活動休止が決定したNEWSの手越祐也ジャニーズの王道をいくアイドルとしてデビューしたはずの彼は、どうしてこうも落ちぶれてしまったのか? その軌跡を関係者の証言と共に追っていきたい。

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手越祐也

 26日、ジャニーズ事務所は手越の芸能活動休止を発表した。新型コロナウイルス感染拡大に伴い緊急事態宣言が発令中にもかかわらず、自宅に女性を連れ込み飲み会を催したことが『週刊文春』で報じられると、手越はジャニーズのチャリティー活動ユニット『Twenty★Twenty』から外され、実質的な謹慎処分となっていた。しかし、再び『文春オンライン』が六本木のラウンジで遊んでいる手越の姿をキャッチ。さすがに事務所も看過できなくなったのか、今回の「芸能活動休止」に相成ったわけだ。

 活動休止に際して、事務所から発表された文章は1000字を超えた長文で、そこにはジャニーズサイドの忸怩たる思いが滲んでいた。一部抜粋する。

「今回の出来事につきましては、ひとえに本人の自覚の欠如によるものではございますが、所属事務所といたしましては、本人に対して他の所属タレント以上に、仕事は個人で行うものではなく、関係してくださる多くの方々に対する配慮の上に成り立つため、行動には十分気を付けるよう、これまでに繰り返し伝えてまいりました。しかし、今日に至るまで本人に理解させることができず、ファンの皆様や関係者の皆様には大変申し訳なく、責任を感じております」(ジャニーズ公式ページより抜粋)

 一部の週刊誌報道では、3月半ば藤島ジュリー景子社長が手越を直々に呼び出して、自粛期間中の夜遊びは控えるようクギを刺していたというから、事務所としては裏切られた思いが強いのかもしれない。芸能記者A氏の話。

「そもそも最近のジャニーズは女性関係のスキャンダルには割と寛大。昔は熱愛報道が出ると無理やり別れさせるなんてこともしたみたいですが、最近はそうしたことも減ったと聞きます。ただ、手越の場合はだんだんと『女性スキャンダル』だけでは済まなくなってきた。

金塊強盗犯とのツーショット写真の流出や、安倍昭恵夫人との“桜を見る会”など、どう考えてもヤバい方向に転がり始めてしまった。そして極め付きが今回のコロナ禍の飲み会報道です。これまで散々手越を庇ってきた事務所ですが、今回ばかりはその責任を重く受けとめるしかない」

アフターSMAP世代の困難と俳優路線の挫折

 ジャニーズ事務所にはいまや大勢のタレントが所属しているため、中にはなかなかチャンスに恵まれないタレントもいる。しかし、手越の場合は違った。2002年に15歳でジャニーズ事務所に入所し、その10カ月後にはNEWSとしてデビュー。ジャニーズの場合、デビューまでに10年以上かかるタレントもおり、そう考えると手越のスピードデビューはエリート扱いであったといえるだろう。

 その後、05年ほぼ芝居経験がないにもかかわらず、重松清の小説を原作にした映画『疾走』の主演に抜擢され、ヒットには至らないものの、ベルリン国際映画祭などの映画祭にも出品されるなど、一定の評価を受けていた。これをきっかけに、手越は役者業に舵を切り、ドラマ『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ)、『しゃばけ』(フジテレビ)など、定期的に役者仕事をこなしてきた。しかし、どれもこれも大ヒットには到底及ばなかった。

 そんな矢先、転機となったのが07年からスタートした、バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)へのレギュラー出演だ。ジャニーズのタレントへのインタビューも行ってきたライターB氏はこう語る。

「00年代以降のジャニーズタレント、アフターSMAPの世代とでもいいましょうか、彼らは『ジャニーズたるもの歌とダンスだけではなく、芝居もバラエティも、全部できて当たり前』というような価値観の中で育てられてきたように思います。

世間的にも“SMAPのような”マルチに活動できるアイドルがより求められるようになった。

 手越くんは元々繊細な表現をする人で、歌や芝居などをやらせると光るものがあったと思います。しかし、ヒットが出ない以上、もっと武器を増やさなくてはいけないということで、『イッテQ!』というバラエティに挑戦することになった。そこで開花したのが『ジャニーズなのにチャラい』というキャラクターでした」

『イッテQ!』でも、スタート当初は存在感が薄かったが、「チャラいキャラ」を確立してからは、率先して体を張ったロケにも挑み、世間的な認知度も急上昇していった。しかし、このキャラクターがウケればウケるほど、芝居の仕事はままならなくなっていく。

「手越くんの『チャラいキャラ』は彼の最大ヒット作ともいえます。

しかしそのイメージが強烈がゆえに、ほかのキャラクターを演じることがだんだんと困難になっていったように思います。連続ドラマの出演は11年の『デカワンコ』(日テレ)で最後です。事実上、役者の路線は諦めてバラエティに全力投球していくようになりますが、しかし、結局それも『イッテQ!』のレギュラーのみで、SMAPの中居(正広)くんや関ジャニ∞の村上(信五)くんのように幅広いバラエティ番組で重宝されていたかというと、そうではありません」(前出のライターB氏)

 この頃から、チャラいキャラクターを強化していくかのように、スキャンダル報道が増えていった。13年には、元SKE48の鬼頭桃菜と「泥酔キス現場」が報じられ、翌年にはサッカー日本代表・内田篤人選手との「キャバクラ密会」、15年にはAKB48柏木由紀との「抱擁写真」と、ゴシップを量産。そしてこれらはすべて『イッテQ!』内でネタとして消費されていくのだった。中堅芸能事務所幹部C氏はこう語る。

「スキャンダルが出るたびに、『イッテQ!』でそれをイジり、笑いに変えてきましたよね。事務所は手越に『気をつけるように』と一応注意していたようだけど、かたやバラエティ番組ではスキャンダルそのものが笑いの種になり重宝されていた。つまり、手越に反省する余地などなかったのです。だって、スキャンダルがそのまま売り物になるんですからね。これはかなり歪な構造だと思います。しかも手越は20代の半ばからこれを続けてきた。目を覚ます暇も与えられず、抜け出せなくなっていたんでしょう。そう考えると事務所やテレビ局にも責任の一端があるのかなと……」

 スキャンダルが出るほどに「チャラいキャラ」が強化され、バラエティ番組で消費される──この繰り返しによって、スキャンダルモンスター・手越祐也が完成したわけだ。スキャンダルそのものがアイデンティティになってしまっては、改心のしようもない。それでも、アイドルとしてステージに立つ手越には違う魅力があったと、前出のライターB氏は語る。

「バラエティ的な『チャラいキャラ』を脱ぎすてることができる唯一の場所が、NEWSのコンサートだったと思います。ファンもコンサートでの手越くんが好きだから、日頃のゴシップには目をつぶれるという面もあった。彼は非常にグループのことを考えていたし、いつかは『チャラいキャラ』しかないという状況を打破して、ライブパフォーマンスを評価されたいという思いもあったはずです」(前出のライターB氏)

 しかし、そんな思いが叶う前に芸能活動休止という重い処分がくだってしまった。もちろん、緊急事態宣言下の夜遊びは褒められたものではない。しかし、芸能界で生き残るために「チャラいキャラ」を突き詰めた手越という“タレント”を作ったのは一体誰なのか? ジャニーズ事務所はタレント育成の根本を見直す必要があるのかもしれない。