「◯◯です。安田美沙子です~」

 最近、『しゃべくり007』(日本テレビ系)など、テレビでよく見るチュートリアル徳井義実のネタ。

目を細めて静かに微笑みながら、何か言った後に「安田美沙子です~」と付け加えるだけのものだが、それだけでネタになるのは、「あ、なんかちょっとわかる」「いや、そこまでじゃないだろ!」と視聴者が思い思いに共感したり、ツッコんだりできる芸(?)の粗さ・クオリティの低さにあると思う。

 それにしても、こんなネタが成立するのは、「安田美沙子のしゃべり方」が世間に浸透しているからということは大きい。安田美沙子がCMなどで関西弁を話す印象は確かにあるが、テレビに出ている関西人はたくさんいるのに、なぜ彼女だけがなんとなく引っかかるのか。

 その理由について、関西出身の週刊誌記者は「独特のエセ関西弁っぽさ」と指摘する。

「安田美沙子は京都育ちで、紛れもなく関西人なのに、CMやNHKの町レポなどをするときの話し方は、なぜかエセっぽく聞こえます。同じくホンモノの関西人なのにエセっぽく聞こえる藤原紀香などと同様ですね。
朝ドラ『カーネーション』出演時の関西弁は、岸和田弁で、むしろ本人の育った京都とはだいぶ違うのに、上手でした。おそらくCMやレポート仕事は、標準語の中にサービスとして京都を混ぜ込む“ビジネス京都弁”だから、エセっぽさが出るのでは?」

 「エセ関西弁っぽさ」って、どこに感じるもの? 関西人の編集者は言う。

「やっぱり発音・抑揚に出るんじゃないかと思います。慣れない人が真似しても、すぐ分かりますし。ちなみに、土屋アンナが防虫剤のコマーシャルで大阪のおっさんの真似してるのもかなり完成度高いけど、やっぱりエセだなーと思いましたよ。また、先日、石野真子がNHKのドラマで関西弁話してて、完璧だと思ったら、兵庫の人でした(笑)」

 ちなみに、安田美沙子は、もともと京都育ちだから「違和感がない。
エセっぽさは感じない」と言う。

「よく『関西弁』として全部一緒にされますが、京都と大阪では違うし、地域によってだけでもまったく違いますから。たとえば、大阪でも、海寄りの岸和田とか堺の言葉はえげつないし、山寄りはまた違う。奈良寄り、神戸寄りも違いますし」

 「世間がイメージする関西弁=吉本興業の芸人の言葉」になっているところはあるのかも? また、関西人の別の記者は言う。

「東京の人も、さすがに『なんでやねん!』とは言わないまでも、『~やろ!』『~や!』とか、『~やんけ』とか言う人、いますよね。語尾だけに使うパターン。
取り入れやすいからでしょうけど、ほかは全部標準語のイントネーションなのに語尾だけ装飾的に入れるから、エセっぽさが出るんだと思います」

 加えて、安田美沙子の場合は、スローペースのしゃべりで、「~や」とか、リアクション部分だけ「~なんやぁ~」というのが、「聞き取りやすい標準語に、わかりやすく京都弁の香りを混ぜるサービスではないか」という指摘だった。

 実は、さまざまな地域が舞台となるNHK朝ドラでも地域言葉が登場するが、現実とは異なる方言「朝ドラ方言」であるケースが多いと聞く。

 そう思うと、求められる「京都女性像」を部分的にちょこちょこ出しつつも、ベースは特定の色のない標準語にしている安田美沙子って、けっこうデキるタレントかも?