メンバー個々もバラエティー界で大活躍のアイドルグループ・日向坂46。放送中の冠番組『日向坂で会いましょう』(テレビ東京/毎週日曜25時5分)などで見せる、彼女たちのバラエティー対応力には定評がある。

しかし、その力は一朝一夕で培われたものではない。けやき坂46時代の冠番組『ひらがな推し』(テレビ東京)での“成功”と“失敗”の経験を経て、今の彼女たちがある。当時から現在まで、バラエティーの現場でどんな苦労を味わってきたのか。『ひらがな推し』ブルーレイ第2弾の発売を機に、丹生明里松田好花、上村ひなのに振り返ってもらった。

【写真】けやき坂46時代の『ひらがな推し』を振り返った日向坂46・丹生明里、松田好花、上村ひなの

『ひらがな推し』は“学びの場” 3人が「爪痕を残した!」放送回は?

――ひらがなけやき(けやき坂46の愛称)時代、2018年~2019年の1年間にわたり放送されていた『ひらがな推し』は皆さんにとって初の冠バラエティー番組。その後、日向坂46への改名とともに現在放送中の『日向坂で会いましょう』へリニューアルされました。
『ひらがな推し』時代はどんな思いで収録に臨んでいましたか?


松田:ソロでのバラエティー出演もめったにない時期でしたし、自分たちの番組ではあるけど緊張感も強かったです。ファンの皆さんに、メンバーそれぞれ「どんなキャラクターか」と知っていただける場所でもあったし、気合いを入れて収録に臨んでいました。今の「ひなあい(『日向坂で会いましょう』の愛称)」でも姿勢は変わらないんですけど、頑張っていました。

丹生:みんなカッチカチだった(笑)。当時は今以上になかなかしゃべれなくて。企画で取り上げていただくと話せるんですけど、ひな壇での出番しかないときは一言も話せずに終わってしまう収録もありました。
発言するのは緊張していたけど、「ひなあい」も含めて年数を重ねるごとに慣れてきて。ひな壇からのガヤも一期生でキャプテンの(佐々木)久美さんを筆頭に、誰かが何か言ったとき「いやいや~」といったリアクションを取れるようになりました。

久美さんがガヤで頑張ってくれるから、私も頑張ろうと思って。自分たちで番組を盛り上げなきゃという意識も強くなりましたし、オンエアでカットされても今では『ひらがな推し』時代より動じなくなりました(笑)。

上村:私は途中から三期生として1人で加入(2018年11月)したので、最初の頃はずっと見ていた番組へ出演する緊張感もありました。MCのオードリーさんや先輩たちに囲まれながら、温かい雰囲気の中で少しずつ気持ちがほぐれていって。
自分にとっての学びの場で、今の「ひなあい」に生きている部分もあります。

――学んだこととは例えば?

上村:ちょっとスベってしまったときは、その後の対応が大事という考え方とか。とっさの一言でグンと面白くなるときもありますし、グループのバラエティー番組に出演していなかったら、学べなかったことがたくさんありました。

――今や、メンバー個々もバラエティー界で活躍する日向坂46。その基礎を番組で多く学んだというのが伝わってきました。『ひらがな推し』時代は慣れない中でもあったと思いますが、それでも自分なりに「爪痕を残した!」と思えた放送回を教えてください。


松田:オードリー・春日(俊彰)さんの進行で、漫画「キン肉マン」についての知識を披露した「『へのつっぱりはいらんですよ!』キン肉マンを習得しよう!」です。事前に資料をいただいて、テスト勉強のように楽しみながら準備していきました。学んだことを収録で生かせたし、そこで注目してくださったファンの方もいらっしゃったので。われながら、当時はよく頑張ったなと思います(笑)。

丹生:ファンの皆さんに「よかった」とおっしゃっていただいたのは「けやき坂46ぶりっこ選手権!」でした。放課後の教室で春日さんからの告白を促す演技で「シチュエーションすごくよかった」といろんな方におっしゃっていただいて。
脚本を担当し、告白された瞬間に流した音楽(supercell「君の知らない物語」)も自分で選びました。「ここでこの曲を流したらエモいだろうな」と、考えながら選んだのも楽しくて。当時は演技する機会もほぼなかったけど、たくさんの反響をいただいてうれしかったです。

