今年上半期、北朝鮮・慈江道(チャガンド)内の軍需工場で発生した「反革命的行為」に対して、国家保衛省が超強硬な対応に乗り出したと伝えられている。
6月26日、デイリーNKの慈江道の情報筋によると、慈江道保衛局が今月20日に国家保衛省に提出した「2025年上半期 道内軍需工業部門反革命分子事件処理報告書」の主な内容が、軍需工場の保衛部関係者の家族を通じて地域に広まり、大きな衝撃を与えているという。
報告書の内容によると、江界(カンゲ)市・城間(ソンガン)郡・熙川(ヒチョン)市・満浦(マンポ)市などにある軍需工場で、今年上半期の間に合計23人が処刑されたり、政治犯収容所に送られたり、無期懲役を言い渡された。中には家族まで連座制で追放されるという処罰を受けたケースもあった。
報告書には、それぞれの事件の詳細や処罰対象者の個人情報、適用された法律条項、捜査・予審・裁判の過程などが詳しく記録されているという。
情報筋は「今回の処罰は国家保衛省の承認を受けた道保衛局が単独で主導し、秘密裏に進行した」と述べている。中央の直接的な承認のもとで徹底的に企画された処罰だったという。
今回の処罰の直接的な背景には、金正恩総書記が今年3~4月にわたって言及した「反党・反革命的要素を徹底的に制圧せよとの方針」があったとされる。慈江道の軍需工業部門が第1次検閲の対象に選ばれ、道保衛局が組織的に検閲を進め、国家保衛省にのみ報告したという。
ちなみに慈江道は、軍需工場が集中していることで知られる。
検閲では、外部情報の流入・拡散、韓国の映像コンテンツを保存した媒体の大量所持、デマの流布、業績の虚偽報告、物資の横領、私的利益のための物々交換などの問題行為が摘発された。また、ある幹部は「党の軍需工業政策を信じられない」と発言しただけで処罰の対象となった。
このような報告書の内容が伝えられ、地域社会に極度の緊張感が生まれただけでなく、軍需工場内にも少なからぬ動揺が走った。実際、慈江道内の軍需工場では診断書を提出して転出を試みたり、無断欠勤による離脱が発生しているという。
情報筋は「2025年第2四半期時点で、慈江道内の代表的な軍需工場5か所の生産実績が前年同時期に比べて平均14.9%減少したと把握されている。現場ではこの恐怖の雰囲気が長期化すれば、熟練人材の不足が蓄積され、軍需工業の生産目標に支障をきたす恐れがあるとの懸念も出ている」と語った。
慈江道の軍需工場にいる幹部や技術者の間では、むやみな処罰がかえって軍需生産現場の雰囲気を硬直させているとの声も上がっている。特に一部の技術者たちは「最近は技術的な創意性を発揮するよりも、保衛部にマークされないようにすることの方が大事だ」と語っているという。
「転換期正義ワーキンググループ」のプロファイラーで政治学博士のイ・スンジュ氏は、韓国デイリーNKの電話取材に対し「慈江道という場所は歴史的に忠誠心の高い住民が居住する地域であり、こうした強圧的な弾圧は珍しいことだ」と述べ、「これまで密かに広がっていた韓国文化の流入現象を一掃し、今後の不安定化を未然に抑制するために最高レベルの処罰を行ったと見られる。これは北朝鮮社会が韓国文化の流入を依然として深刻な脅威と見なしていることを示している」と分析した。
さらに彼は「今回の事例を通じて、金正恩体制の安定性を図る国家保衛省の地位がさらに強化されており、その背景には金正恩本人の強い意志が色濃く反映されていると見るべきだ」とし、「一般住民に対する人権侵害が構造的に持続している現状を踏まえ、韓国政府と国際社会による強力な監視と対応が切実に求められている」と強調した。