吉高由里子が主演を務め、松下洸平、井浦新が共演するサスペンスラブストーリー『最愛』(TBS系/毎週金曜22時)。15年にわたる壮大なミステリーを盛り上げるのが、宇多田ヒカルによる主題歌「君に夢中」だ。

物語の世界観に没入していると、不意打ちのように流れる「君に夢中」のイントロで涙腺が崩壊した視聴者も多いのでは? ここでは、そんな「君に夢中」が彩った名場面の数々を振り返ってみよう。

【写真】宇多田ヒカルの歌声が彩った『最愛』名場面プレイバック

 本作の主題歌「君に夢中」は、新井順子プロデューサーの長年の夢がかない実現した、宇多田ヒカルによる書き下ろし作品。毎回、宇多田のエモーショナルな歌声が『最愛』の世界観に寄り添い、ストーリー展開、俳優陣の熱演と合わせて、視聴者の感情を大いに揺さぶる。

 出演者も「君に夢中」に刺激を受けているようで、「見てる人を巻き込んでくれる求心力のある、宇多田ヒカルさんの主題歌が中心にあるのも大きい」(吉高)、「『最愛』と『君に夢中』は絶対1セット。歌詞を見ていると、梨央や大輝、加瀬らメインで出てる登場人物みんなに当てはまるフレーズだなと思って。この歌から常にインスピレーションをもらっていますし、自分たちもどこでかかるのかって想像しながら撮るのも楽しくて」(松下)と語っている。

◆第1話 上京の日 大輝の力走を見つめ静かに手を振る梨央

 第1話では、2006年の岐阜県・白川郷が主な舞台に。父・達雄(光石研)の死後、東京で暮らす母・梓(薬師丸ひろ子)の元で暮らすことになった高校生の梨央(吉高)。彼女は、初恋の人・大輝(松下)にはあえて別れを告げないまま生まれ育った白川村を離れることを決意する。そして上京の日。梨央は弁護士の加瀬賢一郎(井浦)に連れられてタクシーで空港へ向かう。その道すがら、梨央は車内から全国駅伝大会に出場している大輝の姿を見守る。
走るタクシーの窓から大輝を見つめる梨央の横顔やタスキをかけて懸命に走る大輝の後ろ姿が映し出されたところで、「君に夢中」のイントロがスタート。主題歌が流れる中、梨央は歩道橋の上からレース中の大輝を見つめ、彼の背中に静かに手を振るのだった…。

◆第2話 不審な車につけられた梨央の腕を掴んで守る大輝

 白川村出身の渡辺昭(酒向芳)の遺体が都内の公園の池から発見された。第2話では15年前に突然の別れが訪れて以来、音信不通だった梨央と大輝が事件の重要参考人と事件を捜査する刑事として再会を果たしたシーンから始まる。会社の社長として製薬開発に取り組む梨央はある日の夜、不審な車に後をつけられる。加速した車が急接近してきたその時、梨央は腕を掴まれ路地へと引き込まれる。彼女を追っていた大輝が不審な車から梨央を守った瞬間に、主題歌が流れ始める。「話を聞きにきたんでしょ?」と問いかける梨央に、大輝は「できれば“友だち”として話したい…秘密は守る」と応える。ピアノのアルペジオと電子音が、梨央と大輝の間で高まっていく緊張感を表現しているようにも聞こえる。

◆第3話 「ずっとどうしとるんか…気になっとった」見つめ合う大輝と梨央

 第3話では、梨央が社長を務める「真田ウェルネス」に脅迫メールが届く。その後開催された事業説明会に、脅迫メールの送り主の男が警備員に変装して侵入。男から刃物で脅された梨央は、外へ連れ出されそうになるが、加瀬と大輝の行動によって助け出され、男は逮捕される。
男に切りつけられた加瀬が運び込まれた病院の待合で、言葉を交わす梨央と大輝。ベンチに座る梨央は疲れた表情でため息まじりに「ほんとに…友だちとして話せたらいいのに」とポツリ。そんな彼女を見つめる大輝の横顔が映し出されたところで「君に夢中」のイントロが流れ始める。そして大輝は梨央の隣に腰掛けると「ずっとどうしとるんか…気になっとった」と打ち明ける。その後、無言で見つめ合う2人の姿に、宇多田のハスキーな歌声が乗ることで、視聴者の胸キュンは加速していくことに。

◆第4話 梨央と優、9年ぶりの切ない再会

 第4話は、都内の公園で発見された渡辺昭の事件が大きく進展。事件現場付近の防犯カメラに映っていた若い男は、梨央の元から姿を消していた優(高橋文哉)だった。優は自分の犯行であることを証明する映像のありかを電話で大輝に伝える。同じ映像は梨央にもメールで送られる。さらにメールでビルの屋上へ呼び出された梨央。屋上にやってきた優の足元がスローモーションで映し出されたところで、主題歌が挿入。切ない旋律が流れる中、9年ぶりに梨央と再会した優は、自分が渡辺昭を殺害したことを告白する…。