上村:私はやっぱりスタジオ初登場だった「新メンバー 上村ひなのの事をみんなでもっと知ろう!」です。初登場なのに、なんと私1人にスポットライトを浴びせていただいて(笑)。先輩の皆さんも私をよく知らない頃でしたし、自己紹介ができてうれしかったです。
スタジオへ初めて入ったのもその回だったので「こうやってセットが作られているんだ」「こうやってカメラさんが撮ってくださるんだ」と、収録の様子を初めて知った場でもありました。当時披露した「ソーシャルマナー3級」のフレーズであったり、今でも反響をいただくのでインパクトが強かったのかなと思います。

慣れない中での『ひらがな推し』失敗談 ひな壇でガヤに強いメンバーは…

――『ひらがな推し』時代はバラエティー番組での経験も今よりは少なく、失敗もあったかと思います。正直、自分なりに「思いっきりスベってしまった…」など、覚えている放送回はありますか?

丹生:メンバーみんながひな壇の座布団に座り、大喜利へ挑戦した「ドキッ!ひらがなだらけの大喜利大会!」です。初挑戦の大喜利でフリップを出しても、ほかのみんなが「ふ~ん」みたいな…(笑)。回答を出しても「あぁ…」みたいなリアクションが多いときに「うわぁ…」とヘコんで。「全然おもしろいこと言えなかった」という気持ちをたくさん味わいました。

――当時の回答は覚えています?

丹生:何だったんだろう…。もう、全般的に。オンエアされていた自分の回答全部「面白くなかったな」って(苦笑)。

松田:オンエアで結果発表を見る感じなんです。私は大喜利のお題「けやき坂46におじいちゃんファンが急増した理由とは?」で、けやき坂46の曲「ひらがなで恋したい」をモジッて「おじさんで恋したいがリリースされる」と書いて。現場はシーンという感じでしたし、オードリーの若林(正恭)さんもモジッたことに気が付かなくて「あ、ハイ」みたいに流されてしまったんです(笑)。

でも、その後放送した「企画プレゼン大会」で「ひらがながっきょく うんどうかい」をプレゼンしたときに「ひらがなの曲名のボケをスルー」と若林さんに向けたネタとして生かせたし、失敗しても回収できるのが分かって。それがいいなと思いました。

――失敗ものちのフリにできるのは、心強いですね。丹生さんや松田さんが苦戦していた話が出ましたが、上村さんはいかがですか?

上村:目立って何か失敗した記憶はないですけど、何も発言できずに収録が終わってしまうときが多かったです。何か話題を振られても「はい」や「いいえ」としか言えなかったり。当時はまだ中学生でしたし、大人の方とどう話せばいいかも分からなかったです。まだまだですけど、最近になってようやく人間らしい会話ができるようになってきたかなって。「はい」と「いいえ」以外の形で、答えられるようになってきました。

――自分でも実感できるほど成長したんですね。ちなみに、今の「ひなあい」ではひな壇からのガヤも番組にとって欠かせない要素となっていますが、『ひらがな推し』時代は誰かがスベったときにフォローするなど、ひな壇の様子はどうでしたか?

丹生:例えば、先ほどの大喜利でもみんな自分にいっぱいいっぱいで。ほかのメンバーのネタを聞けてない感じだったのかなと思います。今は、スベったらスベったでいいと考えられるようになったし、若林さんも「勇気あるね~」とフォローしてくださるのがありがたいです。

――実際、今の「ひなあい」ではオンエアにならなかった場面でもガヤを積極的にやってるんでしょうか?

松田:やってます。特に…

丹生&松田:(声をそろえて)久美さんが(笑)。

松田:久美さんを筆頭に。常にしゃべっていると思います。

丹生:久美さんの隣の席になったとき「こんなにいっぱいしゃべっているんだ」と分かって。隣で乗っかって「そうだよ~」と自分も紛れ込むみたいな(笑)。そこで「こうしたらいいんだ」と学んできたし、久美さんの存在は大きいです。

松田:久美さんのすごさは『ひらがな推し』時代からだったと思います。流れの中で「誰か何かある?」となったとき、一期生の(加藤)史帆さんと共に先陣を切ってくださっていました。

春日の“ひいき”を丹生はどう感じている? 個別質問で分かった3人の本音

――グループの冠バラエティー番組で、皆さんの意外なキャラクターを知るときもあります。そこでお1人ずつ伺いたい質問もありまして。まず、上村さんといえば「いつでもどこでも変化球」がキャッチフレーズですが、最近の「ひなあい」を見ていると発言など丸くなった印象もあり…。個人的に最近の“変化球”の手応えは?

