2001年にモーニング娘

5期メンバーとして加入した高橋愛。今年、芸能生活20周年を迎え、29日には20周年メモリアルブック『AI VERSARY』(宝島社)を発売する。グループがパフォーマンス力を高めた“プラチナ期”を支えたリーダーとしてファンから評価される高橋だが、同書のなかで「モーニング娘。時代は、ずっとネガティブだった」と語っている。そんな高橋に当時を振り返ってもらうとともに、グループ卒業から10年経った現在の気持ちの変化を聞いた。

【写真】アイドル時代と変わらぬ透明感とかわいさ! デビュー20周年・高橋愛の撮り下ろしカット

■自分を否定している方が心地良かったモーニング娘。時代

――20周年メモリアルブック『AI VERSARY』では、つんく♂さんや現在のリーダー・譜久村聖さん、さらに母・妹のご家族との対談とかなりのボリュームでご自身やグループのことをお話されています。なかでもグループ在籍中は「ずっとネガティブだった」とおっしゃっていたのが意外だったのですが、当時のことを教えてください。

高橋:加入前からテレビでオーディションの様子を見ていたので、甘くないというのはわかっていたのですが、いざ加入するとモーニング娘。という看板があまりにも大きくて、プレッシャーに負けてしまったんです。それで「自分に厳しくいなきゃいけない」とストイックになりすぎて、全部の物事を悪い方向に考えるようになってしまいました。

例えば、褒められることがあっても「いや、できてないです」って頑なに否定していましたし、「5期って、いつも一緒にいるよね」って言われたとしたら「固まっているから、個性がないって言われるんだ」って落ち込んでいました。
誰に何を言われたというわけではなく、勝手に自分で解釈をして勝手にマイナスに考えて…自分を否定している方が居心地が良かったんだろうと思います。

――自分を否定していると頑張れなくなる気もしますが…。

高橋:根本的に負けず嫌いだったので、自分を否定することで「よし! やるぞ」と奮い立たせていたんです。今思うとやり方が間違っていたとは思いますが、「あれはあれでいいか」って思ってる自分もいるんです。今回この本を出すにあたって、当時からお世話になっているスタッフの方やつんく♂さんとお話をさせていただきました。そのおかげで、今の私がネガティブだった当時の自分を客観的に見れるようになって、否定するのではなく受け入れられるようになりました。

――つんく♂さんとの対談でも、当時のことを答え合わせをしているような印象を受けました。高橋さんが特に印象深かったエピソードはなんでしょうか?

高橋:私をミニモニ。メンバーに選んだ理由が、つんく♂さんが私に用意してくれた課題だったと知って、おもしろいなと思いました。負けず嫌いではあるけど、「誰よりも前に出たい!」という欲がないというのを見抜かれていたんです。当時はよく「もっと前に出ろ」と言われていたのですが、その時は理解できず「立ち位置決まっているのに、前に出るってなに?」って(笑)。

――人気絶頂のミニモニ。
に矢口(真里)さんと入れ替わるかたちで加入しましたね。


高橋:身長150cm以下でもなく、子どもっぽくもなかったので「私が入ることでミニモニ。の良さをつぶしちゃうんじゃないか。5期ならガキ(新垣里沙)さんの方が向いているのに…」と勝手にネガティブに感じていました。

一方で、ミカさん、のんつぁん(辻希美)、あいぼん(加護亜依)というレベルが高く、アドリブを全力でやる3人の中で1人だけできないと悪目立ちしてしまうので、ぐっと気合を入れたのも、この時です。自分を追い込みすぎてつらそうな私を見て3人が「大丈夫だよ!」って励ましてくれたのは、ありがたかったですね。当時は「先輩にこんな風に言わせるなんて…」と、落ち込んでしまったんですけど(笑)。

――なるほど、ストイックすぎてネガティブループに…。

高橋:われながら不器用すぎて、かわいそうだなと思います。当時の自分に会えたら「何なの?」って言ってやりたいです(笑)。よく旦那(あべこうじ)さんが「思い込みは、重いゴミだ」っていうんですけど、当時の私は「こうじゃなきゃダメ」ばかり考えていて、まさしく頭の中がゴミだらけだったなと。■“引っ張った”のではなく、メンバーに助けられたプラチナ期

――その後、2007年6月にはモーニング娘。
のリーダーに就任しました。その時の心境をお聞かせください。


高橋:なった当初はものすごく悩んでいました。リーダーって、自分の中では叱ってくれたり導いてくれたりするイメージだったんですけど、自分はそういうタイプではなかったので。

