会場の女性ファンは、結構多く3~4割ぐらいの印象。ジャニコンでの男性率はまず1割に満たないことを思うと、かなり多めだ。女性ファンの方が全体的に年齢層は低めか。胸に「10」とか「12」とか数字の書かれた色違いのカラーTシャツを着ているファンも多い。
今回は2階席で参戦。開演直前を告げるアナウンスとともに、会場のあちこちで、ファンがメンバーの名前を大声で叫んだり、ストレッチを始めたりする……ストレッチって!?
OVERTUREとともに、ますます大きくなる歓声、そして客席を埋め尽くすペンライトの光。そう、ハロコンも、ペンライト文化である。
一方で、ハロコンには、うちわ文化がない。メンバーの顔写真の印刷された公式うちわや、「バーンして」「じゃんけんして」などなど、ファンサを求めるうちわを掲げる、ジャニーズでおなじみの光景はそこにはない。
そんなことを思いながら眺めていたら、1曲目、最新シングル「BRAND NEW MORNING」のイントロが。それとともに、段差のあるステージ上段に、スクッと立つ2人のメンバーのシルエット。逆光にうかぶシルエットがやたらカッコよく見える。新加入したばかりの13期メンバー、加賀楓と横山玲奈だ。
真っ赤なスパンコールのド派手な衣装で、「新時代の幕開け!」と高らかに宣言し、歌い、踊る。現在のモーニング娘。’17の一番の武器は、大人数を生かしたフォーメーションダンス。キレのいい動きとギラピカの衣装で次々入れ替わるメンバーたち。2階席ということで、フォーメーションの動きを上から見られるのがまた楽しい。
近年のモーニング娘。は、いわゆるEDM系の曲が多く、激しいリズムに合わせて踊りまくるものが多い。感覚的にはJUMPやKis-My-Ft2に近いだろうか。
ここぞというところのソロパートで出てくる小田さくらの存在感。そして、リーダー・譜久村聖の安定感。モーニング娘。’17はダンスだけじゃなく、歌ウマメンバーだらけ、で声量もある。ジャニーズだと、誰かしら「アレ?」ってなったり面白ボイスだったりするメンバーが大抵いるのに。しかも、これだけ踊って生歌がブレないのもすごい。
現在のハロプロアイドルは、研修生時代から歌とダンスをみっちり特訓し、いわば“ハローズJr.”として基礎を作り上げた状態でデビューする流れが多い。入所半年でいきなりデビューといった例はなかなかなさそうだ。そう思うと、次の原石は誰なのか、ジャニーズJr.を見るように研修生もチェックしたくなってくる。
そして、ステージはすごいが、カッコよさの中にどこかトンチキな世界観があったりする。この“カッコいいトンチキ”は、他アイドルファンよりも、ジャニーズファンだからこそすぐなじめるのかもしれない。以前、ハロプロファンの女子大生に聞いた、「ジャニーズと兼任のファンも結構いるんですよ」という話が、よく理解できた。
会場のファンも、踊りまくるメンバーに負けじと、ペンライトを手に、踊る、踊る。ジャニコンでも、振りマネしたりすることはあるが、ハロヲタは、かなり全力度が高い。全身で、全力。メンバーと同じフリを、踊る、踊る。男性ファンは汗だくだ。オペラグラスで熱心にステージを見る女性ファンもいるが、「メンバーを見てないの?」というぐらい男性は踊る。これにより、メンバーとの一体感が生まれるのだろうか。
今回の席の周囲にはそんな“熱い系”ファンが多く、プロ野球観戦で外野席の私設応援団の中に混ざっているかのような、「なんだかわかんないけど楽しい」的な雰囲気がある。
曲に合わせた「ウリャ」「オイ!」とかの掛け声も、ジャニコンにはあまりないお作法(ジャニは「キャー」とか「ギャー」とかの絶叫系だ)。掛け声に合わせて手を上げたりするそのテンポは、高速餅つきみたいだ。あと、メンバー同士でくっついたりするときの「キャー」も、ない。そこはあまり興味がわかない部分なのだろうか。「恋愛レボリューション21」や「モーニングコーヒー」など、ところどころ、往年の大ヒット曲も挟まれるが、最新のアレンジで最新のメンバーにアップデートされているところにも、新鮮な発見がある。なんとなく、原曲の“カッコいいカバー”バージョンを見ているみたいだ。
モーニング娘。は、ジャニーズと違い、卒業と新加入を繰り返しながら歴史を紡いでいくグループだ。代々続く老舗ののれん、変わらぬ味・秘伝のタレ的なものを守りながらも、時代に合わせたメニューも出すような感じ。ジャニーズでは、そのスタイルはなかなか受け入れられにくいかもしれない。
メンバー紹介曲でもある「女子かしまし物語」は、辻希美・加護亜依、道重さゆみなどがいた時代の曲だが、これも現メンバー版で歌われる。このとき、モニター3面ぶんに映像と文字情報が次々映し出され、ジャニーズだとメンバーが外周などに分散したり、大量のJr.が出てきたときなんかの「目が忙しくなる」状態にちょっと近い(ちなみに研修生はバックで踊っていない)。
ジャニーズにあって、ここになかったものもある。ロック風のアップテンポ曲で客席をあおったりもあるが、手を振ったり投げチュー的な、いわゆる“ファンサ”はほぼしない。ひたすら見せる、見てもらう意識が感じられ、ストイックさがある。ファンサは握手会などでしているのだろうし。
ジャニーズ名物のフライングもない。エンディングの「俺たちが~」「WE ARE~」的な掛け声も、ない。ジャニーズとハロプロ。似てるところ、違うところ、いろいろ感じながらの、あっという間の2時間。
今度はちょっとぐらい踊ってみるか、1階席だと雰囲気はどうなのか、別のハロプログループのステージはどんな感じなのか。そんなことを思いながら、入口でもらったチラシのファンクラブ入会の案内をあらためて眺めてみた。
(太田サトル)