ひとつ当たれば、すぐにマネするのがテレビ業界。ここ数年は「散歩」が大流行だが、それに続く新たなブームが「居酒屋」だ。

なぜ居酒屋番組が、こんなに増えているのか?

 笑福亭鶴瓶の素人イジりが絶妙な『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK)、散歩番組の老舗中の老舗である『ぶらり途中下車の旅』(日本テレビ系)、有吉弘行が街行く人をイジる『正直さんぽ』(フジテレビ系)、『ちい散歩』『若大将のゆうゆう散歩』からシリーズとして続く高田純次の『じゅん散歩』(テレビ朝日系)、ゴールデンタイム1時間半という圧倒的なボリュームで迫る『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京系)……。

 チャンネルを替えれば芸能人が街をブラブラと歩いているが、昨今BSを中心に急速に勢力を拡大しているのが「居酒屋番組」だ。散歩番組は芸能人が街を歩くだけなら、居酒屋番組は酒を飲むだけ。テレビ業界に詳しい週刊誌記者が語る。

「ブームの発端は、BS-TBSで放送されている『吉田類の酒場放浪記』で間違いないでしょう。この番組は、“吉田類というオッサンが酒を飲んでいるだけ”というシュールな番組。
しかし、10年以上続いており、大みそかにはスペシャルまで放送される人気番組となりました。以降、居酒屋本を多数出している太田和の『太田和彦 ふらり旅 いい酒いい肴』(BS11)、『酒場放浪記』から派生した『おんな酒場放浪記』(BS-TBS)といった“無名の人が飲む番組”が制作され、好評を博したので、今度は“有名人が飲む番組”が登場。現在、きたろうの『夕焼け酒場』(同)、TOKIO・松岡昌宏の『二軒目どうする?~ツマミのハナシ~』(テレビ東京系)、新井浩文の『美しき酒呑みたち』(BSフジ)などがあり、『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)でも居酒屋トークの回があります。かつては、出演者がテレビで酒を飲むのはタブーでしたが、『酒場放浪記』をきっかけに『酒を飲んでもいいんだ』『なんでお酒を飲んじゃいけなかったんだ?』という認識になったようです」

「柳の下」を露骨に狙った番組作りは安直な気もしなくはないが、普段は“よそ行き”の姿で人前に登場する芸能人たちが酔っ払う姿を見られるのは、確かに面白い。しかも、それ以外のうまみもあるという。

「お察しの通り、居酒屋番組は制作費が非常に安く上がります。
もちろん居酒屋には事前にアポが取ってあり、店を借り切るようなこともないので、営業補償をする必要もありません。カメラに映る可能性があるお客さんにはきちんとその旨を確認しますが、出演者が写真撮影やサインなどに応じたりすれば、だいたいOKです。さらに、居酒屋番組は後々DVD化も期待できます。『酒場放浪記』のDVDはよく売れていて、海外転勤のサラリーマンなどが日本を懐かしむのにピッタリだという話も伝え聞いています。きたろうの『夕焼け酒場』もDVDになりました。制作費を抑えてDVDで儲けるというのが、昨今のテレビ業界のビジネスモデル。
まだまだ、こういった番組が増える可能性はありそうです」(テレビ業界関係者)

 テレビ欄が「散歩」と「居酒屋」だらけになる日も近いかも?