でも、中澤(裕子)さんに「愛ちゃんらしくていいんだよ」って言っていただけたり、つんく♂さんがコンサートのMCも考えてくださるんですが、「アットホーム」なグループという言葉を入れてくれたりして、すごく救われたんです。考えてみれば、吉澤(ひとみ)さんは背中を見せていくタイプで、矢口さんはみんなで楽しみながらも、なにかあったら「話し合おうか」っていうタイプで、全然違ったよなって。「誰にもならなくていいんだ」って思えたら、少し楽になりました。

――高橋さんはプラチナ期をけん引したリーダーでしたが、ご自身ではどんなリーダーだったと振り返りますか。

高橋:引っ張ったとは、これっぽっちも思ってないです(笑)。私がいっぱいいっぱいになっていると、5期と6期が「もう! 愛ちゃん!」って助けてくれて。みんなで肩組んで「やっていこう!」という雰囲気でした。

当時、アイドルグループがどんどん登場して、私たちはテレビの露出が減ってしまって正直不安な空気が漂いました。
そんな時に、つんく♂さんに「今こそ自分たちのレベルを上げろ」と言われてから、ほかのグループと戦うというのではなく、ただ目の前の自分自身と戦っていました。

――パフォーマンスで魅せるという、現在のモーニング娘。の礎を築かれたのですね。

高橋:テレビに出る機会は減ったけど、コンサートをやればファンの方が変わらず来てくれていたので、昨日より今日、今日より明日って必死でしたね。今思えば、すごい空気でした。私たちもファンの方も一丸となって「みんなでこの空間を守ろう」って。

でもそうやっていくうちに「かっこよくいなきゃいけない」という思いが強くなりすぎて、メンバーに厳しくしてまったかも…。特にただでさえ文化や言葉が違うジュンジュンとリンリン(中国人留学生メンバー)にはもうちょっと楽しんでもらえたらよかったかなって反省もしています。9期が入ってきた時に「モーニング娘。ってこうだったな! いいじゃん、かっこよくなくったって! いろんなメンバーがいておもしろいよね!」って、本来の魅力に気づきました。

――高橋さんは今でも9期の皆さんとは交流されていますし、現役メンバーのこともよく知っている印象です。

高橋:9期は一緒に活動していた最後のメンバーだし、私を成長させてくれた存在でもあるので、今でも「なにかあったら言ってね?」ってくらい気になってしまいます。
現役メンバーに関しても、OG目線というよりファンですね(笑)。ほかの先輩やOGも、もちろん現役メンバーを気にしていると思いますが、私はライブをよく観に行ったりもしていて、モーニング娘。'21から目が離せないですね。■卒業後の変化 人生ゲームを楽しむように「動いてから考える」

――グループを卒業してもう10年になりますが、どんな心境でしたか? Tシャツとデニム姿での卒業セレモニーは印象的でしたね。

高橋:次の世代に続いていくためにも、卒業は大切なことだと思っていたので、ファンの方とメンバーに「モーニング娘。を頼んだ」と託した気持ちで未練はありませんでした。

卒業セレモニーのスタイルは、単純に小さい時からの天邪鬼が出ただけかも(笑)。途中のソロ曲でドレスを着ていたので、もう1回ドレスを来たら印象が薄れちゃうだろうし、誰もやっていなかったので、「私が最初にやってもいいんじゃん!」って。

――卒業後は、女性ファンが増えたように思います。

高橋:卒業後はファンのみなさんがそれまで見てきた“高橋愛”とは違った道だったかもしれませんが、新しい気持ちで自分の好きなことに挑戦させていただきました。特にブログやSNSでは、私みたいに身長が高くなくてもこんな洋服が着れるんだって思ってもらえたらいいなと、着ているファッションのアップを続けてきたのですが、たくさんの同性の方からフォローをしていただいて驚いています。

――最近コスメもプロデュースされていますね。


高橋:お話をいただいた時は「私にやらせていただけるんですか?」ってビックリしたんですけどとてもうれしかったです。一緒にアイディアを出してつくっていきましょうというスタンスでやらせていただいて、ファッショナブルでジェンダーレスに使えるアイテムというコンセプトでできあがりました。みなさん一人一人が輝くお手伝いができると思うと心が躍りますね。

――最後に、今後の目標を教えてください。

高橋:モーニング娘。時代はしっかり目標設定をして具現化させてきたのですが、今は先のことを考えて目指すよりも、今の自分がしたいことを聞いてあげた方がおもしろいなと思っています。決めすぎちゃうと狭い枠にいる気がしてしまうので。子どもの時から後先考えないで、動いてから考えるというのがベースにあるんです。

私、人生ゲームが好きなんですけど、今は人生ゲームのコマとして進んでいる気分なんです。世の中的にマイナスな状況ですが、それをどうやってプラスに変換できるか。1回きりの人生を、どれだけ楽しめるかってゲームしているみたい。モーニング娘。にいた当時もこうやって考えられていたら、もっとハッピーだったのにな(笑)。(取材・文:於ありさ 写真:ヨシダヤスシ)

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