村上宗隆(写真/Getty Imagesより)

 プロ野球の2024年シーズンは対戦がひと回りして、セ・パ両リーグとも混戦状態。まだ優勝の行方を占うには早いが、ひとつ明らかになったのは極端な投高打低だということだ。

各チームとも、まだ20試合程度を消化したにすぎないが、打撃ベスト10で3割を超えているのは、セ・リーグが4人で、パ・リーグはわずか3人(4月28日時点)。

「昨年はパ・リーグのホームラン王が26本、首位打者が.307と、稀(まれ)に見る低レベルでしたが、今年はその傾向がさらに顕著。昨年の時点では、投球の回転数が測れる機器が登場して投手がレベルアップしたことなどが理由としてあげられていましたが、今年はずばり『ボールが飛ばない』という指摘が多くなっています。中日の立浪和義監督は何度も『ボールが飛ばない』とボヤいていますし、2022年三冠王の村上宗隆(ヤクルト)も、18日の試合後に『打球速度と飛距離がちょっと比例していない』とコメント。現場の多くの人間が違和感を覚えているようです」(週刊誌スポーツ担当記者)

 ボールが飛ぼうが飛ぶまいが、特定の球団の成績が突出していないのなら条件は同じ。しかしロースコアの試合ばかりの状況に、ネットには、

「飛ばないボールまじでやめろ見ててつまらない」
「投高打低過ぎてつまらないね今年のプロ野球」
「やっぱ野球は点入る方が面白いよな」

といった声が寄せられている。

 プロ野球界では2011年、いわゆる「統一球」が採用されてホームラン数が激減したことがあったが、今年に関しては、ボールが変わったという公式アナウンスはない。また、ボールを提供しているスポーツ用品メーカー・ミズノは規格の変更を否定している。ただ、ボールが変わっていてもおかしくない事情はある。

「飛ばないボールを使う理由として、関係者の間でささやかれているのは“時短”です。野球は他のスポーツと比べて試合時間が長く、それが若者にウケない理由だという指摘がある。メジャーリーグは特に時短に熱心で、ピッチクロックを導入して一気に平均試合時間を20分以上縮めることに成功しました。

しかし、日本ではピッチクロック導入に対して否定的な意見が多く、これはやりにくい。そこで“こっそりと”飛ばないボールを採用してみた可能性はあるでしょう」(前出・スポーツ担当記者)

 実際、今季の平均試合時間(9回試合のみ)は昨年より7分縮まり、3時間0分となっている。これを大きな進歩と見ることもできるが、この傾向は野手にとっては死活問題だ。

「選手の年俸は、チーム成績、個人成績、チームへの貢献度などで決まりますが、やはり大きいのは“数字”。“3割”“30本”“100打点”など、目安となる数字をクリアすれば、大幅アップが見込めますが、明らかにそのハードルが高くなっている状況でも、それは契約更改に反映されません。特にメジャー移籍を狙う打者は、数字が落ちるのは痛いでしょう。

村上や岡本和真(巨人)はメジャー移籍候補ですが、ただでさえ日本の長距離砲は評価されにくいのに、日本で30本前後しか打てなければ、メジャーの評価はさらに辛くなる。逆に投手は、防御率の低さを交渉材料にして年俸を大幅に上げる大チャンスですし、メジャー挑戦の旨味も大きいでしょうね」(フリーのスポーツライター)

 大谷翔平はメジャーでホームラン王を取り、吉田正尚や鈴木誠也もメジャーと巨額契約を結んだが、村上や岡本はビッグマネーを取り逃してしまう可能性も出てきた。こうなるとデメリットばかりが目に付くが、この傾向は続くのか?

「ロースコアの試合が続くようなら、盗塁やバント、守備がとても大事になってくる。しかし、選手はもちろん、観る側にとっても野球の華はホームラン。安売りするのはご法度ですが、試合がつまらなくてファンが減るようでは身も蓋もありません。それでなくても日本の野球は競技人口がどんどん減っており、存亡の危機といっても過言ではない。

10年ほど前の統一球導入の際も、数年後には適正な数字に戻りましたから、自然と落ち着くところに落ち着くでしょう」(同上)

 メジャーの広い球場でホームランを打ちまくる大谷は、この状況をどう見るか。