上村:え~、どうでしょう(笑)。でも以前より素を出せるようにはなりました。うまく笑えるようになったし、素を出せるようになったぶん、変なことをずっと言うのではなく時と場合による使い分けができるようになったかなって。グループ外で番組へ出演するときは自分の「変さ」を抑えめに、自分たちの「ひなあい」ではとがったことを言ってみるとか、使い分けられるようになりました。

――変なレベルをコントロールできると?

上村:いえいえ! そんなそんな…。ちょっとは意識して。「ひなあい」でのここぞという場面では、変なことを言おうと頑張っています(笑)。

――期待してます(笑)。続いて、丹生さんは番組内で春日さんからひいきされる場面も目立っていますよね。本音として、春日さんからのひいきをどう感じています?

丹生:すっごくうれしいです。春日さんが「にぶちゃ~ん♪」とテロップ上で表示されるように呼んでくださって。番組内でそうした立ち位置をいただけたのもありがたいです。「ひなあい」で番組愛称の呼び方を争った企画「ひなあいVSひなましょう いい加減白黒つけましょう!」でも、ドッジボール対決で「春日さん、ボールください」とボールをおねだりするやり取りができましたし。春日さんが私をひいきしてくださったからいろいろと派生するやり取りも生まれましたし、すごくありがたいです。

――カメラが回っていないときの春日さんはいかがですか?

丹生:回っていないところでの「にぶちゃ~ん♪」はないです(笑)。収録でのお気持ちは本当にうれしいし、私の今の悩みです。

松田&上村:(「悩み」という言葉に一瞬、キョトン)

丹生:あ、どんな反応したらいいんだろうって悩んじゃいます(笑)。

――なるほど(笑)。松田さんは昨年9月、オードリーさんがMCを務める『あちこちオードリー』(テレビ東京系/毎週水曜23時6分)に一期生の佐々木久美さんや潮紗理菜さん、上村さんと共にゲスト出演したとき、若林さんからバラエティー番組へのアドバイスを受けて号泣していましたね。アドバイスを受けてから、自分の中で変化はありましたか?

松田:ちゃんとできているかと言えば、はっきりとした手応えはまだないんです。でも、立ち居振る舞いに悩んでいた私に対する若林さんからの「思った通り出せばいいんですよ」という言葉は、心のどこかで意識していて。逆に考え過ぎて緊張するときもありますし、若林さんがおっしゃってくださったようにやりたいけど「どうしよう」と迷いもあります。

――どんなときに迷うんですか?

松田:ひな壇からのガヤで言葉を思い付くけど、ちょっと間を置くと次の話題に行ってしまうんです。迷っていると、置いていかれてしまって。「さっき言っておいた方がよかったな」と思わず、迷わず発言できる力が欲しいなと思っています。

――ちなみに。今回のインタビューでたびたび名前が挙がった佐々木久美さんは、どうされているんでしょう?

松田:迷いはないと思います(笑)。頭の回転がすごく早いし、さすがだなって。久美さんの発言が面白いから「ハハハ」と笑っちゃって、自分のガヤすら忘れることもあります。

丹生:(うんうん、とうなずく)

――丹生さんもだいぶ共感されていますね。

丹生:久美さんもですし、同期の(富田)鈴花もガヤのスピードが早すぎて。私も「今言いたいけど…」と心残りがたくさんあるんです。今年はそういうモヤモヤもなくせるように、「ここで言いたい!」と思う場面では勇気を出していきたいです。

――丹生さんから今年の目標が出ましたが、松田さんや上村さんはいかがですか?

松田:私も「行ける!」と思ったときの行動力を大事にしていきたいです。「ひなあい」は難しくて、ひな壇の座る位置によっても発言のしやすさが変わってくるんですよ。オードリーさんに近い位置だと声がすぐ届くのでパッと言えますけど、例えば、2列目の奥に座るときはけっこう勇気を出して大声を出さなきゃいけなくて。アクリル板も挟んでいるからよっぽど自信があるときしか発言できないと考えてしまうので、私も勇気を出していければと思います。

上村:私は自分のキャラクターとか立ち位置とか、まだまだ考えることは山積みだと思っていて。今の自分に合ったキャラクターや言い回しであったり、いろいろなことを考えながら目立つ活躍ができるよう頑張っていきたいです。

――ぼんやりでも、理想のキャラクター像は見えていますか?

上村:無理することはないと思うので。無理しないで自分の素に近いキャラクターを確立できるのがいいかなって。すごく難しいんですけど、頑張ります!(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:小川遼)

 『ひらがな推し』ブルーレイは全5タイトルは発売中。価格は各6050円(税込)。