンにしたのは昨年4月。ザックの誕生日に「今日はグレーの空よりももっと大きな笑顔になろう。4月6日、思いっきり祝うわよ! スペシャルな人、お誕生日おめでとう」とお祝いし、インスタグラムデビューを果たした。

 ところが、歳の差ゆえに、この投稿がヘイターたちから攻撃を受けてしまったようだ。この投稿のコメント欄は閉鎖され、後に彼女は動画を投稿。「人を攻撃したり、いじめたりする行為は、私のページでは許さない」「私は24歳の大人の女性で、誰を愛するべきか他人に指図されるいわれはない」とヘイターたちに断固抗議。「憎しみはもう流行(はや)らないよ」とコメントしている。

 また、The Sunday Times のインタビューでも、ザックとの交際に言及。
「たぶん人をいら立たせるのは、相手が期待していた人ではないからだと思う」とコメント。「でも私の人生だし、他人を喜ばせるためや、心地よい話題を提供するために行動したりしないわ」とぴしゃりと言ってのけた。

 先日は、ザックが『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』でエミー賞監督賞に見事ノミネートされるといううれしいニュースが飛び込んできた。彼女はインスタグラムストーリーにて、「イェーーーーイ! やったわ!」とこのニュースに大喜び。スクリーンで演じてきた役柄同様、決して屈したりしないのだ。

●オスカーノミネート再び?

 『ブラック・ウィドウ』で演じたエレーナ役は評価が高く、オスカーノミネートもささやかれはじめた。この後ドラマ『ホークアイ』で、エレーナを再演することが決まっているので、彼女の活躍をまた見ることができそうだ(映画を見たファンは大喜びだと思う)。また、ハリー・スタイルズやクリス・パインと共演のオリヴィア・ワイルド監督作『Don’t Worry Darling(原題)』や、ザックが監督を務める『A Good Person(原題)』も控えている。イギリスのインディペンデント映画から、ハリウッドの超大作へ活躍の場を広げ、今後ますます発言の機会も増えるだろう。スクリーンの中でも外でも、注目されそうだ。(文・寺井多恵)

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