令和の新しいホラー映像作家を発掘・支援すべく、日本初となるホラージャンルに絞ったフィルムコンペティション「日本ホラー映画大賞」の開催が決定。選考委員長を務めるホラー映画界の巨匠、清水崇監督は「新しい才能の登場は刺激になります」と期待たっぷり。
以前からホラー好きを公言しており、選考委員に抜てきされた女優の堀未央奈も「発見を楽しみたい」と目を輝かせる。2人に日本のホラー界を盛り上げる企画となる同大賞への思いを語り合ってもらうとともに、「今の私はホラーが作ってくれた」という堀があふれるほどのホラー愛を明かした。
【写真】「日本ホラー映画大賞」開催! 清水崇監督×堀未央奈がホラー対談
■“『リング』の中田” “『呪怨』の清水”だけじゃない! 新たな才能への期待
――清水監督は、「日本ホラー映画大賞」の選考委員長に就任されました。どのような才能の登場を待ち望みますか?
清水:“次なる世代の才能の育成”と言っても、ホラーの作り手になるには、ある種の独自のセンスが必要になるので、なかなか難しいものだなとは思うんです。ただ日本のホラーというと、“『リング』の中田秀夫、『呪怨』の清水崇”と言われるようなところがいまだにあって、“いや、もっといるはずだろう”と常に感じていて。“予算や規模の制限はあったとしても、この人が撮ったのをもっと観たい”と感じるような方もたくさんいます。“『呪怨』の清水になんて選ばれたくない”と思っている、尖っているような人こそが応募してきてくれたらとてもうれしいですし、そういった方の作品に出会えることを楽しみにしています。
ーーホラー好きである堀さん。選考委員に選ばれた気持ちをお聞かせください。
堀:身内や友人に“ホラー映画って、ただ怖いだけのものではないからぜひ観て!”と地道に進めてきた、いちホラーファンです(笑)。まさか、選考委員というすばらしい立場に選んでいただけるとは思ってもいませんでした。“今までと違う見せ方をしているな”“こういう恐怖もあるのか”という発見ができるのも、ホラー映画の魅力。
プレッシャーもありますが、そういった発見ができることを楽しみながら選考に臨みたいです。
■ホラー映画はすべてを取り入れることができるジャンル
ーー新たな発見があるところが、ホラー映画に感じる魅力なのですね。
堀:そう思います。また恋愛モノならば恋愛にフォーカスした物語が展開しますが、ホラーって、恋愛も友情も家族の物語も、すべてを取り入れることができるジャンルなのかなと感じています。だからこそ、たくさんの学びがある。私自身、ホラー映画を観て育ち、そこからいろいろなことを学んできたと思っています。私の今の人格は、ホラーが作ってくれたとも言えそうです(笑)。
ーー選考のポイントとなるのは、どのようなものになりそうでしょうか。
清水:真新しさでしょうか。あとはモンスターやお化けが映っているわけではないのに、“これはヤバいものが映っている”“何か宿っている”と感じるような空気感を演出しているものは、優れたホラー映画なのかなと思います。そういう空気って意図的に撮れるものでもないので、とても難しいものなんです。僕含め、誰もがその瞬間を目指して作っているものだと思います。
堀:私としては、日本の良さを生かしたホラー映画を観られたらうれしいなと思っています。ねっとり、じっとりしているのが、日本のホラー映画の良さなのかなと。そういう意味だと、私は清水監督の『呪怨』がトラウマなんです! じっとりとしていて、ものすごく怖かったです。カツラが人間になるシーンなど、脳裏に焼き付いているシーンがたくさんあります。
清水:いろいろなことに新鮮に反応するような年頃に観たんじゃないかな? そういう作品って、いつまでも怖いものとして自分の中に残っているんだよね。僕にとっては、野村芳太郎監督の『鬼畜』がそういう映画で。全然ホラー映画ではないんですが、じめっとした空気が宿っていて、子どもの頃に観た衝撃がいまだに残っています。■オススメのホラー映画、ベスト3は?
ーー堀さんにとって、ホラー映画にハマるきっかけとなった作品はありますか?
堀:『バタリアン』を観たときに、“ゾンビって怖いだけのものではないんだ”“笑えるホラー映画もあるんだ”と思って(笑)。そこからいろいろな作品を観るようになりました。ドラマ性を発見できるホラー映画も好きで、『レザーフェイス‐悪魔のいけにえ』を観たときは、映画館でワンワン泣いてしまいました。お母さんと観に行ったんですが、“殺人鬼を生んだのは環境だったんだ。悲しすぎる”と語り合っていました。
清水:お母さんと観に行ったんだ! 一緒にホラー映画を観に行く親子が増えてくれたら、ものすごくうれしいなあ。
ーーお二人のオススメのホラー映画、ベスト3を教えてください。
堀: M・ナイト・シャマラン監督の『ヴィジット』は、結末がまったくわからないし、ゲームのような感覚で楽しめるのでオススメです。楽しいホラー映画として、悪役が大集合する『ファンハウス』もいいですね。グロいシーンもあるので、気軽な気持ちで…とは言えないかもしれないですが、学園祭のような雰囲気もあって楽しいと思います。そして絶対に入れておきたいのが、『悪魔のいけにえ』。中学生の頃に観て、フィギュアを家に飾るくらいハマりました。エド・ゲインという殺人鬼をモデルにしている作品だと言われていますが、パソコンの授業で自分の好きなことについて調べるという時間があった際には、エド・ゲインについて調べていました。
清水:僕も『悪魔のいけにえ』は入ります。マスターフィルムがニューヨーク近代美術館に永久保存されているほどの名作ですからね。あと“怖い”という意味では、やはり先ほどお話しした『鬼畜』。野村芳太郎監督って、いい意味でどうかしているんですよ。
『震える舌』も『八つ墓村』もそうですが、ホラーじゃないのにホラー以上にヤバい映画を撮っている(笑)。あとは王道ですが、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』かな。あげればキリがないですが、『サイコ2』も好きですね。
■堀未央奈、お化け役もやってみたい!?
ーー堀さんは、ホラー映画に出演してみたいというお気持ちはありますか?
堀:やってみたいですね! 顔色が悪い方なので、お化け役だとしてもメイク時間がほぼかからないんじゃないかなと思います(笑)。
清水:あはは! 堀さんは『サレタガワのブルー』での不倫妻役も話題になっていましたが、またそれとも違ったクセのある、ヤバい役柄を演じてみてほしいですね。『エスター』のような雰囲気の作品とか!
堀:うれしいです! ぜひやってみたいです。
■清水崇監督、長編監督デビュー20周年を迎えて
ーー清水監督は、長編監督デビューして20周年となります。新しいホラー映画の担い手の登場は、刺激になりそうでしょうか。
清水:あれ? そうでしたっけ? 20年はとっくに過ぎてるはずですが…誰にも気づかれぬまま(笑)。いや、でも選考する側になるなんて、おこがましいようですが、身が引き締まるし、とても刺激になります。僕自身ホラー映画に感じる面白さが一層、深まってきています。そうか…もう20年も。
いまだに一年中、次はどのような呪いを描こうかと考えています。
(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
■「日本ホラー映画大賞」開催概要
応募期間:
2021年10月1日(金)10:00~2021年11月30日(火)23:59
応募資格:
プロ・アマチュアを問わず、年齢、性別、国籍などの制限なく、どなたでもご応募いただけます
対象作品:
実写映像作品 3分~90分程度の未発表・完全オリジナル新作
アニメーション映像作品 10秒~30分程度の未発表・完全オリジナル新作
応募方法等:詳しくは公式サイトをご覧ください
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