政治資金を使いネットオークションで美術品を買い漁っている疑いが報じられた東京都の舛添要一知事に、“美術品ロンダリング”のウワサがささやかれている。

 もともと美術品コレクターとして知られる舛添知事は、今回の疑惑追及でも美術品の多数購入を指摘され「海外交流や研究資料のため」と問題意識を見せなかったが、政界からは「80年代から多用されてきた美術品ロンダリングをやっている」というウワサが飛び交い、「隠し資産は10億円以上」と話す者もいる。



 フジテレビの『新報道2001』では5月15日、舛添知事が参院議員だった13年分の政治資金収支報告書にある「資料代」を調査したところ、ネットオークションの「ヤフオク!」で落札された絵画などの美術品が含まれていたと伝えた。

 取引には「ymasuzoe」というIDが使われ、出品者からは舛添知事の自宅に届けたという証言もあった。同IDの取引履歴では137人を相手に絵画や掛け軸、画集など214件の購入があった。これが報じられると、証拠を隠滅するかのように、途端にIDが削除されている。

 ある政界関係者は「政治資金を美術品に置き換えてしまえば、数字に表れない莫大な資産を作ることができるから、マネーロンダリング(資金洗浄)ならぬ美術品ロンダリングと呼んでいる」と、これが政界の裏技ではないかと見ている。

「海外の大物がやっている美術品ロンダリングは、本来動かしにくい巨額の金を美術品に代えて動かしたり、500万円もする高額な絵画を、出来レースのオークションを通じて1万円で落札させるなどして逃がしていくもの。
ただ、これはバブル後の日本では希少な高級品の行方が足の付きやすいケースだった。最近はそれに代わって、安めの美術品ロンダリングが生まれているんですよ。政治資金でモノを買って、こっそり私物にしてしまう“モノの横領”です。お金なら数字でバレてしまうところ、モノとして買ってしまえば購入品リストでもない限りその行方は不透明。大物のわりに公開資産の少ない政治家なんかは、金をモノに代えて資産を溜めこんでいます。美術品に詳しい舛添さんがそれを活用しないとは思えませんし、なにより舛添さんの政治資金は税金が原資の政党交付金への依存度が高いだけに厳しい批判を受けるのは当然ですよね」(同)

 実は過去、日本で巨額の美術品ロンダリング疑惑が持ち上がったことがあった。
アート市場で取引が活発なスイスの銀行関係者を通じた書類が流出し、筆者はそれを入手したことがある。リストには、日本有数の宗教団体の名前で、巨額の美術品が預けられていることが記されていた。一説には同団体の名誉会長が、宗教団体の非課税措置を受けられなかったモノを逃したかたちだったともいわれたが、あくまで民間組織のやっていることで、それ以上の追及はできないままだった。

 舛添知事の場合は、それとは違ったかたちの疑惑だが、これがただの財テクなのか、税金を使った横領の裏手口なのか、それともまったくのクリーンな売買なのかはわかっていない。ただ、これだけ多数の疑惑が浮上している中では、なお疑いの目を向けられるのは仕方ないところだ。

 ある週刊誌の記者によると「舛添さんは大臣やっていた08年ごろ、行きつけの神田の古書店で何十万円もする古い書物も買い漁っていて『とにかく○○円するやつがほしい』と、内容ではなく値段で購入を決めていたという話を聞いたことがあった」という。
「何百万」ではなく「何十万」程度の骨董品を集めるのが目立たぬ資産集めの手法だった可能性もある。

「何しろ舛添さんは政治家になる前、どの政治職が一番利権にまみれるかについて非常に詳しい学者で、そういうことを話すときはいつも笑顔だった。都知事になるのは長年の悲願だった人だし、予算の潤沢な東京都知事になるモチベーションは、一番おいしい思いができるのを知っていたからでは?」(前出政界関係者)

 移動や宿泊は世界的なロックスターさながらの贅沢さで、正月の家族旅行すら「会議」と称して経費計上していた都知事だけに、大量に抱え込んだ美術品を「海外交流のため」で済ますのは無理がある。舛添知事は、「会見で説明したとおり」とそれ以上の回答をしていないが、ネット上では知事に対する不満の声が高まるばかりだ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)