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 4月22日、老舗カメラ雑誌の月刊「カメラマン」(モーターマガジン社)の休刊が突如発表された。5月号(4月20日発売号)の発行が最後となり、今後のカメラ、写真の情報は発行元のモーターマガジン社が運営している「Webカメラマン』で発信していく予定だという。

 1978年に創刊された「カメラマン」は、新機種のレビューから高度な撮影テクニックの紹介まで、カメラ愛好家から長らく愛されてきた専門誌だった。それだけに、アマチュアだけでなくプロの写真家やカメラマンからも惜しむ声が多く上がっている。

 雑誌不況が叫ばれて久しい中、どの専門誌も同様だが、出版社は極限まで人件費を削り、経費をかけずに安いページ単価で誌面制作をして、なんとか毎号発行しているのが現状だ。カメラ誌でいえば、カメラメーカーから新機種を無料でレンタルして、その機能を細かく解説する記事を手練れのライターに安く発注したり、写真展などが近いプロカメラマンのパブ記事をグラビア展開したりすることで、なんとかページ数を確保してきた。

 その下支えをしてきたのが、カメラメーカーによる広告費だが、各社が宣伝費を渋る中で、じわりじわりと雑誌の体力を奪っていった。あるカメラ雑誌の編集者はこう嘆く。

「元々、カメラ雑誌はどこも広告依存度が高い構造になっていて、ほぼ『広告でもっている状態』なんです。だからこそ、実売部数が数千部なんていう商売が成り立ち、今でも写真雑誌が7~8誌も存在できていた。でも、コロナ以前からとにかくカメラが売れなくなり、新機種を発売しても月に数台しか売れないなんてざら。メーカーによっては、カメラ事業から撤退しようという動きもちらほら聞こえてくるほどです。もちろん広告費も前年比で50%以下なんてメーカーもあり、ここ2年くらいはどこも青息吐息でやってきた。黒字化できている雑誌なんてほとんどないんじゃないかな」

 かつてはカメラ業界の二大巨頭だったニコン、キャノンも一眼レフからミラーレスカメラへ移行する時代の流れについていけず、デジタルカメラ事業はかなり厳しい経営状況だ。

 大手でも苦しいのだから、富士フイルム、オリンパス、パナソニックなどは言わずもがな。唯一、ミラーレス機で先鞭をつけたソニーだけが気を吐くが、ソニーとて宣伝費を「雑誌」に向ける余裕はなく、徐々に自社メディアも含めたWEBに振り分ける傾向が顕著だという。ある業界関係者が言う。

「ニコンなんて組織がガタガタになっていて、半年ごとに幹部がガラっと変わるような異常事態です。キャノンの2019年12月の決算は、会社全体で49.9%減。一眼レフやミラーレスカメラを扱うイメージングシステム部門の不振が大きく足を引っ張りました。

コロナ禍の前でもこのような状況なのだから、『コロナ後』などどうなるか想像もしたくない。もはやメーカーに雑誌を支える余裕なんてまったくないのです」

 となれば、今後残されたカメラ誌はどうやって活路を見出していくのか。かつてのカー雑誌のように衰退の一途をたどってしまうのだろうか。前出の編集者はこう話す。

「最も売れている『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)ですら、今年の4月号からはジャニーズタレントのグラビアを掲載するなどして、生き残りに必死な様子が見て取れます。業界のプロからは『もう写真誌っていうよりはアイドル雑誌だね』なんて声も聞かれますが、背に腹は変えられないのでしょう。

いち早く新機種の詳細なレビューが読めると好評だった『CAPA』(学研プラス)もメーカーの体力が弱まっている今、どこまで持つかわかりません。『カメラマン』の休刊でドミノ倒しのように写真誌の休刊が続く可能性は、決して低くないと思います」

 日本の写真文化を絶やさないためにも、各雑誌の奮闘に期待したい。