◆第5話 父・達雄が大学院生殺害を告白

 警察が優の行方を追う中、梨央と優が故郷の白川村へ向かう姿が描かれた第5話。梨央と優は、たどり着いた大学の片隅で生前に父・達雄が残していたメッセージ映像を発見。その映像には、昭の息子・康介(朝井大智)を殺害し死体を埋めたと自供する様子が収められていた。生前の達雄は、康介ともみ合いになり腹を刺してしまった幼い優の罪を被ろうとしたのだ。映像を見た優は達雄の“嘘”に愕然としながら「刺したのは俺やぁ!」と告白。映像の中で証言を続ける達雄の姿に、主題歌のイントロが優しく重なる。優は駆けつけた大輝や警察によって、事件の重要参考人として連行されていく。

◆第6話 「もう会わんようにする」 梨央を追いかけ抱きしめる大輝

 重要参考人として警察の取り調べに応じていた優が、渡辺昭殺害を自供したことから傷害致死の疑いで逮捕される第6話。優の証言と遺体の発見現場が食い違っていたことや、優が現場を離れた後に昭が息を吹き返していたことが判明。さらに病気も考慮され優は不起訴となり釈放される。大輝が警察内部にいながらも優のために行動していたことを知った梨央。彼女は大輝を呼び出しつつも顔を合わせず、電話だけで「もう会わんようにする」と別れを切り出す。
梨央からの切ない申し出を聞いた大輝の複雑な表情が映し出されたところで主題歌のイントロがスタート。その後、近くの歩道橋で電話をする梨央を発見した大輝が彼女を追いかけ抱きしめる。楽曲の盛り上がりと、2人の感情の振幅がリンクしたような展開はトリハダもの。

◆第7話 「このままでええんか!」梨央と大輝を引き合わせる優

 第7話で大輝は捜査一課から生活安全課への異動を命じられる。一方、不起訴となった優は姉の梨央と一緒に暮らすことになり姉弟は新たな生活をスタートさせる。大輝と再会した優は、そこで大輝が異動させられたことを知る。梨央が大輝の異動を知らないことや、大輝自身が梨央について「もう会うこともないやろうし…」と寂しげにつぶやく姿を見た優は、2人を引き合わせることを決意する。夜、優に呼び出された大輝は、梨央と再び顔を合わせる。少し離れた場所から大輝と梨央が見つめ合う姿に、主題歌のイントロが重なる。帰ろうとする大輝。引き止めない梨央。優はそんな2人に「このままでええんか!」「逃げたってなんも変わんないぞ!」と言葉を浴びせる。
2人の幸せを心から願う優の言動と宇多田の歌声が相乗効果で涙を誘う。

◆第8話 「家族だと思ってる」加瀬が注ぐ梨央への無償の愛

 第8話では、真田ウェルネスに寄付金詐欺疑惑が浮上。そして専務の後藤(及川光博)が失踪する。不正の全容を解明するために梨央と加瀬は後藤が潜伏している海沿いの町を訪れる。後藤が隠れていた部屋で、残された大量の書類を精査する2人。母・梓が後藤1人の責任でことを済ませようとすることに失望する梨央。事件以降、次から次へとトラブルに見舞われる梨央は思わず「もう疲れた…」とポツリ。励ます加瀬に対して、梨央は「なんでいつも私の味方してくれるの…?私のことどう思ってるの?」と問いかける。これに加瀬は「家族だと思ってる」と返すと「幼い頃に家族を失ったつらさはわかるから…」と応える。加瀬のこの言葉をきっかけに流れるイントロ。主題歌にのせて描かれるのは、梨央への無償の愛を吐露する加瀬の姿だ。

◆第9話 「娘も真田家の人間も誓って殺人には関わっておりません」母・梓の覚悟

 物語も大詰めを迎えた第9話。
寄付金不正疑惑が大々的に報じられ、加えて梨央が殺人事件の重要参考人となったことまで暴露されてしまう。開発中の新薬が承認を得られるところまで漕ぎつけた梨央を守るため、梓は単独で記者会見を開き、疑惑がおおむね事実であることを認めつつも、全責任が自分にあること、この件に梨央が関与していないこと、そして梨央や真田家の人間は殺人事件に関わりがないことを明言する。梓が真剣な表情で「娘も真田家の人間も、誓って殺人には関わっておりません」と訴えると主題歌のイントロが聞こえてくる。梓が単身警察へ出頭しようとするシーンを、宇多田の歌声がよりエモーショナルに彩っていく。

 こうして振り返ってみると、どの場面も静かに優しく、でも感情を激しく揺さぶる、登場人物の覚悟や“最愛”が伝わってくるような名場面ばかり。いよいよ迎える最終回では、どんな場面で「君に夢中」が流れ始めるのか。『最愛』×「君に夢中」が織りなす世界観に浸りながらその時を待ちたい。(文:スズキヒロシ)
 
 『最愛』最終回は、TBS系にて12月17日22時放送。

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